シミルボン・2016年1月14日初投稿

 

夕方、NHKの人形劇を見るときにチャンネルを合わせると、『みんなのうた』が2曲流れました。
それは、人形劇が始まる前だったか、後だったかは、ちょっと記憶があやふやなのですが、私は人形劇『プリンプリン物語』、『ひげよさらば』も好きでしたが、数分の『みんなのうた』もとても大好きでした。
『みんなのうた』は再放送もあったり、年代によって思い出の歌が違うと思いますが、1974年生まれの私の場合、再放送、本放送を含めて好きな『みんなのうた』は次の歌でした。

『サラマンドラ』
初回放送1977年8月~9月   
作詞:加藤直 作曲:高井達雄 
 歌:尾藤イサオ アニメ:月岡貞夫
再放送 1984年2月~3月   
作詞:加藤直 作曲:高井達雄 
 歌:尾藤イサオ アニメ:月岡貞夫

『しあわせのうた』
初回放送1984年10月~11月  
作詞:木下龍太郎 作曲編曲:高井達雄 
 歌:榊原郁恵 アニメ:堀口忠彦

『切手のないおくりもの』 
初回放送 1978年6月~7月  
作詞:財津和夫 作曲:財津和夫 
 歌:財津和夫とチューリップ 映像:実写
リメイク 1982年10月~11月 
作詞:財津和夫 作曲:財津和夫 編曲:青木望 
 歌:財津和夫 映像:実写
再リメイク1996年6月~7月  
作詞:財津和夫 作曲:財津和夫 編曲:青木望 
 歌:財津和夫 アニメ:古川タク

『まっくら森の歌』
初回放送 1985年8月~9月  
作詞:谷山浩子 原案:本橋靖昭 
作曲:谷山浩子 編曲:乾裕樹 
 歌:谷山浩子 絵:本橋靖昭 
アニメ:毛利厚

『わたしの紙ふうせん』
初回放送 1971年2月~3月 
作詞:嶋岡晨 作編曲:越部信義 
 歌:赤い鳥 アニメ:毛利厚
リメイク 1983年4月~5月 
作詞:嶋岡晨 作編曲:越部信義 
 歌:紙ふうせん アニメ:柳瀬譲二

『ヒロミ』
初回放送 1980年4月~5月 
作詞:伊藤アキラ 作曲:平尾昌晃 
 歌:原田潤  アニメ:田中ケイコ

『こだぬきポンポ』
初回放送 1983年12月~1月 
作詞:鈴木悦夫 作曲:大山高輝 
 歌:下条アトム アニメ:堀口忠彦

『ヒロミ』以外は、どことなく寂しい、悲しい歌で、『ヒロミ』もこの年齢で聴くと、何かしら悲しさが明るさの中に隠れているように感じるのです。

尾藤イサオさんが歌う『サラマンドラ』は火口に一匹だけ住むサラマンドラのことをうたいあげています。
ずっと、孤独なサラマンドラを歌う歌詞に悲しさを感じるのですが、特に心に刺さるのが次の歌詞です。
 

最後の夢から一万年 仲間もいない おどけもの 夜空の鏡に独り言 こぼれる炎 愚痴一つ

 

歌を聴いていると、仲間は既にいなくなり、一万年も一人ぼっちであること、既に年老いて牙もなくしてしまったサラマンドラのただ一人取り残されたことが分かってきます。
私は、この孤独なサラマンドラの寂しさに、それを時間の流れと共に静かに受け入れているのが、なんだかとても悲しくて、寂しくなりました。
悲しくなったけれども、アニメーションで描かれたサラマンドラの姿が目に焼きついて、心から離れることはありませんでした。
去年、早朝に『サラマンドラ』が私が子どもの頃に見たままのが再放送されたので、録画して保存しました。
iTunesで音声でも持っているのですが、やはり、あの目に焼きついたサラマンドラの姿をもう一度見たかった。

