シミルボン・2016年12月2日初投稿

 

 

 

 

田中里尚さんのコラムを読んでいたら、私の中にある故郷への感情が沸き起こってきたので、少しその気持ちを書こうかなって思って書き始めました。
厳密に書くと、私にはちゃんとした故郷がありません。
ラジオを聴いて知ったことなのですが、国土交通省が定義する出身地、故郷は生まれてから15年間の間に一番長く住んでいた土地ということなので、父親が転勤族で4年おきに引越し、転校をしていた私にはそれに当てはまるところがないのです。

継続して15年とかじゃなくて、累計年数だと一番長く住んでいたのは信州の松本です。
生まれたのは大町市ですが、それから他県で物心がついて小学校へ通うまで育ったけれど、8歳で松本に来て20歳まで過ごし、就職して信州の飯田市にいて数年住んでました。

 

 

 

子どものころに住んでいた他県の言葉、方言は忘れてしまって話さなくなったけど、信州の言葉というか、松本の言葉は今でも話すことが出来るので、信州人なんだなって思います。
ちなみに、私の好きな信州の全体の言葉に「ずく」があります。
よく、小学校の時には先生から「ずくだしてやるだだよ」「このずくなしが!」って言われたりもしました。
「こら、ずくだせ」って、『でんでん虫』の歌詞をもじって、「ツノだせじゃなくて、ずくだせ」って言ったり。

「ずく」という言葉を共通語でどういう意味かという質問には困ってしまいます。
「ずく」は「ずく」なので、ちょっとニュアンスが違うんですけど、「ずくなし」って言葉は、共通語だと「横着者」に近いです。
でも、ちょっと、遠いけど近いっていうとこかな。(なんのこっちゃ?)
とにかく、怠けないで、しっかりとやるべきことをやるために体と頭を動かせ、というような、せっせと働けっていう気持ちが強く「ずく」という二文字の言葉の中にあるのです。
確か私はそう「ずく」という言葉を理解しているのですが、この解釈で大丈夫ですかね、信州人のみなさん?

方言といえば、ご飯をよそって空になったご飯茶碗や炊飯釜にお水をはっておくことを、「ほとばす」と言うんですが、私は職場で「これ、ほとばしとくので、このままで」って言ったんですね。
そしたら、通じなくて。
この時の職場は他県だったので、それまでそんな経験はなかったというか、途中から信州に戻ってきた私は信州の方言が分かっていたので、明らかに信州弁を他県の人の前では使わないようにしてたんですが、「ほとばす」が信州の方言だったとは思わず使って通じなかった時は、驚くばかりでした。

 

 

 


そういえば、中学生時代に通っていた中学に俳優で歌手の上條恒彦さんがきてくれたことがあったんです。
体育館に集まって上條さんの歌を聴くことになっていたんですが、恥ずかしいことにザワザワしていて、小声の話し声があちこちであって、壇上にいた上條さんがちゃんと歌を聴く体勢にならない私達生徒に対して怒ったんです。
とても恥ずかしい話です。
歌ではなく、お説教を聴くことになりました。
でも、ちゃんと怒ってくれたことは有難かったと思っています。

上條恒彦さんは、松本県ヶ丘高校出身で信州の方なんですね、松本県ヶ丘高校は私の時代だと、学区内2位の進学校で、もうそこに進学する人は勉強が出来る人で、上條さんって、頭がいいんだなあって思ったりしました。
信州を出てから思ったことですが、「上條」という苗字は信州に多い苗字だったんだなって思います。
中学時代に上條恒彦さんが来てくれたことを思い出していたら、落語家の立川談志さんが飯田市で落語をした時に居眠りをした客に怒ってやめたという出来事を思い出しました。
あちらは、南信の話ですが。

 

 


信州人は頑固で真面目なので(私の個人的な印象かも)、決して人の話を聞かないような人達ばかりではないんです。
後、信州から出て他県に移り住んだときに、本屋が少なかったことはびっくりして、何軒探せば本屋があるんだ!?って本屋を探して自転車をこいだことを思い出したりもしました。
アマゾンとか電子書籍が今ほど普及してない時代のお話です。

懐かしいですね、信州。
小学校の冬の体育の授業では、浅間温泉国際スケートリンクまでバスにのってクネクネした山道を登ってスピードスケートを滑りに行きました。
行けないときには、校庭に水を撒いてリンクを作りました。
今は、もう浅間温泉国際スケートリンクもないんですね。
小学校では運動会で『松本ぼんぼん』も踊りました。
『松本ぼんぼん』の歌は覚えていて、振りは少し覚えています。
松本は『松本ぼんぼん』で歌われるように城の町、城下町です。
国宝松本城は一番好きな日本のお城です。

私の中にある、思い出の松本の姿、信州の姿は随分と様変わりしたんだなって思いますが、でも、『信濃の国』で歌われる「四方(よも)にそびえる山々」は変わらずに信州を今も囲っていることでしょう。