私の友人でこんな子がいる。
名前はチカちゃん。
彼女はいつでも笑顔でハキハキとしゃべる明るくて楽しい女の子。
チカちゃんはなぜか毎月の指名本数がワースト1~3位の不人気嬢、彼女はそれでもお店に大事にされている。
あまりにも指名が取れないと普通はお店に疎まれ、早く辞めてくれないかと思われるものだけれど、彼女だけは別なんです。
彼女はどんなお客さんでも文句も言わずに接客するから、お店は他の女の子が嫌がるお客さんをチカちゃんにつける。
チカちゃん自身もそれが自分の存在価値だとわかっていた。
でもこのチカちゃんが初めてこのお客さんだけは無理だとお店に断った。
そのお客さんはチカちゃんを気に入って指名でやってきた人、なぜチカちゃんがイヤがったのか…。
結局そのお客さんには私がついて接客することになったけど、なんとなく違和感を覚えた。
物静かで優しいし見た目も普通の人で、私にはとても良いお客さんなんだけど何かが他の人と違う。
仕事が終わってからチカちゃんにイヤがった理由を聞いてみると、いつもハキハキと歯切れの良いチカちゃんがどうも言いにくそうにしている……何だろう?
チカ「あのお客さんって…気持ち悪いよね?」
ユキ「気持ち悪いとまでは言わないけど、私も何かがおかしいとは思ったよ。」
チカ「なんだかジッと見ていて、居づらくなって来る。」
ジッと見ている?
ユキ「確かにそうかもしれないね…でもそんなに気持ち悪かった?」
チカちゃんはその後は何も言わなかった。
1ヶ月もした頃、また同じお客さんがやってきた。
また今回もチカちゃんを指名してイヤがられて,代わりに私が接客した。
前回と同じようにこのお客さんの話は楽しかったし、あっという間に時間が過ぎていく。
でも今回はなんとなくチカちゃんの言った『気持ち悪い』の意味がわかったような気がした、この人は相手の目をジッと見つめて話すクセがある。
『話しを聞くときは相手の目を見なさい』
子供の頃によく母親に言われた言葉だけれど、この人の場合は見過ぎ。
いつでも私の目を穴の開くほど見つめている…瞬きもせずに、ただ一点だけを見つめている。
思わず私のほうが目を逸らしてしまうほど。
ユキ「なんでそんなに見るの~?(笑)」
なんだか急にイヤになって思わず言ってみた。
お客さんはハッとしたように目を逸らすと
客「ゴメン!!気持ち悪いよね?」
この瞬間、なんとなくこの人の過去が見えたような気がした。
この人はきっと今までいろいろな人に気持ち悪いと言われてきたんだ…。
ここからお客さんのひとり言のような告白が始まった。
客「僕は子供の頃にガチャ目で虐められて、それを治す訓練をしたんだけど、その訓練が一点を見つめるものだったせいか、会話をしていると相手の目をジッと見つめてしまうクセがついてしまったんだよ」
ユキ「そうなんだ…」
客「ガチャ目は治ったけど、今度はこのクセのせいで虐められるようになっちゃったんだ。社会人になってからも気味の悪いヤツだって言われて彼女もできないし…」
やっぱり彼はこのクセのせいで…
客「そんな中でチカちゃんは気持ち悪がらずに笑顔で相手してくれたんだよね…でもやっぱり嫌われちゃったみたいだね」
彼はとても寂しそうでした。
次の週にチカちゃんに会った私は彼の話をしました。
気持ち悪い人ではないこと、あのクセのせいで今まで酷い目にあってきたことも全て話しました。
チカちゃんはもともと心の優しい子だし、これを話せば彼のことを理解できると思ったんです。
翌月、彼はチカちゃんを指名することができました。
余計なことをしたかもしれないという気持ちもあったので、チカちゃんがあのお客さんを受け入れることができたのはとても嬉しかった。
あれから2年ほど経ちますが、今でもチカちゃんと彼は仲良くしています。
今は彼氏と彼女として良い関係を保っていて、チカちゃんも風俗の世界から足を洗い、今は彼の会社で事務の仕事を手伝っています。
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