戦争開始3か月前の9月バンコクに赴任した藤原少佐はILLの本部にプリタム・シン書記長を訪ね会談した。ILLの本部は漬物工場の2階にあった。藤原少佐はILLのメンバーが香港から日本経由バンコクへ脱出するさい、神戸で彼らの面倒をみたこともあって、会談は友好裏で行われ,開戦1週間前の12月1日、日本側はILLとの間に要旨次のような覚書を交した。

(1)われわれの協力は、日印両国がそれぞれ完全なる独立国家として自由かつ平等なる親善関係を成就し、相携えて大東亜の自由と平和の完成することを終局の念願として取り決められる。

(2) ILLはインドの独立獲得のため、対英実力闘争を遂行するものとする。ただし、日本はインドに対し領土、軍事、政治、経済等に渡り、一切野心を有せずいきあなる要求を持たざることを保証する。

(3)日英戦争勃発にともない、ILLは次の運動を展開する。

(A)ILLは日本軍と共に南タイとマライに前進し、ILLを同地区に拡大史、同地区一般インド人及び英印軍内インド人将兵に対して反英独立闘争機運を昂揚し、かつ日本軍との親善協力機運を醸成するものとする。

(B)ILLはなるべく速やかに英印軍内インド人将兵およびマラヤ地区一般インド人の中より同志を糾合し、インド独立義勇軍を編成し、将来の独立闘争を準備する(以下略)