『しあわせのうた』は、榊原郁恵さんがとても明るい声で歌っていて、東西南北どこに住んでいても、それぞれにしあわせであることを歌っています。
 

生きていることは しあわせ かなしいときもあるけれど 未来をいつも 夢見ることが できるから

 

『しあわせのうた』はこんな単純なことが幸せなの?っていう、些細なことがしあわせだと歌っていくのですが、最後の歌詞で、生きていることは悲しいときもあるけれど幸せだと歌っていて、私は、いつもそこで、ブワッと気持ちがこみ上げてきます。
最後まで湿っぽくならず、明るい歌声のまま歌い上げるので、余計に明るさが生きていく悲しみをより鮮明にしてくるのです。

『サラマンドラ』『しあわせのうた』を聞いていた頃、友達と離れたりして寂しかったり、新しい土地に馴染めてなかったりしたころだったので、どうも、そうした歌詞の気持ちと自分の気持ちがシンクロしていたのだと思います。
やがて、音信不通になるのですが、転校しても友達とは手紙や年賀状のやり取りもしていました。
 

わたしから あなたへ この歌を届けよう 広い世界にたった一人の 私の好きなあなたへ

 

『切手のないおくりもの』は、どこかでひっそりと、歌を歌えば、離れてしまってもう会えなくなった友達に届いていくのかなあ……って思ってたりもしました。
そんなことはないかもしれないけれど、もしかしたら、友達もこの歌を同じ時間に聴いているかもしれない。
そんな時に少しでも、私のことを思い出してくれたらいいなって思ってました。

谷山浩子さんが歌う『まっくら森の歌』は不思議な空間へと誘ってくれました。
本来あるもの、見えているものが、本当にあるのか。
実際に見えないと思っているものは、実は違うところだったら見えてくるのではないか。
普通のことは、ひっくり返して見て感じることも出来るのではないか?と。
 

さかなは空に ことりは水に たまごがはねて かがみがうたう まっくら森はふしぎなところ あさからずっと まっくらクライ クライ

 

『わたしの紙ふうせん』は、辛いとき、気持ちがしぼんだ時に、心を励ましてくれました。
どんなにぺしゃんこになっても、また膨らむことが出来る、と。
 

叱られたってさ 踏まれたでもさ 思いっきり息吹き込んだらね まんまるくなるよ そうらポン ポポポポン めそめそしないよ も一つポン

 

このコラムを書くにあたり、改めて歌を調べてみたら、『わたしの紙ふうせん』は作詞の嶋岡さんが当時小学生の娘さんを励ますために作詞されたことを知りました。
だから、私が聞いたのは1983年のリメイク版でしたが、当時小学生の私の心の中に入ってきたのだなって、改めて思いました。

『ヒロミ』を歌っていたのは、当時子役で、水谷豊さん主演の『熱中時代』の主題歌『僕の先生はフィーバー』を歌っていた原田潤さんです。
作曲も同じ平尾昌晃先生です。
声変わり前の男の子の特徴的な高い声、好きな女の子に素直になれない男の子の気持ちを明るく歌っていて、聞いていて楽しかった歌でした。
それでいて、素直になれない寂しさもどことなく感じた歌でした。

『こだぬきポンポ』は、女の子に優しくされた子狸ポンポが、自分の耳を寒くないように手袋をくれてはめてくれた女の子を待つために、ずっと駅に通って待っている歌で、ポンポにとって女の子がさりげなく、当たり前にした優しさがどんなに嬉しかったかが伝わる歌でした。
 

ぽんぽこ村の こだぬきポンポ ぽんぽこ駅で あの子を待つよ

 

「ぽんぽこ」や「ポンポ」「ぽんぽこぽん」という軽やかな言葉が入っているのですが、それが楽しさよりも、しみじみさを醸し出していて、ポンポの女の子に再会したいという切実な思いが伝わってきて、会えるといいなって思いながら聴いていました。

歌と映像だけだけど、常に心を励ましてくれた『みんなのうた』今でも、映像と共に歌詞や曲が、歌声が聴いていた子どもの頃の記憶と共に心に残っています。