どこでも女性のいる職場ならお局様のような存在の女性がいると思うんですが、今回はお局様がお店を追われるまでの話です。



曜子さんは私が新人の頃にお世話になった、お店でいちばん年長の嬢でした。

お客さんにも人気があり、指名本数は毎月5番目には入っていたと思います。



曜子さんのマットテクは評判で、私自身お客さんからこんな話を聞いています。




「ユキちゃんも上手いけど、曜子さんのマットはほふく前進して逃げ出したくなるほど上手い」



この言葉で曜子さんにマットを教えてもらった私(笑)




そんな曜子さんがなぜお店を辞めなければならなかったのか、それは接客に対しての考え方が厳しすぎたためなんだと思っています。



自分にも厳しい曜子さんは、他の嬢にもとても厳しかったんです。




私はその曜子さんの厳しさで助けられたこともあるし、いけないことはいけないとハッキリ叱る曜子さんのさっぱりした性格が好きでした。



私が早番に移ったのと出勤曜日を変えたため、曜子さんとは週に1日しか会うことがなくなったんですが、会えば話をしたり、わからないことを聞いたりしていました。



そんな曜子さんの悪い噂を聞くようになったんです。


ある日、志乃ちゃんから電話がかかってきました。




志乃「ちょっと聞いてくれる?曜子さんが私に休めって言って、勝手にお店に話しちゃったんだよ~。」



ユキ「ええっ、なんでそんなことになったの?」



志乃「クラミジアになっちゃって、それを曜子さんに話したら2週間休めって言ってお店にもクラミジアのこと話しちゃったんだよ、酷くない?」



ユキ「だってクラミジアでしょ?出るつもりだったの?」



志乃「2週間も休んだら生活できないじゃん~。」



ユキ「でもお客さんに移したらまた自分に返ってくるし、いつまでも治らないよ。他の子にも移るかもしれないし…。」




この志乃ちゃんの言葉には呆れてしまいましたが、曜子さんはこれがきっかけで他の嬢に無視されるようになってしまったんです。



私は早番でしたし、曜子さんや志乃ちゃんは遅番。


遅番がどんな状態になっているか曜子さんの話を聞くまではまったく気付きませんでした。




ある日、元気のない曜子さんから電話がかかってきたんです。


いま考えれば遅番の嬢にはもう相談できない状態に追い込まれていたんでしょう、元は遅番で一緒に働いていた私に電話してきたんです。




曜子「ちょっと愚痴ってもいいかな?けっこう参っててお店辞めようかと思ってるんだ。」



ユキ「愚痴ですか、珍しいですね。でも、どうしたんですか?」



曜子「誰かに聞いてない?シカトされてて、控室の空気が最悪なんだよね…。」



ユキ「もしかして志乃ちゃんのクラの件ですか?」



曜子「それも原因の一つなんだけど、他にもあるらしくってね、店長に注意されたんだ。」




遅番の新人さん二人が接客をサボっている話をしていたので、それを注意したことも原因になったんだそうです。



曜子さんは一切悪いことはしていないんですよね、間違っていることを間違っていると注意しただけ。



そしてこの電話にはまだショックなことがあったんです。




曜子「今まで七瀬ちゃんに相談してたんだけど、その話の内容を全部遅番の子達に聞かせてて………もうこの世界は信じらんないよね。」




曜子さんといちばん仲の良かった七瀬さん、彼女は曜子さんの相談に乗るフリをして内容を全て他の嬢たちに話して笑いものにしていたんです。







いつでも毅然としていた曜子さんがこのときは本気で辛そうで、電話の向こうで泣いているような気がしました。


今でもこのときの電話を思い出すと胸が痛むんです。



一生懸命働いて新人さんに講習をしたり、相談に乗っていた曜子さんが自分の意思でもないのにお店を辞めることになってしまうなんて…。




私が他の嬢と関わりを持たないようになったのは、今回の話も原因の一つです。


もっと大きな原因があるんですが、それはまたの機会にします…。




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