シミルボン・2016年9月10日初投稿

 

それ、人の名前です。え?どんな人?

 

本書は、放送作家として、ラジオ、ラジオドラマで活躍されている藤井青銅(ふじい せいどう)さんが、普段、私たちが使っている言葉、名称について、その名称の元になった人物について詳しく紹介した本である。

 
 
たいていの語源本や雑学本には「サンドイッチ伯爵がトランプをしながら食べたことから、サンドイッチという言葉が生まれた」というたぐいの由来話が出てくる。知っている方も多いだろう。
 では、そのサンドイッチ伯爵は、いったいいつの時代に、どんなことをしていた人なのか?どんな人物なのか?ということについては、まるで知られていない。
 サンドイッチだけではない。
 その他にも、その名前が、何かの言葉となって歴史に残ってしまった人物は多い。八百長も、有楽町も、シルエットもそうだと知ってました?
 知っていたとしても、ではいったいどんな人物で、どんなきっかけで名前が残ったのかということは、知っているだろうか?
 
これがこの本に書かれた、まえがき。
このため、本書はこの名称、名所、物、事象をしめす言葉は、実は人の名前でしたよというだけでなく、元々の名前の持ち主がどんな人物で、どんな行動、どんな役割を社会ではたした結果、その人の名前が現在の私たちが使っている言葉、地名などになったのかも詳しく書かれている。
 
一方で、必死に後の世に名前を残そうとして、七転八倒をしたあげく、歴史の流れの中で、一時は名前を残したものの消えてしまった人物の、本人にとっては悲劇、他者からみたら喜劇の話もあり、面白くも悲しい話もある。
 
それらを、名前の元の持ち主65人分の人生の一部を交えて、楽しい話で由来になった経緯が紹介されていて、飽きることなく楽しく読めた。
意外な言葉が、人の名前だという発見も出来る一冊。
 
 
藤井青銅さんは、1979年、星新一先生が選出者時代の『星新一ショートショートコンテスト』に『改造モデルガン』で入選し、その後、放送作家として活躍され、ANNやNHKFM青春アドベンチャーのラジオドラマ脚本家、ラジオ構成などで現在も活躍されている。
私は、自分が高校時代に聴いていたラジオの放送作家が、あの『ショートショートの広場』1巻に収録されていた、あの藤井青銅さんだったのか!と後で知り、すごいなあと思った。
 
『ショートショートの広場』には、星新一先生の批評も同時に収録されていて、星新一先生に選ばれて批評されるだけでも羨ましいなと思っていたのだが、自分が、すごいな面白いな、好きだなと思っていたラジオ番組の放送作家、構成作家、青春アドベンチャーのラジオドラマ脚本家の人と同一人物だったと知った時には、羨ましく思っていた相手が、実は自分が憧れていた人物だったなんて!とびっくり仰天。
 
そして、ああ、やっぱり才能がある人っていう人は違うのだなと思った、一冊でもある。