ゴールなんてきっとないんだと思う | カケラバンクオフィシャルブログ「先の見えないこの時代で」Powered by Ameba

ゴールなんてきっとないんだと思う

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停留所で5分後のバスを待っていた。
ベンチには白髪の混じった老人が腰をかけて並んでいた。

俺はそして彼は今、一回目の人生なんだろうかってふと考えてみた。

というのも、
インドの弦楽器シタールの世界では、一人前に到達するには、3回人間として生まれて、技術を磨き続けなければならないと言う。

つまり人生80年として240年をかけてゴールに辿り着くらしい。

俺はギターとボーカルを始めてまだ10年。
あと230年かぁ。

道は長いな。

・・・でも、よく考えてみればゴールって何なんだろう。

もう、磨ける技術はこの世に一個もないと悟った瞬間?
もう、どんなフレーズも延々とミスせずに体現出来た瞬間?

そんな事は多分誰にも起こらないだろう。

千個の知識を得た時、世界には千一個目があるかもしれないという期待を持つのが人間、
二時間ミスをせずに演奏した所で、二時間一分にその余裕からミスをするのが人間だと思うから。

ゴールなんてきっとないんだと思う。

「ようやく気付いたんじゃな?」

その時、寒そうにしていた老人は、
俺にそう言った、ような気がした。

「どう人生を楽しむか、
そして何を見るかじゃなくて、何を感じるか、
それだけが人生じゃよ。」

ただ老人の吐いた白い息が数m上空で消えただけだったけど、
そう言った、ような気がした。

その時、バスが到着した。

杖をついて老人は、バスに乗り込もうとした。

そして俺は続いた。

老人のジャンパーの背中には、うっすらと「3」という文字がプリントされていたように見えた。
まるで、現在三回目の人間をやっていますという証明書のようだった。

俺の背中にはなんて書いてあるんだろう。

今度誰かに教えて貰おう。

~桜井モトヤ~