あらすじを少し書いちゃうので本を読みたい人はここまでにしておいてください。
後半の内容は伏せてあります。
湿地の少女と呼ばれている女の子の話。
ある男の死体が発見されるところから始まります。
「ザリガニの鳴くところ」とは、自然の生き物がありのままの姿で生きられる場所の事を言います。
湿地で生きる生き物たちに1番近い場所で暮らしていたカイヤという少女。
母に捨てられ、兄や姉たちにも捨てられ、父親にも捨てられた6歳の少女がひとりで生きていきます。
読み書きを教えてくれた幼馴染の優しい彼にも捨てられます。
次に見栄えの良い金持ちの男には結婚の約束も裏切られて、良いように弄ばれて捨てられます。
しかも男は結婚してからもカイヤを弄ぼうとし暴力を振るってきます。
必死に抵抗して男を殴り倒して逃げるカイヤ。
仕返しが怖くなり家に戻る事も出来ません。
殴られた瞼が紫色に腫れ上がり口が歪んで全身に痛みが走ります。
DVの父親に殴られる母親の姿が自分と重なるカイヤ。
母親が出て行った理由はわかっても戻ってこない理由がわからなかったカイヤもようやくそこで理解します。
カイヤはどうやって生きていくのか?
男は事故死なのか?
殺されたのか?
話にどんどん引き込まれていきます。
カイヤはいつも孤独で人と関わるのが怖かったけど、湿地の自然や生き物が側にいました。
貝殻や、鳥の羽根、虫たちを観察し分類し細かくノートに書き、絵を描いて集めていました。
研ぎ澄まされたカイヤの耳や目は
動物同士のコミュニケーションを観察します。
自然の生き物たちの美しい姿に興味を惹かれるカイヤ。
字が読めるようになって本をたくさん読み、専門的にもかなり理解できるようになります。
生き物が持っている本能に残酷な面もある事も理解していきます。
例えばカマキリが交尾の最中に雄を食べてしまったり
蛍は交尾したい相手を光の点滅によって変えて呼び寄せ、捕食する時は点滅を変えて違い種の蛍を呼び寄せ騙して食べてしまったり
ウシガエルは鳴く声で雌を呼び寄せますが力のないオスは相手にされないので力のあるカエルのそばで待機して、やってきた雌を騙して交尾したりします。
メスの狐は過度のストレスがある場合子供を捨ててしまいます。
全ては本能のなす業。
本能がつき動かす行動に、生き物は簡単に騙されます。
騙さないと生存出来ないという事です。
読みながら、カイヤの孤独と強さと弱さを共に感じました。
自然の、生き物の本質を知るというのはとても大切なことのように思いました。
『ザリガニの鳴くところ』
とても深い本でした。