映画 「猿の惑星/キングダム」 2024(令和6)年5月10日公開 ★★★★☆

(英語; 字幕翻訳 牧野琴子)

 

 

 

シーザーの亡骸に花を手向けるエイプたち。

彼が荼毘にふされ、伝説の英雄となった後、

それから何世代もあとの世のはなし・・・

 

山水画に描かれるような渓谷。滝が流れ、ワシは魚をとらえて舞い上がり、

猿たちは切り立った崖を軽快によじ登っていきます。

かつて人間が作った設備もすでに廃墟となり緑に覆われているようです。

 

イーグル族は猛禽を飼育するチンパンジーの種族。

一族の若者、ノア、アナヤ、スーナは大人の仲間入りをするために

猛禽類の巣の卵を狙っていますが、ノアはひときわ高い崖の上までのぼり

母鳥に見つかって攻撃され、滑り落ちるも、なんとか1つの卵を確保。

村に帰る途中、不審者の気配を感じたことを、村の長老である父に相談します。

 

父は、偉大なイーグル遣いの匠でもあり、

イーグルのボス、サン・イーグルを操れるのも父だけです。

 

布についていた血液の匂いから、侵入者はエイプではなく

ひょっとしたらエコー(絶滅したはずの人類)かもしれない・・・

その夜ノアは、再び現れた侵入者を追っているうちに、大事な卵を割ってしまいます。

 

卵は明日の式典にどうしても必要なもの。

夜明けまでにかわりの卵を捕ろうと村を出ている間に、

タイマツを掲げて馬に乗った仮面の集団に村が襲われ、焼き払われてしまっていました。

長老である父は殺され、仲間たちは拉致されてしまったのか、村は空っぽです。

どうやら、仮面の集団は村に現れた侵入者(人間?)を探していたようなのです。

 

ひとり残ったノアが仲間をさがしているうちに穴に落下。

オランウータンのラカが姿を現します。

伝説のリーダー、シーザーを知る最後の生き残りが、このラカでした。

 

 

「あのマスクの連中のボスもシーザーを名乗っているが

名前を利用しているだけの独裁者だ」

「シーザーの時代にはエイプと人間は共存していた」

「本に書かれている記号には意味があり、これで知識を保管するのだ」

 

ラカは若いノアに

「学ぶことをやめてはいけない」といい、

物陰に人間の気配を感じても、威嚇て追い払ったりせず、

食べ物や毛布を与えて優しくしろ、といいます。

姿を現したのは、若い女性の人間。

ノアは母の残した大事な毛布を譲ってやります。

 

 

3人で行動を共にするうちに、この人間(ノヴァと名付けます)には

知性が残っているように思えてきました。

彼女の本名はメイといい、実は、野蛮なふりをしているだけで、

会話もでき、高い知能と判断力をもった女性でした。

 

「3人とも孤独だが、今は仲間だ」と、ラカ。

ところが、またあの仮面部隊に見つかり、ラカは濁流にのまれて流れてしまい、

2人も捕らえられてしまいました。

 

連れてこられた「王国」にはたくさんのエイプたちが肉体労働をしており、

そのなかには母やスーナやアナヤもいました。

 

一方、メイは、本棚のある部屋に通されますが、

そこはトレヴェイサンという人間の学者が住んでおり

プロキシマスにやとわれて、歴史や文化の講義をするためにそこにいたのでした。

彼はメイにお茶を淹れ、着替えを用意してやります。

 

 

 

王国を率いるのはプロキシマス・シーザーという独裁者。

巧みな演説でエイプたちの心を虜にし、力でねじ伏せる暴君でもありました。

                  (あらすじ とりあえずここまで)

 

 

 

前作「聖戦記」をみてないことが心配だったのですが、

どうやら、今回からはまったく新しいシリーズのようで、特に問題はなかったようです。

 

ただ、説明的なセリフやテロップは全くないので、しっかり見ていないとダメですね。

ぼんやり見てたら置いていかれるかも。

 

「プロキシマス・シーザーというのが悪のカリスマ」と聞いていたので、

集落を焼き払ったりすごい勢いで追いかけてくるボス猿みたいなのがそれかと勘違いしていました。

 

しっかり服も着てるし、ものすごい存在感。

デカくて凶暴で、大変な迫力でした。

 

 

これはローランドゴリラの「シルヴァ」で、「司令官」みたいな地位なんでしょうか。

出番はプロキシマスよりも多いくらいでした。

 

プロキシマス・シーザーはこちら

 

プロキシマスはボノボだから、サイズは小さいですが

カリスマ性のある帝王で、独断専行の現実の政治家に実際いそうなタイプです。

(あの人やあの人に見えました)

 

 

今回は、ほんとに彼ら目線のドラマで、

セリフのある人間は、メイ(フレイヤ・アーラン)とトレヴェイサン(ウィリアムHメイシー)だけ。

 

