シミルボン・2016年10月2日初投稿

 

『お父さんは心配症』が『りぼん』で連載される前、巻末のほうにある来月の予告で、初めて『お父さんは心配症』の予告を見て、「なに?これ!」と思ったのを覚えている。
小学生には、あまりにも刺激的だった。
『お父さんは心配症』は連載が始まる前の予告から、既に破天荒な作品だった。
連載の前に読み切りあったけど。
妻を亡くし、一人娘の典子に異常で過剰な心配をしている父親、この漫画の主人公でいいのか、佐々木光太郎。
一見、普通のサラリーマンの中年親父なのに、娘、典子のことになると、バスガイドに扮して典子の学校行事についていってみたりして、非常識な行動を平気で起こしてしまう。
その被害に合うのは、典子のボーイフレンドの北野君。

北野君はサッカー部で、そのサッカー部のタラコ唇が印象的な金持ちの片桐キャプテンも、光太郎に劣らず、強烈な印象の人物だった。
光太郎の再婚の見合い相手の病弱だか、そうでないのか分からない寝棺竹子さんとか、その息子のリーゼントで決めた分かりやすい記号で描かれた不良だけど、その髪を自在に動かすのって何?別の生き物?な母親思いの一郎とか出てきて、常識人である典子と北野君が、この漫画の中では、多数の個性が強すぎる人物達の中で、埋もれるかと思いきや、その常識人なとこが光って埋もれないという素晴らしさ。

タイトルが『お父さんは心配症』だし、確か漫画の人物紹介でも、光太郎が主人公扱いだったけど、私は『りぼん』の雑誌連載の中で読んできていたし、『りぼん』は少女漫画雑誌なので、典子が主人公だと思って、読んでいたところがある。
典子の名前を「のりこ」と読めなくて「てんこ」と読んでいたのは、ここだけの秘密だ……。
いいんだ。
大人になって知った全話を佐々木守さんが書いた『アイアンキング』に出てくる「典子」だって、「てんこ、てんこ」って呼ばれていたし……。
いや、人の名前を間違えるの失礼だろ。
昔の私。

寝棺さん、あれだけ血を吐いていたら、もうとっくに……。
いや、病弱に見えたけど、元気になったし、本当か?一郎は母親思いな良い子になったから、いいんだけど、光太郎と再婚して欲しかった。
でも、光太郎だけでも大変なのに、典子が大変か。
いや、忍者親子の安井さんと守君も、まともに見えて、本人達は常に真剣だけど、世間とずれているけどって、この漫画における世間って何?っていぐらいに、発想のみなぎる限り、読む側の常識の裏をついて、驚きと笑いを提供してくれた作品、それが『お父さんは心配症』

テレビドラマになったけれど、よくドラマ化して、とんでもになった漫画作品はあるけど、私だと小学生の時に月曜ドラマランドでドラマ化した同じ『りぼん』に不定期連載されていた一条ゆかり先生の『有閑倶楽部』のドラマは、子ども心にショックだったけど、『お父さんは心配症』は漫画のほうが、とんでも漫画だったので、ドラマが普通に見えて、少し物足りなかった部分があったという。
ここで、書いている「とんでも漫画」は褒め言葉です。

異常な心配症で典子に迷惑ばかりをかけていた光太郎だけど、あの父親がいて本当によく典子は可愛くて、優しい子に育ったなって、今なら思う。
亡くなった奥さんの位牌(だったかな?)に典子のことが心配でやってしまうんだって報告していた光太郎の姿を典子が見る場面があって、いつものギャグはどこに行ったの?って思いながら、普段が普段だけに、しんみりしてしまう。
そういう場面も、覚えているのだなあ……。

『りぼん』で、連載を読んでいて、単行本は……買わなかったけど……。
「買うは一時の恥、買ったら一生の恥」と、確か3巻の表紙で光太郎が語りかけていたのを覚えているけど、今になって買わなかったことを私は恥じています。

 

小学生の時に買っておけば良かった。