遺言・相続専門行政書士の掛谷章です。
しばらくの間、相続税について述べてきました。
当ブログでは、これまで31回にわたり相続税のきまりについて細かいことを説明してきました。そして、それをもとに前回は「相続税の計算手順」を説明しましたが、今日は「相続税の計算手順~具体的な計算例~」について説明します。
また、次回は相続税の加算税・延滞税・延納・物納について記事にして、相続税については一区切りとしたいと思います。
(注)わかりやすさを優先するため、必ずしも法律の規定どおり厳密な記述になっているとは限りません。
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1.相続税の計算の具体例
前回の記事で説明した順にそって、具体的に計算してみたいと思います。
(前回の記事)
【相続税その32】相続税の計算手順
http://ameblo.jp/kaketanijimusyo/entry-12288044354.html
(1)課税価格の合計額の算出
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●各人の課税価格
=(相続などで取得した財産+みなし相続財産-非課税財産-債務-葬儀費用)
+相続開始前3年以内に故人から贈与で取得した財産
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故人(被相続人)の遺産の課税価格を計算してみます。
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【設定】夫が死亡し、妻・長男・長女の3人が法定相続人とします。夫の遺産は次のとおりとします。
①現金・預金・株式8700万円
②土地1600万円(小規模宅地等の特例を活用)
③建物1000万円
④生命保険金4500万円(「500万円×相続人の数」の非課税枠を活用)
⑤借金700万円
⑥葬儀費用300万円
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(注1)
土地は、故人が相続開始まで居住していた家屋の敷地で、面積が300㎡であったとします。土地の元来の評価は8000万円ですが、小規模宅地等の特例を活用し、特定居住用宅地として80%の減額を受けたものとして計算します。
土地8000万円×(100%-80%)=1600万円
小規模宅地等の評価減の特例については次の記事を参照してください。
【相続税その20】相続財産の評価(その6)~小規模宅地等は評価を減額できる~
http://ameblo.jp/kaketanijimusyo/entry-12281068780.html
(注2)
生命保険金の金額は元来6000万円ですが、相続人が3人ですので「500万円×3人」までは非課税となります。
生命保険金6000万円-(500万円×3人)=4500万円
死亡保険金の扱いや非課税枠については次の記事を参照してください。
【相続税その27】相続財産の評価(その13)~死亡保険金や死亡退職金の評価~
http://ameblo.jp/kaketanijimusyo/entry-12285079442.html
課税価格の合計額は、
①現金・預金・株式8700万円+②土地1600万円+③建物1000万円
+④生命保険料4500万円-⑤借金700万円(=債務)-⑥葬儀費用300万円
=1億4800万円
となります。
(2)課税遺産総額の算出
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①平成27年1月1日以降に故人(被相続人)が死亡した場合
●課税遺産総額
=各人の課税価格の合計額-基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)
②平成26年12月31日以前に故人が死亡した場合
●課税遺産総額
=各人の課税価格の合計額-基礎控除額(5000万円+1000万円×法定相続人の数)
--------------------------------------
故人(被相続人)が平成27年1月1日以降に亡くなったものとして計算します。
上記(1)で求めた課税価格の合計額1億4800万円から相続税の基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引いた額が課税遺産総額です。
課税遺産総額=1億4800万円-(3000万円+600万円×3人)
=1億円
(3)各人の法定相続分に応じる取得金額の算出
上記(2)で求めた課税遺産総額を各相続人の法定相続分で分割したものと仮定して、各人の法定相続分に応じる取得金額を算出します。
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●各人の法定相続分に応じる取得金額=課税遺産増額×法定相続割合
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妻と子が法定相続人の場合、妻の相続分は2分の1、子の相続分は残りの2分の1です。子は長男と長女の2人ですので、2分の1をさらに2人で均等に分けることになります。
①妻の法定相続分に応じる取得金額=1億円×1/2=5000万円
②長男の法定相続分に応じる取得金額=1億円×1/2×1/2=2500万円
③長男の法定相続分に応じる取得金額=1億円×1/2×1/2=2500万円
(4)相続税の総額の算出
上記(3)で求めた各人の法定相続分に応じる取得金額に税率を掛けて相続人ごとに仮の相続税を算出し、これを合計して相続税の総額を算出します。
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●各相続人ごとの仮の相続税額=各人の法定相続分に応じる取得金額×税率
↓
●各人の相続税額の合算=相続税の総額
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①妻の仮の相続税額=5000万円×税率20%-控除額200万円=800万円
②長男の仮の相続税額=2500万円×税率15%-控除額50万円=325万円
③長男の仮の相続税額=2500万円×税率15%-控除額50万円=325万円
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税率と控除額は相続税額の速算表で確認します
【相続税額の速算表】
(相続人一人あたりの相続額) (税率) (控除額)
1000万円以下 100分の10 0円
1000万円超3000万円以下 100分の15 50万円
3000万円超5000万円以下 100分の20 200万円
5000万円超1億円以下 100分の30 700万円
1億円超2億円以下 100分の40 1700万円
2億円超3億円以下 100分の45 2700万円
3億円超6億円以下 100分の50 4200万円
6億円超 100分の55 7200万円
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●各人の相続税の総額=①800万円+②325万円+③325万円
=1450万円
(5)各人の相続税額の算出
上記(4)で求めた相続税の総額を、法定相続割合ではなく、各人が実際に取得した財産の金額で按分し、各人の相続税額を算出します。
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●各人の相続税額=相続税の総額×(各人が実際に取得した額÷課税遺産総額)
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法定相続分だと、妻が2分の1(=50%)・長男が4分の1(=25%)・長女が4分の1(=25%)ですが、遺言や遺産分割協議の結果、実際の相続割合が妻50%・長男20%・長女30%だったと仮定して計算してみます。
①妻の相続税額=1450万円×50%=725万円
ただし、妻には配偶者の税額軽減が適用されますので、今回の例では相続税はゼロになります。
配偶者の税額軽減については次の記事を参照してください。
【相続税その2】配偶者には大きな非課税枠がある
http://ameblo.jp/kaketanijimusyo/entry-12269783845.html
②長男の相続税額=1450万円×20%=290万円
③長女の相続税額=1450万円×30%=435万円
(6)各人が支払う税額の算出
上記(5)で求めた各人の相続税額から各種の税額控除額を差し引いた残りの額が各人が支払う税額になります。
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●各人が支払う税額
=各人の相続税額+相続税額の20%加算-贈与税額控除-配偶者の税額軽減
-未成年者控除-障害者控除-相次相続控除-外国税額控除
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故人(被相続人)が亡くなったときに、長女が15歳9か月だったとします。長女については、未成年者控除の対象になり、「10万円×満20歳になるまでの年数」だけ支払う税額が減額されます。
①妻が支払う税額=0(上記(5)で求めた金額と同じ)
②長男が支払う税額=290万円(上記(5)で求めた金額と同じ)
③長女が支払う税額=435万円-10万円×(20歳-15歳)
=385万円
未成年者控除については、次の記事を参照してください。
【相続税その11】相続税が減額される~未成年者控除~
http://ameblo.jp/kaketanijimusyo/entry-12275809134.html
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⇒京都大学法学部卒業
⇒大阪府庁に14年間の勤務経験あり(行政職・事務吏員として)。
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