昭和17年2月17日、シンガポールの旧競馬場、ファらパークは投降インド兵で立錐の余地もないほど一杯だった。戦火が消えた翌日である。この捕虜の接収式に立ち会った中沢平八郎氏(第25軍参謀部付き)は「私たちはインド人兵員数について約5万人とはじいていた。しかし、今日の状況をみて実数は、われwらえの判断をはるかに超えているじょとを知らされてしまった。身の毛がよだつとは、このことかと思った」と感想を語っている。(「富みの歩み」)この接収式を演出したのが藤原少佐であり、主演がモハン・シン大尉であった。 投降兵たちは地面に腰を降ろしスピーカーから流れるモハン・シン大尉のINA参加を呼びかける大吼に聞き入った。この日の接収式の後、1万3千人の投降兵がINAへ参加した。バンコクを出発した時には、僅か10余名だった「F機関」だが、その諜報活動が功を奏し戦わずして大軍を味方につけることができた。