映画「夜の外側 イタリアを震撼させた55日間」(後篇) 2024(令和6)年8月9日公開 ★★★★☆

(イタリア語、英語: 字幕翻訳 岡本太郎)

 

 

1976年3月

朝、小学生?の娘アレクサンドラ(アレ)が学校へいく準備をしています。

チャイムの音。

母(アドリアナ)の友人のヴァレリオがおいしいパンを買ってきてくれて

アレは大喜び。

アドリアナは、小声でヴァレリオにささやきます。

「あの子には知られたくないの」

ちょうどそのとき、アレは引き出しのなかから拳銃を見つけていました。

それに気づいたアドリアナは気が動転して大声をあげます。

 

(ここでタイトル)

 

第4章 「対立」 赤い旅団

 

海に向かって一斉に発砲し、雄たけびをあげるメンバーたち。

1977年3月

アレを学校に送るアドリアナ。別れ際に

「ママはしばらくミラノでお仕事なの。ヴァレリオもいっしょよ」

「お迎えにはおばあちゃんが来るから、いい子にして勉強してね」

 

ローマ市内

アドリアナともうひとりの女性がまちぶせしており

男が建物からでてくると、道を聞くふりをして発砲します。

彼は大学の経済学部長で、8発の銃弾で足と骨盤に重症を負わせますが

アドリアナは逮捕されることもなく、その後もモーロの尾行などにも参加。

 

護衛を全員殺し、モーロの誘拐に成功したことを知ると喜びの叫びをあげますが

幹部たちのやり方(自分を登用しなかったことも)にはことごとく反対。

声明文を公開してしまったり、モーロが要望している聖書を用意しないのも不満。

なによりモーロ処刑には異論を唱えますが、彼女の意思はすべて無視されました。

 

 

第5章 「家族」 エレオノーラの焦燥

 

 

事件前、モーロとはまったく会話もなく、食事の支度をすることもなく、

夫の帰宅時にはいつもベッドの中にいたエレオノーラ。(←これは第1章から)

 

誘拐事件のその時、彼女は教会で神父に懺悔をしていました。

「夫は家のことは私にまかせて国民にむけて原稿ばかり書いている」

「夫から愛を感じないのです。私はどうすれば・・・」

神父は話を聞いて

「愛していないのはあなたのほうでは?」

「まず自分から愛することが大切です」

 

その時突然、警報やヘリの飛行音が響き、モーロ党首の誘拐が告げられます。

事件現場でむかったエレオノーラを取材のカメラが囲みます。

家にも政治家たちが形ばかりの慰めのことばと抱擁のために押しかけ、

まだ死んでもいないのに、お悔やみのことばを発するものも。

マスコミもしつこく、家族は家から出られなくなります。

 

モーロからの手紙を受け取り、党の幹部であるザッカニーニに連絡するも

交渉のテーブルにつこうとはしないようす。大統領もうわべの言葉ばかり。

夫に恩のあるコッシーガも然り。

 

あるシスターが拉致場所の情報を伝えたのに(警察には)狂人扱いされたといわれ、

エレノーラは危険承知でその場所に乗り込みますが、

なんとこの事件を題材にした大学の演劇実習だったのでした。

 

 

第6章 「告解」 55日目

 

5月8日、若い神父が目隠しをされて車から降り、隠し部屋へ。

そこにはやつれたモーロの姿がありました。

「ここに来てはじめて人間の顔を見ました」と、モーロ。

そして告解をはじめます。

「私は元友人の議員たちを心から憎んでいます。

面とむかって怒鳴りつけたい衝動にかられます」

「今まで不信感をもちつつも、目を背けて生きてきた自分も許せない」

「死にたくない、全力で生きたいと思うのは狂っていますか?」

「あらゆる役職を放棄しても、命まであきらめろというのですか?」

神父は

「みな、あなたの解放を望んでいる。願うより信じて。

またお会いしましょう」というのが精いっぱいでした。

 

 

翌日、「解放する」といわれたモーロは目隠しをされて車のトランクに入れられます。

そして「カエターニ通りで不審車両がみつかる」という連絡が入り、

トランクから生きているモーロを救助。

そして第1章の冒頭部と同じシーンに戻ります。

 

そして、もうひとつの結末。

公衆電話から電話する旅団のメンバー。

「カエターニ通りに停めてある赤いルノーのなかに遺体がある」

「遺体の場所を家族に教えるのがモーロの最後の願いだ。必ず家族に伝えろ」

そして車からはモーロの遺体が発見されます。

 

家族からの声明は

「アルド・モーロに対する国葬も勲章もすべて辞退し、

家族は沈黙を求めます」

 

翌日親族葬が行われ、3日後には棺のない国葬、

3か月後にはパウロ6世が死去。

1985年にはコッシーガが首相になり

黒幕といわれたアンドレオッティも長年にわたり政界で権力を持ちつづけました。

                    (あらすじ ここまで)

 

 

 

後半は、立場の違う2人の女性の視点から描かれます。

 

 

赤い旅団の女性メンバーは、「夜よ、こんにちは」の女性とは別人でしたね。

 

アドリアナ・ファランダという人物は実在し、5月29日に逮捕されたと最後に字幕がでましたが、

当初から、襲撃犯のパイロットの制服の購入者として顔写真つきで指名手配されていたから

なんでもっと早くにつかまらなかったんだろう?

ウィッグをかぶったくらいでごまかせないと思うけど・・・

娘との実生活は偽名で生きていたのかしら?それともアドリアナが偽名?

 

「夜よ、こんにちは」のキアラにはちょっと共感する部分もあったのですが、

彼女の行動はまったく理解できず。

護衛を5人も殺して拉致したニュースに狂喜、興奮すると性欲が高まるのも気持ち悪い。

自分の幼い娘のことをどう思ってるかも謎です。

至近距離から8発も撃って致命傷も負わせられないのは戦士としてもポンコツなのに

なぜあそこまで強気なの?

あの襲撃事件だけでも即つかまりそうなのに、イタリア警察がダメなの?

これも首相の差し金なの?

 

??ばかりですみません。

 

1978年に起きたこの事件のこと、鮮明には憶えていないのですが、

直前に日本でもハイジャック事件があり、「人質の命は地球より重い」ということで

「超法規的措置」で囚人を逃がしたんでしたよね。

よど号以来、日本ではこういうのが定番になっていたので、

多分この事件の「テロに屈しない」というのを聞いて、善悪はともかく

「すごい!こういうのが許されるんだ!」と思った記憶はあります。

 

私のように予備知識の貧弱な人がこれを観ると

「テロも悪いけど、自分たちの都合でモーロを見捨てた政治家はもっと悪い」

と、誘導されがちですけど、

いやいや、悪いのはテロリストだから・・・というのが正直な感想。

 

ところでこの全篇6時間ちかいこの作品ですが、

やっぱり長い!と思いました。

テレビシリーズ6話分なら納得できるけれど、

劇場公開だと、観客も映画館も大変ですよ。

 

 

ル・シネマでは、大きい方のホールを2週間この作品が独占していました。

それでもこれが限界なので、スケージュールを合わせづらいです。

明日からは回数が減るので、後編を大急ぎで観てきました。

 

超長編映画のなかで、「この長さが必要」と思ったのは(私は)ほとんどなくて、

「牯嶺街少年殺人事件」と「アンダーグラウンド」くらいですね。

本作も「テレビ版」「配信版」としてこれは残して、

「劇場公開版」として半分くらいの長さの「別物」の作品を希望したいところです。