侍タイムスリッパー | Pessimistic Optimist

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徒然の想いと出来事

昨晩、元来全くノーマークだった1本の邦画を劇場鑑賞してきました!!今年23本目となる劇場鑑賞映画です。

 

「侍タイムスリッパー」という自主制作作品でした。

 

ブログ上だけのお付き合いで、かれこれ10年になる方が居られるのですが、その方はご自身で真剣も数刀所有されいて、実際の考え方や生き方も非常に武士の魂を感じる方でもあります。

 

滅多に映画の事など書かれないその方が、何故か今作を推奨されていたので初めて知り気になりました・・・しかし観た事も聞いた事もない映画だし・・・一体どんな映画なんだろう??

 

監督も出演者も主演者も知っている名前が全くない・・・それもその筈、自主製作映画で、昨年やっと関東の1館だけで上映されたところ、たちまち口コミやSNSで広がり、約1年後の今頃に、全国120館で上映される事になった作品でした。

 

以前同じ様に全国公開に広がっていった「カメラを止めるな」似た経緯の作品が、又出てきたのか~と俄然興味が湧きました。

 

更に以前から楽しみにしていた、三谷幸喜最新作で、密かなファンである長澤まさみが主演、他の出演者も好きな俳優大挙という豪華絢爛?な「スオミの話をしよう」を観ようとしていたのですが予告を観た時に嫌な予感満載となり、実際に三谷作品の中でも、最低と思える世間評価で、酷評の大半は私が直感的に感じた嫌な部分を指摘するものばかりでした。

 

比して「侍タイムスリッパー」の世間評価は「スオミ・・・」とは雲泥の差で高く、それこそ金を掛けまくった超メジャーな作品より、超低予算の自主制作映画が大きく評価されている、という嬉しい構図になっており、もうスオミは無視して今作を観に行く事にしました(;^ω^)

 

ドイツやオランダ、ノルウェー、デンマーク、インド、中国等の映画ではよくある事ですが、お金を払って劇場鑑賞した邦画において、監督も出演者も誰1人として知った名前の無い映画を観たのは今作が初めての体験で、その意味でも意義深い作品でした。

 

この作品は、内容といい、演出、芝居、音楽といい、全てにおいて、本当に素晴らしく、しみじみと心温まる映画でした!!

 

幕末に生きていた、会津藩士が政敵と決闘している時、落雷にあいタイムスリップしてしまい、何故か現代の京都撮影所の、時代劇専用のオープンセット内に登場してしまいます。

 

純然たる武士が如何にして現代社会に適合しながら、生きる道を見つけていくか・・・見つけた道が、時代劇の斬られ役専門の役者業・・・しかし時代劇は斜陽を極めている現状・・・その中で主人公の武士はどう生きていくか・・・

 

というのが基本テーマですが、主人公にまつわる人々の心情と、凋落していく時代劇の現状、哀愁が絡み合い、そこに中盤からは思いもしなかった展開も加えられ、滅んでしまった武士と、滅びかけている時代劇文化をオーバーラップさせた人情と悲哀を、秀逸に描いています。

 

笑えるユーモアセンスも抜群で、笑いながらも涙するという、良い映画の典型ともいえる、非常にオーソドックスながら、斬新さも感じる快作になっています。

 

監督、脚本も含め1人11役をこなしている、安田淳一という方はそれこそ私財を投げ打って、撮影終了時の手元金は7,000円しかなかったらしく、撮影中に父上が亡くなり、家業である米農家の仕事も引き継ぐ事になり、大変だったそうです。

 

劇中、タイムスリップしてしまった主人公の武士が空腹の極みの時に、親切な老夫婦から施して貰い涙ながらに食すおにぎりも、安田監督の田圃で採れたものだそうです(*^^*)

 

そうした手作り感のある、しかし自主映画的なチープさは全く感じない素晴らしい出来で、安田監督の才能に感服します。

 

又主要人物を演じる、山口馬木也、冨家ノリマサ、沙倉ゆうの、峰蘭太郎、といった名前も顔も知らなかった俳優陣全てが、素晴らしく、売れている俳優ばかり並べて作る顔見せ軽薄メジャー映画が主流を占める中、かつて売れていない俳優だからこそ出せる味というか凄みを感じる事も出来ます。

 

そして作品のテイストや題材からしても個人的には鑑賞しながらあの名作「太秦ライムライト」を想い出していましたが、エンドロールには、何故か英語で、福本清三氏に感謝を込めて!と出てきたので、今作のもつスピリッツに改めて納得でした!!

 

こういう映画こそ、1人でも多くの人に観て欲しい、所謂日本人の映画や時代劇に対する愛を感じる、ある種原点とも言える作品ですので、超お薦めしたいと思います(*^^)v