2人以外は誰?って感じ(笑)

 

つづきです(ネタバレ

 

プロキシマスは自らシーザーの後継者を名乗り

群衆の心をひとつにしていきます。

「歯向かったらダメ、受け入れるのが掟よ」と母

「彼が今の支配者だ。服従して恩恵を受けるのが得策だ」

と、トレヴェイサンも言いますが、ノアもメイも納得できません。

 

「王国」のなかには人間の偉業である巨大な格納庫が残されており、

プロキシマスはなんとかしてその中身を手に入れようとしています。

「かつて人間は空を飛んだり海の向こうと交信したりしていた」

「ここの宝から私はそれを学びたい」

群衆を焚きつけて扉を壊そうとしますが、

いくら力をあわせて引っ張っても、鎖は切れ、扉はびくともしません。

 

メイもここに収められている「なにか」を手に入れようとしており、

そのほかの武器類はプロキシマスに奪われないよう、

エイプたちを避難させたあと、海水に沈めようと考えていました。

 

扉を破壊するのではなく、屋上から侵入するために

メイもノアの背につかまって、上へ上へと昇っていきます。

                 (あらすじ ここまで)

 

 

話はこの先もつづくのですが、

ネタバレ回避というより、自分がちゃんと理解できなかったので

あらすじとして書くのは、ここまでにしておきます。

 

とにかく、後半は、

弱くてかわいそうだから守ってあげようとしてた人間の女性が

どんどん本性を現してきて

「何なんだ、コイツは!」っていう展開です。

 

ラカの最後のことばは「一緒にいれば強い」

メイと力をあわせるように言いおいて消えましたが、

結局彼女はノアたちを利用して、邪魔になったら殺そうと思っていたのか?

同じ人間のトレヴェイサンまで、考えが違うとなると即絞め殺してしまいます。

ノアをいつでも殺せるように、銃を隠し持っていましたよね。

 

最初の登場シーンでは

チンパンジーたちの食料や毛布をこっそり盗みにきていたから

ひもじくて寒いのならかわいそう、と分けてあげてたし、

その後もなんども命を救ってあげて、

背負って格納庫をのぼったりもしてあげてたのに

なにかあればノアも銃で殺そうとしてたとか、

ほんと、人間は酷すぎる!

 

ノヴァという名前に聞き覚えありましたが、

猿の惑星オリジナルに出てきていた言葉も文明もない

この原始人みたいな女性がたしか「ノヴァ」でした。

 

 

途中、しまうまの群れと生活していた人間たちはこんな原始的な姿をしていましたが、

メイは、とりあえず下はちゃんとした縫製のスリムパンツをはいていました。

ポリコレ的な?と思っていましたが、結末への伏線だったようです。

 

 

彼女はしゃべれるだけじゃなくて、武器を直したり爆弾をつくったりもでき、

高度な専門知識をもっているようにも思えます。

プロキシマスが

「私の手下が、彼らの価値がわからずに殺してしまったのが残念」

と言っていたんですが、「彼ら」というのはメイの両親だったのかも。

 

「オリジナル版の自由の女神」に近い衝撃度をめざしたのかもしれないけれど

最後のオチ(人間側)はかなり唐突で、ちょっとまだ呆然としています。

本作では、「謎の存在」は人間のほうで、グループによって差がありすぎで

どういう設定?

「それは続編を見てね」ということで、この終わり方なんでしょうが、

期待できるのかそうでもないのか、ちょっとまだわからないなぁ。

 

ただ、チンパンジー側の描写はもうカンペキで、

「気分は私もイーグル族」!

 

手乗り文鳥にさえ無視される私にとっては

猛禽を操れるのなんて、ほんと、憧れです。

ノアのことをずっとバカにしていた「サン・イーグル」が

最後腕に止まってくれて、力になってくれるところとか

胸キュンキュン♡でした。

 

ラカの前では恥ずかしくて歌えなかったノアの「鳥の歌」も

よかったな~!

 

 

最後、高潮(津波?)で溺れる者の多いなか、

イーグル族が生き残ったのは、

断崖絶壁をのぼれないと一人前と認められない

固有の風習のおかげだったんですね。←伏線回収

(あのシーン、まだ津波のトラウマのある人には

ちょっと警告をだしたほうが良いと思うほど、リアルでした)

 

 

チンパンジー側の演技はほんとうに自然で

服を着ていなくても、誰が誰だかわかるからスゴイ。

こういう技術は日本映画ではまだまだでしょうね。

 

 

 

最後に、この伝説の長老シーザーのシンボルマークのペンダント。

度々大きく映し出されていたので(←その割にネットでは画像が拾えない)

この先、このシリーズのマクガフィンとして使われるのかな?

と思ったりして・・・

 

七宝柄って、

日本人にはなじみ深いですけどね。

くら寿司にもちょっと似てる?(笑)