新月は見えたか | カケラバンクオフィシャルブログ「先の見えないこの時代で」Powered by Ameba

新月は見えたか


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12月22日、
天気予報は外れた。
予想気温は20度だった。
そんな事を微塵も感じさせないような冷たい風が吹き、夕方から雨が降り始めた。
リハーサルを終えたモトヤとひろむは、マクドナルドへと向かった。

「緊張は全然してないですね。」

本番15分前、爽健美茶をすすりながらモトヤは言った。

「でもね、稀にこの段階で緊張してない時程、ステージにあがって一曲目を歌い始めた瞬間、とてつもない緊張感が襲って来るんですよ。
ってそんな事考えてたら、緊張して来ました!
って事は今回もいつも通りです笑」

リラックスしているのか、どうなのか分からない表情でモトヤの言葉にうなずきながらポテトをほおばるひろむ。
無口なひろむは、緊張している合図だ、
モトヤはそれを肌で分かっていた。
口数が多いモトヤは、緊張している合図だと言う事を、
ひろむも分かっていた。

本番10分前、二人が楽屋に戻ると、
銀座線がストップしていた為、スタート時間が遅れる事が告げられた。
予定時刻を10分過ぎた頃、いよいよオープニングSEが流れ始めた。

会場は声を潜め、カケラバンクの登場を待つ。

SEが5分程流れた時、パーマをかけたモトヤ、そしてニューメガネとアゴヒゲをたくわえたひろむがステージに登場する。

鈴の音と、ウインドチャペルの高音が静寂を切り裂き、
一曲目「蛍」が不規則に始まる。

「夜の始まりを告げるように 街のネオンが灯りだす
夕暮れの景色は蛍のように 消えたり光ったり・・・」

ゆっくりと影も形もまだない「新月」が「満月」へと変化していくように。

二曲目「西暦5050年」で一気に会場は音と声で溢れ出す。

「近道があるなんて事はもう 思っちゃいないよ」

この道を進もう、と人が決めた時、それは単なる一本道だと決め付けている。
でも迷路だと気付いた時、それはもう入口へは戻れないぐらいの場所に来ている。
でも、何度迷ってでも歩き続ける。そして気付く事がある。
「迷路にはちゃんと行き止まりと出口が用意されている」って事に。

三曲目「ありがとう」、
四曲目「ツヨイニンゲン」で、ここまで出会って来た数々の人達に感謝の気持ちと前代未聞のコールアンドレスポンスのプレゼントをする。

そんな雰囲気から打って変わってバラードが続く。

新しい記憶が出来ると、脳内のイストリゲームはホイッスルが鳴りスタートする。
要らない記憶が席を立ち、入れ替わっていく。
でも、ずっと居座り続ける記憶は誰にでもある。
そんな誰にでも存在する「忘れられない思い出」を指先でなぞり、
五曲目「雨男」と六曲目「蝉時雨」で、全員を梅雨から夏へと連れ出して行く。

「蝉時雨」のアウトロでモトヤがギターを鳴らし終えその場を立ち去ったかと思えば、
カケラバンク初のひろむによるパーカッションソロタイムがメトロノームの機械音と共にゆっくりと始まっていく。

両手で生み出した数百個の音は全ての人の耳に入って、何処へ消えていったのだろうか。
そこにいた人達の心に収容可能なスペースが3cm四方ぐらい残されていたなら、きっとそこが着地地点だったのかもしれない。

その流れを途絶える事なく、モトヤの再入場で七曲目「瞬きする度に」へ。
今回のセットリストの中で一番古い曲である。

八曲目「声を聞くだけで」
スペースシャトルが打ち上げられる前日に、飛行士は誰に電話をかけて、どんな夢を見るのだろう。
宇宙人にも恋をした時のあの感情があるといいな。
11月のエンデバー号をニュース番組で見たモトヤが書き上げたユーモラスな新曲ラブソング。

そして、偶然にも2008年200ステージ目にあたるこのライブまでの道のりを、カケラバンクのテーゼと共にモトヤが語った後、
2009年へ二人はもう右足を踏み入れているかのごとく
九曲目「Let's go」
十曲目「靴飛ばし」
十一曲目「Song for you」を。

ラストは、今年唯一199回歌って来たこの唄について胸の内をひろむが語る。

「2008年全てのライブを出来るだけくまなく思い浮かべ、
今日最後に“ハナウタ”を歌います。
そして1年後、何処かでこの唄を聞いた時、今日の日を思い出して貰う事、それこそがアーティストとして一番嬉しい事だ」と。

そして、全ての曲目が終わり、二人は退場する。

史上初めてアンコールはなかった。

かと思った瞬間、

会場から「ラ~ララ~ラ~ララ~ラ~ララ~♪」
という歌声が2人、3人、そして数10人へと膨れ上がる。

手拍子ではない大合唱が始まったのだ。
そんな初めての呼び戻しに、カケラバンク初のオリジナルTシャツに着替えた二人は満面の笑みを浮かべてステージへ。

すると笑みが瞬時に固まった。
150個近くの青いペンライトが会場に揺れ動いていたのだ。

一気に目を潤ませた二人は、
上京した時、2008年の「夢」、いや「目標」として
年内に必ずワンマンライブをやると言う事を決意していたという事、
そしてその決意が揺らいだ夏があったという事、
そしてそれから今日まで我武者羅に突っ走って来た事を赤裸々に語った。
だから生まれた。
新曲「方位磁石」が。

行きたい方角が分からない。
んじゃ下を向けばいい。
自分の足がつま先が向いている方角が行きたい方角なんだから。

モトヤの亡き父へ捧げた「桜だより」をアンコールの二曲目にすえて、
「新月」は幕を閉じた。

152人の目には、いやスタッフやゲストの方達を含むその場にいた200人近い人達に「新月」は見えたのだろうか。
そんな事を思いながら、会場の外に出たら、
雨はすっかりあがっていた。
閉じた傘を右手に持って、リズム良くコンクリートを叩きながら歩いたら、

あのメロディを歌ってた、ハナウタで。

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【カケラバンクニュース】


「新月」当日に発売を致しましたカケラバンク初のオリジナルTシャツに、
当日来れなかった多くの方達からの通販希望がございましたので、
只今、残り数着を先着順もしくは抽選にして通販するかを検討中ですのでもうしばらくお待ち下さいませ。