地下鉄に乗って (講談社文庫)/講談社
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タイムスリップというと、SFチックな物語を想像してしまいがちだが、浅田次郎さんという類まれな作家の手にかか ると、渋い邦画のような味わいを醸し出すから不思議だ…
冒頭の掴みから、常に予想すらさせない展開で、タイムスリップのメカニズムに疑問を感じる余地が与えられなかった。このような設定でしが描けない世界観があり、私が大好きな池井戸潤さんの『BT’63』は、この作品のオマージュとして書かれたのでは?と思う程であった。
物語をじっくり味わいたいという気持ちと、早く結末を知りたいという衝動を、常に闘わせながら読まなければならなかった。優れた作品は、読んで楽しいだけではなく、読者に人生を問いかけてきたり、示唆を与えてくれたりするところがある。この『地下鉄に乗って』は、まるで「あなたにとって人生とは、家族とは何ですか」と訊いてきているようだった。
主人公である真次の人生は波乱に満ちており、多くの読者の人生とは隔たりがあると思うが、読了後は、自分の過ぎ去った人生と父、母、妻との関係とをメトロに乗って確かめに行きたくなることだろう。
続いて『鉄道員』を読み始めたが、これもいいなぁ~