映画 「ブリーディング・ラブ はじまりの旅」2024(令和6)年7月6日公開 ★★☆☆☆

(英語: 字幕翻訳 岩辺いずみ)

 

 

社名入りのピックアップトラップを走らせる父(ユアン・マクレガー)

助手席の娘が突然「おしっこ!」といい、車のすぐわきで放尿をはじめます。

車に戻るのを父が待っていると、いきなり逃げ出す娘。

慌てて父が追いかけ車に連れ戻します。

落ち着きなくタバコを吸う娘。

「さっきは(自分が追わなかったら)どうする気だったんだ?」

それには答えず

「意外と体力あるね」と娘は笑っています。

 

スタンドで食料を仕入れるふたり。

テレビに夢中な店員の目を盗んで娘は万引きしますが

(強いお酒の瓶?)父は気づきません。

 

ここでタイトルが出ます。  (あらすじ とりあえずここまで)

 

 

今回もちょっと早めに切ってしまいましたが、

これ、ユアン・マクレガーが別れた妻との間の娘クララの企画の映画に

実の親子(しかも設定も同じ)で出演したことが大きく報じられていました。

 

 

 
ショーン・ペンが、元パートナー、ロビン・ライトとの娘ディラン・ペンと
親子共演した2年前の映画「フラッグ・デイ」が良かったので、
それと見比べるつもりだったんですが
設定(別れた元父と娘で、実生活も同じ)はかなり近いのに、別物でしたね。
 
 
本作のほうは、けっこう良いレビューが目立ったので、期待していたんですが
まあまあ退屈なロードムービーでした(笑)
 
冒頭から、娘の方がかなりヤバいやつだということはわかるので
これがどう転がるのかと思ってたら、どんどんつまんないほうへ・・・
 
(★の数で想像つくと思いますが)
この作品が好きな人が読んだら気分を害するようなこと書きますので
その場合はスルーしてくださいね。
 
 
続きです(ネタバレ
 
時折娘の幼少期のシーンをはさみながら
親子の関係が少しずつあきらかになってきます。
 
 
昔は一緒に遊んだりふざけたりしてくれる大好きなパパだったのが、
10年くらい前?にアルコール依存症になって、妻と娘を捨てて出て行き
今の父には新しい家庭があるようです。
 
久しぶりに再会した父娘がトラックで向かう先は
サンタフェにある知人のアトリエ。
娘には絵の才能があると信じてる父は
「何日か泊ってアトリエをみせてもらっているうちに
また書きたくなるんじゃない?」
ということで、ドライブに誘い出したのでした。
(これはウソだということがおいおいわかるのですが・・・)
 
トラックが突然エンストを起こし、レッカーを依頼すると
やってきたおばちゃんドライバーがかなり強烈なキャラで
「修理工場に持って行くより、うちの兄に頼んだ方が安くあがる」
と、自分の家に連れて行かれます。
 
 
そこでは誰かの誕生パーティをやってきて大賑わい。
彼女の兄(といってもおじいちゃんですが)は
「GMCのクラシックカーなんてすごい!」と、
ピックアップトラックに興味をもって、嬉々として直してくれようとしています。
 
 
娘はピエロの姿で子どもたちに風船を配っていた男に思わせぶりな態度をとって、
ビールをもらったり、洗面に入って棚のドラッグを漁ったりしていましたが、
「車は直ったから行くぞ」と父にせかされて、しぶしぶ車に戻ります。
 
そしてふたりは「飲酒の会」へ。
父はかつての依存症の体験を赤裸々に告白し
娘への懺悔の想いをみんなの前で語ります。
(ただ、父はすでに依存症を克服しており、
新しい家庭ではよき夫、よき父親となっていました)
 
 
本当ならこの会に参加すべきなのは娘のほう。
前の日に娘は発作を起こし、病院で死にかけていたのですが、
本人は自分が深刻な依存症だという自覚はまったくないのです。
 
娘はその後も何回か尿意を催し
車を止めて放尿するのですが、
その途中でなにかに噛まれたらしくて
「あそこが痛い」と言い出します。
 
すでに病院もドラッグストアも閉まっており
たまたま声をかけてきた売春婦に診てもらうと
冷やしていれば直ることがわかります。
彼女は、父親が自然保護官で動物に詳しい女優志望の女性でした。
 
