かなり昔の話です。
私がソープに入ってすぐの頃、お店でちょっとした事件がありました。
嬢のためにもお客さんのためにも警察沙汰にならなかったのは良いことだったんですが、彼女は結局ソープの仕事が怖くなって旦那さんと離婚して実家に帰ってしまいました。
他の嬢やボーイさんに聞いた話で、私はその日お休みだったんですが、もうここで書いても大丈夫なくらい昔の話です。
その日、ランさんが出勤するといつもの常連さんの予約が入っていました。
ランさんのその常連さんは自営業で、ランさんの出勤日の殆ど全ての日を貸切予約で埋めていました。
ランさんは主婦で、週に3日一日6時間程度しか出勤していなかったんですが、それでも毎月すごい金額です。
多分その常連さんがお店に支払った金額は、月に200万は軽く超えるでしょうね。
そのお客さんとランさんの縁が切れたときの出来事です。
ランさんは旦那さんの借金を返すために、旦那さん公認でソープの仕事をしていました。
ランさんが仕事に来ている間は、旦那さんは子供の面倒を見ているわけです。
そんな理由で働いていたランさんですが、話が面白く一緒に居て楽しい人柄でとても人気があったんです。
一番の常連の島村さんがお店に来なくても、他の指名のお客さんがやってくる…そんな人気の嬢でした。
ある日、私が出勤するとランさんの名前がフロントから消えています。
ユキ「あれっ、ランさん辞めたんですか?」
店長「うん…一昨日ちょっとあってね。怪我しちゃったんだよ。」
ユキ「怪我?じゃあ治ったら戻って来ます?」
店長「いや、もう戻らないだろうね…残念だけど。例の貸切客と揉めちゃったんだよ。」
こんな話をフロントで聞かされて不思議に思いながらも控室に行くと、私が聞くまでもなくそこに居た嬢達が話してくれました。
ケイコ「ユキちゃん聞いた?ランさん辞めちゃったんだよ。大怪我して、可哀想だったよ~。」
ユキ「大怪我って…お客さんと揉めたって店長が言ってたけど?」
ケイコ「例の貸切の島村さんっていたじゃない?その人が灰皿で殴ったんだよ。」
ランさんがお休みのときに一度だけ島村さんについたことがあるケイコさん、彼女が全て話してくれました。
ケイコ「一昨日さぁ、自分の部屋をセットしてたら6号室から大声が聞こえてきて、あんまり酷いからフロントにコールしたのよ。」
ユキ「6号室ってランさんの部屋ですね。」
ケイコ「そうそう。島村さんが来てるって知ってたから問題ないと思ったけど、凄かったからさ。そしたらドタンバタンしてて悲鳴まで聞こえてきて…。」
ユウカ「あれは凄かったよ~。私は5号室にいたんだけど、お客さんと一緒に廊下に出ちゃったもん。」
ケイコ「それでボーイがドアの外で声をかけたらランさんが飛び出てきたんだけど、もうボロボロ!!」
ユキ「………ボロボロ?」
ユウカ「うん、ボロボロ。殴られて顔も真っ赤だし、髪もボサボサだし、服も破れてるし………。」
島村さんがランさんに怒って、部屋にあったガラスの灰皿で殴ったり投げつけたりしたようです。
もちろん部屋もボロボロ…6号室はガラスなどの入れ替えをするために、翌日まで使用不可だったんです。
後日、店長が詳しく話してくれたところによると、この日ランさんは島村さんのしつこい求婚を断るために、自分が結婚していて子供も居ることを話したんだそうです。
それまで2年間もランさんに恋して通い続けた島村さんは、その話にキレて暴れてしまったんだそうで………。
ランさんは手をガラスで切って数針縫った他に、身体の数箇所を骨折や打撲する怪我。
島村さんはこのお店には出入り禁止、ランさんの治療費や生活費、慰謝料など、かなりのお金を支払うことになりました。
どんな理由であれ、女性にこのような暴力を働く人間は許せませんね。
この事件以降しばらく、既婚の嬢は素直に結婚していることをお客さんに話したとか話さなかったとか…。
私は話しませんでしたけどね(笑)