映画 活きる


原題:活着

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1994年 中国公開


主なタイトル

カンヌ国際映画祭 男優賞

カンヌ国際映画祭グランプリ

英国アカデミー賞 外国語作品賞ノミネート

ゴールデングローブ賞外国語映画賞

英国アカデミー賞外国語作品賞 


巨匠、張芸謀 監督の作品を見ました。

去年の夏に見た陳凱歌 監督の「覇王別姫」と同じ、激動の時代に生きた家族の物語です。


覇王別姫の感想はこちらから


もうさ、この時代の映画を見れば見るほど

文革って何なのよ⁉️ ってなる。


時代が違っていれば幸せに、平穏に暮らせたかも知れない家族の苦難と安寧を長いスパンで描いた内容だけど、凄く深い。


キラキラなイケメンなんて一人も登場しないのに引き込まれる画力が強い。やっぱり巨匠の作品は違う。


主演はこの夫婦ふたり。

覇王別姫でも印象深かったサブ二人が夫婦役に!




葛優(夫: 福貴)



裕福な家庭の若旦那だったが、賭け事にのめり込み、家屋敷を借金の抵当として没収される。全てを失ったあと影絵芝居を始める。


コン・リー(妻: 珍家)



賭博をやめられない夫に絶望し妊娠中に実家へ帰るも、出産後、裸一貫となった夫の元に戻り家族を支える。


感想


人生において

何が幸となり何が禍となるかは全く分からない

というのが素直な感想。


同じ人間が同じ行動をしていても、置かれた時代や環境によってその結果は全く違ったものになる。

特に中国の1940年から1960年代を生き抜くのは並大抵のことでは無かった。


主人公の福貴は賭博で家屋敷を失ったが、後にそれが吉となる。文革の時代、富を独占するものは罪とされ、福貴の家屋敷を(正当な手段で)譲渡された男は銃殺刑となった。本来ならば殺されていたのは福貴自身だったはずだ。


逆にその行動が裏目に出てしまった出来事もある。

疲れて眠っている息子を無理に起こして学校での作業に行かせた結果、息子は突っ込んで来たトラックに轢かれて死んでしまう。(この時代、子供も地域で働かせてられていた。協力しないと反乱分子と看做された)


唯一残された娘は、幸せな結婚をし子供を授かる。しかし出産当日、産婦人科医が反乱者として拘束され一人もいなかった。心配した夫婦は婿に頼んで何とか医師を病院まで連れてくるが、彼に親切で与えた万頭が喉をつまらせ、医師は肝心な時に治療ができず、結局娘は出産後に容態急変で死んでしまう。


なんと皮肉な運命だろう。

時代が違えば福貴の息子と娘は死なずに済んだ。



しかしこの映画はこの理不尽な状況を感情的に嘆き悲しみ煽るのではなくて、淡々と見せていた。もちろんそういう場面がなかっただけであり夫婦の悲しみや苦しみはふとした表情に現れている。夫を演じた葛優がカンヌで主演男優賞を獲ったのも頷ける。


ラストシーン。

福貴が孫にこう言う。



この前段シーンはかつて息子に語ったのと同じ台詞を引用しているのだが、それが後からジワジワ来る。


次々に大きくなる様をヒヨコから牛に変わっていく比喩で表現しているのだが、「牛の次は?」の答えが時とともに違っている。


そこに表立っては言えない作り手の思いが込められているように感じた。時代に翻弄された人間の悲哀と未来への僅かな希望がこの台詞だけで伝わってきた。



自らの失敗を忘れないように、子や孫に「不賭」「万頭」などの名前を付ける場面はユーモアを感じたし、苦しいけど決してそれだけじゃないリアルな人生を見せてくれた映画でした。


おまけ


若かりし頃の名優を見つけました。


①星漢燦爛でヒロインのパパを演じた 郭涛



②将夜で光明大神官を演じた 倪大红



その他にもいたかも知れないけど、

私では見つけられませんでした凝視

さすがに二人とも若い時から存在感があった。


アマプラで視聴できますので、お時間ある方は視聴してみてください。

ではまたパー


おすすめ

この時代を扱ったベストセラー小説です。

私は21歳くらいの時に読みました。


ワイルドスワン