 
宿泊予定のモーテルに到着。
遊泳禁止のプールでいっしょに泳ぎ、いっしょに怒られて
ふたりの距離は縮まりますが、
父が買い物中に、娘が父の携帯に出たことから状況がかわります。
 
それは父の今の妻からでした。
「あなたがリハビリ施設にいく判断をしたこと、勇気があると思うわ」
「きっと良くなる。退院したらぜひ会いましょう」
 
父が自分を連れて行こうとしているのは(知人のアトリエなんかじゃなく)
リハビリ施設だとわかった娘はモーテルを飛び出してしまいます。
ヒッチハイクするも車は止まらず
店にいた知らない男に声をかけて
「ハイになれる場所を教えて」と男の車に乗り込みます。
いっしょにコカインをやってハイになりますが、
突然意識を失い倒れてしまうと、恐ろしくなって道に放置されてしまいます。
 
その後、娘は通りがかりの人に助けられ、
携帯を借りて実の母に電話。
 
 
そのころ父は必死で街中を探し回っていましたが、
そのあと父にも電話して迎えにきてもらいます。
 
父は運転を娘に交代して
「どこへ向かうかはお前が決めろ」
「Uターンだってできるんだぞ」
 
娘が運転して向かった先は、サンタフェのリハビリ施設でした。
                   (あらすじ ここまで)
 
 
ふたりが車で走ったのは、サンディエゴからサンタフェまでの約1300㌔。
 
 
荒涼とした赤茶色の大地を走り抜け、
クセ強めな人たちとの出会いもある、典型的なロードムービーです。
 
 
そしてそのなかで、疎遠だった父と娘がお互いの溝を埋め関係を修復する・・
という、まあ、よくあるやつです。
 
娘のほうは自分を捨てた父を恨んでいるものの
幼少期の父との触れ合いは楽しい思い出として残っているし
年頃の娘が勝手に父のセーターやジャケットを着るくらいだから
けっこう「パパ大好き」な娘ですよね。
 
だけど、やってることは支離滅裂。
依存症で精神をやられているのかと思ってしまうくらい。
 
一方、父のほうは、娘を捨てた負い目に加えて
「騙してリハビリ施設に連れて行く」という大役もあるわけで
最初からめちゃ下手に出てるから、ますます娘を助長させているとか?
 
離婚は夫婦間の問題だから、母親の対応を知りたいのに
母(元妻)は、全然登場しませんよね。
 
「パパはあなたを捨てて出ていったのよ」と、何度も聞かされていたのか?
「アル中になったのもパパの遺伝よね」とかいわれていたのか?
少なくとも、「リハビリ施設に連れて行く」という大役を
疎遠だった元夫に丸投げしたらダメな気がするんですが、
ここはちょっと観客の想像力では補完できませんよ。
 
 
ところで、
ユアン・マクレガーの実年齢は53歳、娘のクララは28歳ですが、
映画のなかでは47歳と20歳(19歳?)になっていて、
年の離れたカップルに間違えられたりしていました。
ユアンは充分年相応に見えましたが、
クララは未成年に見えました?
 
 
表情もほぼこのワンパターンで、女優としての魅力は感じなかったな。
 
ただ、
「娘の持ち込み企画にユアンパパが全面協力した」というのは
めちゃくちゃ伝わりました。(そこ?)
 
ユアンもクララの母と離婚しており、
「捨てた」過去に負い目を感じているのかもしれませんが、
その時クララはすでに成人していたそうです。
 
本作の共演でふたりの溝は埋まったのでしょうか?
それならよかったけど、それが目的の映画だとしたら
お金払って観る人のことも考えてくださいませ(笑)
 
そういえば、この父娘には名前がなかったかも。
(「ターボ」というのは、小さい時の娘の愛称だったみたいです)
名前をなくして、どこにでもいる「父と娘」を描いたつもりなら、
それは違う気がするけどなぁ。
「世間の父と娘あるある」的なシーンはほとんど思い出せません。
(あったかもしれないけど、何度も登場する「音声付き放尿シーン」にかき消されてしまったかも)
 
 
救いは旅の途中で出会う人たちがみんな「良い人」だったこと。
あのレッカー車のおばちゃん(確か名前はエルシーでした)の家族の
おおらかさ。(多分トランプ支持者のような気がしました)
シボレーの旧式車に惚れて、見ず知らずの人の車を喜んで直してくれて、
巨大かぼちゃまでくれる、あのおじいちゃんもサイコー!