前回の続きです。

他社で白真珠ができだしたと聞いて私達も焦りました。実はその頃自分たちもいくらか白貝ができていてそれを細胞貝に使った真珠ができ始めていました。

最初は年配の上司から白貝は弱くて近親交配が続くと全然巻かない貝になるのだと教えられていたので、どんな結果がでるか心配していましたがその教えに反して完璧な白真珠ができたのです。

ちょうどその前後に今まで核入れ班だった自分が採苗担当に抜擢されました。当時の採苗はできたりできなかったりと生産は不安定で私が引き継いだ時には何度やっても全滅してしまうという最悪の状態でした。

それも2、3年で立て直して白貝も少しづつ増えていきました。それができたのもまとまった白貝を種用として保存してくれた仲間がいたからです。よくあるパターンですが採苗班と挿核班でいがみ合っていて協力しないために折角白貝があっても種に残してもらえない場合もあります。

自分の場合は運が良く協力してくれる仲間に恵まれていました。

ある時の挿核で白貝が2、3割出現したロットが出てきました。その白貝を細胞に使いながら挿核してしまったのだけど浜揚げ前に試験剥きをして良い珠が出ることが分かりました。そしてその貝の中には白貝がまだ沢山残っていたのです。そこに注目した私は上司である現場の責任者に浜揚げの時に貝を一つ一つ口を開けて、真珠だけ取り出して貝殻内側の真珠層が白いか確認し、白のみを集めて保存してもらえないかお願いしました。こういう面倒な事を頼むと即座に拒否反応を示す人もいますがこの時は快く引き受けてもらえて、それが後の白貝安定生産の基礎になったのです。

この話題でもう一話ぐらい書けそうなので続きはその3に回します。