シミルボン・2017年12月31日初投稿

 

『メイプル戦記』は『甲子園の空に笑え!』の続編的漫画です。

 

 


『甲子園の空に笑え!』はクールで熱くなれない生物教師の広岡先生が、弱小豆の木高校の野球部を率いて甲子園の決勝までいく話でした。
熱くはなれないし、現実的ではあるけれど、決して野球をバカにしているのではないという、ほのぼのとした中に小さな小さな弱小野球部の一生懸命さが伝わってきた作品でした。
ある意味、運も味方した豆の木高校野球部の決勝進出でしたが、そこは簡単に優勝は出来ないところが、漫画ならではのご都合主義で終わらせず、それでいて読み終えた後に、ほのぼのとした満足感が得られた作品でした。

それから、数年経って、私が『花とゆめ』読者になってから、始まったのが『甲子園の空に笑え!』で活躍した広岡コーチを女性だけのプロ野球チームの監督に迎え入れた『メイプル戦記』。
広岡監督の片腕として、『甲子園の空に笑え!』で決勝を戦った高柳コーチを迎えて、豆の木高校の相本の4つ子の妹達や、『笑う大天使』の和音さんの後輩の桜子さんや薫子さん、高柳コーチが高校で野球を教えていた瑠璃子ちゃん(男性)をなど有力選手を交えて、女性初のプロ野球球団、スイート・メイプルスが誕生するのです。
 

よかったね おめでとう もしキミが女の子で にもかかわらず 野球が好きで好きで
「男に生まれていたら絶対プロ野球選手だな」と思っているのなら…
1991年7月15日
 日本プロ野球実行委員会・協約特別委員会は野球協約第83条のうち2つの条文の削除を決定した
 第83条とゆーのは「不適格選手」についての協約で 削除された条文とは次の2条項である
 1医学上男子でない者(つまり女子だな)
 2不適当な身体または形態をもつ者(意味不明)
よーするに今までは「1や2に該当する者はプロ野球選手として不適格なので認めないもんね」がルールだった
 しかし今時「性別や訳のわからない身体上の理由で差別する条項があるなんてあまりにもコンサヴァティブじゃないの?」てなわけで上記の2条項は削除されたんだと
 これによって協約上は女子にも平等にプロ野球選手としての道が開かれることになったんだ
 よかったね おめでとう
 キミの可能性の扉は開かれた
 たとえキミが女の子でも 本当に野球が好きならば きっと いつか……
――そんで セ・リーグ7番目の球団の設立だ オーナーはスイート製菓社長
新球団の名称は「スイート・メイプルス」

 

この新球団「スイート・メイプルス」は当時まだプロ野球チームを持っていなかった北海道の球団の設定でした。
球団社長はおばあちゃんで宝塚歌劇団が大好き。
応援団も宝塚歌劇団風で応援します。
球団の寮に入るメンバーですが、そこの寮母はオーナーの孫息子の立花さん。
私は、この立花さんと豆の木高校の相本4つ子の妹の流花(るか)さんのやり取りが好き。
四つ子は皆、息が合っているのだけど、流花だけはワンテンポ遅れていて、それで見分けがつくのだけど、立花さんが話を聞いてくれて、足が悪くして運動が出来なくなった立花さんの分も流花が頑張る姿がいいなって。

こう女だからということで、バカにされたり、瑠璃子ちゃんはオカマということでバカにされるのだけど、そういうバカにされても、くじけたり、いじけたりすることなく、そういうバカにする人もいるはいるけど、そんな人達だけじゃないってことがあって、男だろうが、女だろうが懸命になっているところがいいなって思う。
旦那がプロ野球の選手でも、浮気ばかりしているので三行半を突きつけて、メイプルスの球団に入団した紘子さんの気風の良さもかっこ良かったな。
紘子さんの旦那は明らかに巨人軍がモデルの架空の球団タイタンズのピッチャーでエース。
紘子さんは熱心にバッティングの練習をしていて、最初は女に野球が出来るか!って言っていた旦那を見返していたなあ。

ただ、相手を見返すだけでなくて、男性側もそれをきっかけに自分や奥さん、周囲の女性や身体は男性でも心は女性の人達を同じ人間として、見直すというのがあって、現実にはありえないプロ野球での女性達の活躍を面白おかしく、時にしみじみしながら読んでいて楽しかったです。
川原泉先生のスポーツ漫画は、冷静な目がありながら、その冷静な目が決して冷ややかではなくて、とてもほのぼのとしていて、気持ちが和むところがいいなって私は思います。
当時、『花とゆめ』に書いて送った感想が掲載されたりもして、そういうところでも思い出のある作品です。