今日、起きた出来事である。
マンションの車寄せで、私は荷物を下ろしていた。そこには確かに、別行動をしていた夫の姿があった。

夫は昨夜、家には帰ってきていない。何の連絡もなかった。
おそらく、近所にある実家にでも身を寄せていたのだろう。それはいい。今の私たちの距離感からすれば、驚くようなことでもない。
だが、その後の光景は、私の理解を遥かに超えていた。
我が家の車には、一目でそれと分かる特徴がある。ナンバープレートだって、見間違えるはずがない。
そんな車が目の前に停まっていて、そのすぐ傍らで家族が荷物を下ろしている。それなのに、彼は気づかない。あるいは、気づかないふりをしている。
至近距離にいたにもかかわらず、彼は一度もこちらを見ることなく、声をかけることもなく、ただ私の横を通り過ぎていった。
そんなことが、果たしてあり得るのだろうか。
同じ空間にいて、すぐ目の前に家族がいて、見覚えのある車が停まっている。その状況に対して一切の反応がないという事実に、私は言葉を失った。
もし本当に気づいていないのだとしたら、それは恐ろしいほどの無関心だ。
だが、もし気づいていてあえてスルーしたのであれば、それはあまりに冷徹な拒絶である。どちらにせよ、私にとっては「ありえない」出来事だった。
無視されたのか。それとも、私はもう彼にとって、視界に入ることもない空気のような存在になってしまったのか。
そんなこと、ある?
その問いだけが、頭の中で何度も繰り返される。
ありえない。そう思う一方で、目の前の現実はあまりに静かだ。
声をかけることすら、できなかった。ただそこに漂う不気味な違和感だけが、私の背中を凍らせる。
意図的な無視なのか、それとも極限の鈍感さなのか。
確証はない。だが、あの一瞬の空白に、言葉にならない恐怖を感じたのは事実だ。
不思議で、不条理で、ただただ、ありえない。
今日、あの場所で突きつけられた無の感覚を、私はどうしても拭い去ることができない。










