映画 「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」 2024(令和6)年6月21日公開 ★★★★☆

(英語; 字幕翻訳 松浦美奈)

 

 

1970年12月 ボストン郊外の全寮制の高校、バートン校。

 

クリスマス休暇でほとんどの生徒が自宅に帰りますが

事情で寮に残るものも例年何人かいます。

 

 

ハナムはこの学校の古代史の教師ですが、

融通の利かない性格で人間関係がうまくいっていません。

みんなが嫌がる休暇中の監視役を校長から押し付けられ、

しぶしぶ従うハナム。

 

彼は、金持ちの子弟の評点に手心を加えず

そのためにその生徒が決まっていた大学に行けなくなったり

今までも何度も問題を起こしていたようです(正しいことをしてるんですけどね)

 

今回も、F評定をじゃんじゃん出して、生徒たちをおびえさせ

年明けの追試に備えて休暇中も勉強させようとしています。

(まあ教師としては当然なんですが)

 

 

アンガス・タリーは今回のテストの成績もよかったし

休暇にセントキッツ島にバカンスに行くのをだれよりも楽しみにしていたんですが、

直前に母から電話がかかり

「(継父との)新婚旅行にいくことにしたから、今年は寮に居てね」と言われます。

 

 

居残り組はこの5人

 

左から

① アレックス・オラーマン

② イエジュン・パク

③ テディ・クンツ

④ ジェイソン・スミス

そして

⑤ アンガス・タリー

 

 

 

居残り組の食事を作るために厨房スタッフのメアリーも残ります。

メアリーの一人息子カーティスもこの学校の出身者でしたが

経済的な問題で陸軍学校に移り、ベトナム戦争に行って

わずか19歳で戦死してしまいました。

(夫もカーティスの生まれる前に事故死して、メアリーには家族がいません)

 

食材の配達はないから残り物を使い、

暖房も切られるから、夜は保健室のベッドで合宿状態。

学校の立派なクリスマスツリーは、

まだクリスマス前で転売できるということで、

ほかに売却されてしまいます。

 

 

クリスマス前なのに衣食住は切り詰められ

ハナムの監視は厳しいし、子どもたちは不満だらけ。

 

6日目の12月22日、突然スミスの父がヘリで迎えに来て

親と連絡のとれた4人が乗り込んでいきます。

 

 

後に残ったのはアンガスひとり。

 

アンガスはハナムのもっている鍵を盗み、学校のあちこちに出没しますが

立入禁止の体育館でふざけていて、腕を脱臼してしまいます。

 

これがバレると、アンガスは退学、

ハナムも監視不行き届きでクビになる可能性あり。

「われわれだけの話にしておこう」

 

ふたりだけの秘密ができると、一緒に行動することがふえ、

クリスマスイブには、学校スタッフのミス・クレインの家のパーティに

メアリーと3人ででかけて楽しみます。

アンガスもミス・クレインの姪のエリーズにキスされてドキドキ。

 

 

寮に帰ると、なにかクリスマスらしいことをしてやろうと

ハナムは売れ残りのツリーを買ってきて、プレゼントも用意。

(といっても、「アウレリウスの自省録」ですが)

 

 

メアリーの手料理を食べ

「こんな家庭的なクリスマスははじめてかもしれない」とアンガス。

そして

「ボストンに行きたい!」とくりかえすので、

ハナムも

「外出はダメだが、社会見学ということでいっしょに行こう」

と、ボストンにむけて車を走らせます。 (あらすじ とりあえずここまで)

 

 

 

 

アレクサンダー・ペイン監督とジアマッティだから、つまらないわけない!

邦題の副題がコメディ色を強調していますが、

楽しく笑いたいと思って観たらあてが外れるかも。

どちらかといえば熟年むきの「ほろ苦い」お話でした。

 

 

校長との会話がなんとなく「ため口」だったのが気になったのですが、

今の校長は、ハナムの最初の教え子だったこともわかってきます。

教え子時代の校長は「典型的な頭の悪い金持ちの息子」で

今も、親の献金額で成績に手心を加えて当然!と思っています。

そしてフェアな採点にこだわるハナムのほうが、みんなに煙たがられているのです。

 

そんなことで嫌われていたら気の毒な気もしますが、

食事の最中に汚い話をしたり、今ここでその話題?ということが多く、

かなり空気読めない感じはあるかも。

やたらと「引用」が多いのも、ちょっとウザいし。

それから容姿をいじられても、自虐的に返せればいんでしょうけど

なんかいつも堂々としているのが、

逆に「扱いづらい」感じになってるのかもしれません。

 

 

ミス・クレインのように、優しく接してくれる人もいるけれど

彼女は誰にも同じように優しいんですよね。

(こういう人もこういう人で、勘違いされることが多くてシンドイのかも)

