欲しがらなくなった時、欲しかったものがそこにはあったから。
欲しいものが一杯あった。
コンプレックスのかたまりだったから。
21歳の僕は、その日もギター1本と譜面台だけを用意して、京都駅八条口で緊張しながら唄を歌っていた。
15m向こうには、当時地元では有名だったアコースティックデュオを、50人程の女の子達が三角座りをして、取り囲んでいた。
笑顔で手拍子や合唱をして、僕の声をかき消した。
その僕の前はというと、誰もいなかった。
喉が痛いのを我慢して大声で歌った。
ピックが割れたけどギターをかき鳴らした。
二時間程してギターをケースにしまい、疲れた体を近鉄電車に押し込めた。
人気者になりたかったわけじゃなかった。
僕は僕の気持ちを少しでもいいから誰かに分かって欲しかっただけ。
何かを共鳴し合える人が、この世界には必ずいると信じたかっただけ。
だから50人に、分かって貰えている隣のミュージシャンを、羨ましがっていた。
そしていつしか、ただ「50人」に囲まれたいと思っていた。
あれから8年、
今日お台場ヴィーナスフォートでライブだった。
新曲「100年後」を初めてマイクを通して披露し終えた瞬間、
僕らの前にはカケラバンクを見ている50人以上の人達がいて、笑ったり涙したり拍手をくれていた。
あれ?
これを21歳の時の僕は欲しがっていたんだよな?
あれだけ羨望の眼差しで手にしたかったただの「数字」なんてものは、去年からどうでも良くなり、本質を分かり合える人と何人出会え、どれだけ深められるかという、とても大切な事を知り始めたのに、今日目の前にあった。
いや、この「どうでも良くなれた」という成長の証として、目の前に存在してるのかもしれないと思えた。
欲しがらなくなった時、欲しかったものがそこにはあったから。
~桜井モトヤ~
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【次回のライブ】
「アコースティック・サタデー」
「日時]12月5日(土)
[場所]飯田橋ラムラ1F区境ホール(http://
[時間]14:00~/16:00~
[観覧] 無料
