オッペンハイマー | Pessimistic Optimist

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徒然の想いと出来事

見るかどうか悩みながら、更に上映時間が合わない週が続く等々で、もう見逃してもイイか~と思っていた矢先、先週1回上映ながら時間がバッチリ合い、今頃ですが劇場鑑賞してきました。

 

何かと話題の「オッペンハイマー」でした。

 

今作の監督、クリストファー・ノーランは、ダークナイト(バットマン)3部作、インセプションインターステラーと立て続けに、非常にイマジナブルで面白い映画を排出した監督で、個人的に一時期は欧米で一番好きな監督となっていた人です。全作、監督だけに留まらず脚本を手掛けていた事も素晴らしいです。

 

ただ、その後発表されたノーラン監督としては初となる史実に基づいた映画ダンケルクでしたが、これが個人的にはガックリする出来で、一気にノーラン熱が冷めてしまいそうでした。

 

それでも次の作品、テネットは元来得意とするSFものだし、今度こそノーラン監督らしい映画だろう・・・と気を取り直して観に行きましたが、この作品もややこしいだけでもう一つでした。

 

いよいよノーラン監督の旬も終わったのかな~という感じでしたので、ノーラン監督の新作が、先回ダンケルクで失敗している史実物である今作だけに、観に行くべきかどうか随分迷いました。

 

そんな訳で、終映間近の鑑賞になってしまった「オッペンハイマー」でしたが、少なくとも、ダンケルクテネットよりは良い作品で少しばかり安堵するものがありました(^-^;

 

かの有名な原爆の父とも呼ばれる、オッペンハイマーの半生というか原爆を作りだすに至る歴史を、人間描写を軸にして描いている今作ですが、演出の妙と音楽の絡みが素晴らしく地味な話の展開ながら、3時間の長尺をものともしない作りになっています。

 

一大スペクタクル叙事詩とでも呼べば良いでしょうか(;^ω^)

 

ただ、日本での公開が半年以上遅れたのも納得出来るというか、唯一無二の被爆国であり、当時の生々しい惨状を少なからず知る我々からすると、余りに軽く扱われている、広島、長崎への投下問題や大量殺戮に対する反省みたいなものは全く感じられない作りで、その点での引っ掛かりは拭えないまま鑑賞していました。

 

結果的に政治利用されただけのオッペンハイマーというスタンスは分かりますが、かといって当時で20億ドルという総予算を貰い全ての研究者、開発者が気持ちよく仕事に没頭出来る環境を含めた総責任者的役割をこなしていくオッペンハイマーという人が、求道者的研究オタクだったとは思えない、むしろ政治的忖度が得意なマネージャー気質だったの?という感じがしました。

 

という事で映画としては、そこそこ良い作品でしたが、終始オッペンハイマーにも、それを取り巻く軍人、政治家にも、果ては、一緒に研究開発している仲間や家族にも、感情移入出来ない、ひたすら被爆した者の事を考えない一方通行的正義?屁理屈を見せつけられているだけの違和感が拭えない時間になりました。

 

出演者はノーマン監督作の中でも、かつてない程に豪華で、ロバート・ダウニー・Jrゲーリー・オールドマン等は、出てきても一瞬分からない程メイクアップされていて、その他目白押しの有名俳優のメイクや演技を観るだけでも価値はあります。

 

被爆の事を一切に気にせず鑑賞出来る方には、お薦めしたい、見応え充分の重厚な人間ドラマという気もします(*^^)v