 

ハナムは、(アンガスから「臭い」といわれて)

「トリメチルアミンが分解できない体質」と言っていたから

オヤジ臭とか加齢臭とかではなく、日常的に魚の腐った臭いがするのかも。

(それもちょっとキツイですが)

 

つづきです(ネタバレ

 

出産の近い妹の家に行きたいというメアリーを途中でおろして

ハナムとアンガスはボストンへ。

 

 

ふたりでボストンの街をぶらぶらしていると、

偶然ハナムの昔の知り合いに声をかけられます。

彼はハーバードの学友で、今はかなり成功しているようです。

 

「君はどうしてる?」と聞かれ

「各国の研究機関とかで働いて忙しくしてるよ」

と、しれっとウソをつくハナムに驚きながらも

「甥のレナードです。おじさん、今書いてる本のことを話したら?」

とか、うまく話をあわせるアンガス。

「君が立ち直ってほっとしているよ」といって旧友は立ち去っていきました。

 

「バートン男子は嘘つかないんじゃないの?」

と、あとでアンガスに問い詰められると・・・

 

「実はハーバードでルームメイトに論文を盗まれた」

「彼は有力者の息子だったから、こっちが盗んだことにされて退学処分」

「卒業してないことを知りながら前のグリーン校長はここに雇い入れてくれたから

もうここでしか働けないんだ」

 

濡れ衣だとしても、こんな「学歴詐称案件」を

アンガスにしゃべってしまうほど

2人の間の信頼の絆が強くなってきましたが、

アンガスはトイレに立つふりをして、いつもなにかコソコソやっています。

 

タクシーと停めて乗り込もうとするアンガスをつかまえると

実は、ボストンの病院にいる実の父親を訪ねたいのだといいます。

「むかしは自慢のパパだったのに

4年くらい前から精神を病んで、物忘れや暴力が始まった」

「母とは離婚して施設に隔離。母は金持ちと再婚して新しい人生をはじめた」

 

もちろん母からは実の父に会うことは禁じられているのですが、

ハナムがつきそって病院へ。短い再会を果たせました。

 

 

新学期がはじまりました。

ハナムが呼ばれて校長室に行くと、

アンガスの両親が来ていて、父に会いにいったことがバレていました。

継父は「陸軍学校に転校させて、根性を叩き直す」といっています。

 

ハナムは、

「ご子息は頭も切れるし、大きな可能性を秘めている」

「なぜそれをつぶそうとするのですか?」と

責任をすべてかぶって、自分が職を辞することにしました。(あらすじ ここまで)

 

 

ラストは
これでいいの?って思いましたが、ハナムに迷いはなかったのでしょうね。

 

「1970年12月」とか冒頭に書いてしまいましたが、

説明的な字幕は皆無なので、

年越しのカウントダウンのシーンまで私はわからずに見ていました。

家電や車で時代考証できるスキルもなく、

「ベトナム戦争」くらいしかキーワードがなかったので。

 

説明字幕入れて、最初の方テンポよく進めれば1時間半に収まったと思うのですが

そういう作風じゃないのでね。

 

ハナムの役はポール・ジアマッティにしかできない役ですよね。

オスカー獲ってほしかったな。

 

本作はノミネートはたくさんされたものの、受賞したのは助演女優賞だけでした。

メアリー役の演技を絶賛する人が多いけど、私にはこの役はちょっとノイズに感じました。

 

プラスサイズというよりは巨漢、それもちょっと不健康なくらい太ってます。

「料理上手なデブなおばちゃん」のレベル越えていて、

あちこち肉割れしてるし、椅子が壊れそうだし

体動かすのもしんどそうで、こちらまで疲れてセリフが頭に入ってきませんでした。

(なので彼女のセリフは憶えていなくてあらすじに書けませんでした)

 

むしろ「やせぎす」のいつもカリカリしてるおばちゃん、

のほうが役柄に会ってたような気もしますが

料理人(栄養士)なのにデブ → 負け組 

みたいなことなんでしょうか??

 

「居残り組」にはもうひとり、施設担当(清掃や修繕)のダニーという職員がいて

出番はちょいちょいあるんですが、ストーリーにかかわらないし、画像も見つからず。

 

最初の6日だけほかに4人の生徒がいっしょでしたが、

名前を覚えただけで中途半端に退場。

モルモン教のオラーマンと韓国人のパクは、体が小さくてとても同級生には思えませんが

もしかして飛び級とか?

 

アンガスが12月22日よりあとに脱臼して、24日のクリスマスイブには完治してるのも

これでいいんですか?

 

・・・とか、最後は文句ばかりになりましたが、

良い映画でしたよ。

 

クンツに落書きされたけど、

アンガスの宝物は、昔の家族写真