今回の主な登場人物
ヒロイン 福来スズ子/花田鈴子(趣里)
歌手 茨田りつ子(菊地凛子)
―福来スズ子とその楽団―
トランペット 一井(陰山泰)
ピアノ/アコーディオン 二村(えなりかずき)
ギター 三谷(国木田かっぱ)
ドラム 四条(伊藤えん魔)
マネージャー 山下達夫(近藤芳正)
スズ子の付き人 小林小夜(富田望生)
藤子屋 女中 静枝(曽我廼家いろは)
村山愛助(水上恒司)
村山興業東京支社長 坂口(黒田有〔メッセンジャー〕)
第14週「戦争とうた」
静枝から戦死した夫の話を聞いたスズ子は、静枝にも歌を届けなければと心に誓います。
公演本番の日の新聞には、広島への新型爆弾(=原爆)投下の記事がありました。
劇中の新聞の見出しが、昭和20年8月8日付の朝日新聞とよく似ています。視聴者はもうすぐ戦争が終わると知っていますが、当時の人々にとってはどれほど恐ろしかったでしょう。空襲は続いていて、9日には長崎に原爆が……。坂口の言うように、日本中どこにいても危ない所ばかりと考える人もいただろうな。
スズ子は静枝に歌を聴いて欲しいと告げ、会場へ向かいます。
その頃、茨田さんも鹿児島の海軍基地で公演本番を迎えていました。
特攻隊員たちの望む曲を歌うため、彼らに希望する曲を問うと、一人の隊員が茨田さんの『別れのブルース』を要望。ほかの隊員たちも口々に「最後に聴きたい」「お願いします」と言います。
演奏が始まると隊員たちは涙を流し、席を外していた少佐も泣いていました。
戦意を喪失させるなどと言われていた『別れのブルース』でしたが、隊員らが望んだのは茨田さんの大切な一曲。
勇気づけられました
もう、思い残すことはありません
いい死に土産になります
覚悟はできました
彼らの言葉にたまらず、舞台袖へと走り慟哭する茨田さんの姿を観て泣きました。人に生きる力を与えるための歌が、死の覚悟を決めることになるとは……。
スズ子たちの演奏が最後の一曲となった時、静枝が娘の幸(さち)を連れて会場にやって来ます。
最後の曲は『大空の弟』。「大切な人のことを思って聴いてください」というスズ子の言葉通り、静枝は亡き夫のことを思い出していました。
印刷したみたいな綺麗な字を書く夫は、静枝の字を見た時には腹を抱えて笑った(真面目で普段は笑わない人なのに)。恥ずかしくて悔しくて、戦地から手紙が来ても返事を書かなかった……思い出したのがそれでいいのかと思いましたが(大切なのは"夫の笑顔"?)、スズ子の歌は静枝に届き、生きる力を与えたようです。
―追記―
歌を聴きながら静枝は泣いていたので、抑え込んでいた気持ちを放つことができ、ちゃんと悲しめたのかもしれない。
第14週は、対照的な慰問公演となったスズ子と茨田さんでした。
スズ子楽団はこの後、富山から福井へ行き2公演、岐阜で1公演の予定。金沢公演は取り止めとなったそうです。岐阜辺りで、終戦を迎えるでしょうか。
【画像:illustAC】