映画「エルヴィス」 2022(令和4)年7月1日公開 ★★★★☆

(英語; 字幕翻訳 石田泰子)

 

 

1953年

パーカー大佐(トム・ハンクス)は、自分がマネージャーを務めている

カントリー歌手ハンク・スノウの息子のジミーから

今、一番イケてるという曲を聞かされます。

「黒人の歌手はやらない」

「いや、彼は白人だ」

「信じられない」

その若い歌手の名はエルヴィス・プレスリー。

 

パーカーは彼に近づき、ハンクの前座で旅公演に連れて行くと

ピンクの衣装に腰を振りながら歌うエルヴィスに女性たちが熱狂。

 

 

パーカーは(ハンクを切って)エルヴィスを大手のRCAと契約を結び

本格的に「プレスリー・エンタープライズ」を設立すると

「ファミリー経営だ」といって両親を経営者にして信用させます。

家族は豪邸に引っ越し、母にはピンクのキャデラックをプレゼント。

 

 

一方で、

「メンフィスの白人が黒人の真似をしている」

「猥褻で下品なステージパフォーマンスが白人を落としめす」

と、白人至上主義者たちから激しいバッシングを受けると、

「燕尾服を着て腰もふらないこと」を約束させられますが、

ビールストリートに繰り出し、BBキングやリトル・リチャードに勇気づけられて

自分のスタイルを貫くことを決めたエルヴィス。

ライブで「トラブル」を歌い上げ、警察に拘束されてしまいます。

 

収監をさけるための手段として

1958年、エルヴィスは入隊し、愛国心をアピール。

除隊後にはハリウッドで俳優になる道が示されていましたが、

愛する息子と離れることで、母グラディスの飲酒量が激増し、

あっけなく亡くなってしまいます。

母亡きあと、

パーカーはさらに家族同様になり、父は彼の繰り人形となっていきます。

 

兵役中にパーカーにも予測できなかった事態が。

それはドイツで知り合った10歳以上年下の少女プリシラと恋に落ちたことです。

エルヴィスとプリシラは、除隊後、結婚して娘も生まれました。

 

 

エルヴィスは何本かの映画には出演しますが、パッとせず。

 

「次はファミリー向けエンターテナーの道だ!」

パーカーは、ミシンや編み機のシンガーをスポンサーにして

「クリスマス特番」を企画します。

エルビスに赤い雪だるまのセーターを着せ、

クリスマスソングを歌わせようとするのですが、

エルヴィス本人は乗り気ではありません。

番組ディレクターのスティーブ・ビンダーたちと示し合わせて

エルヴィス本来の音楽ショーに仕上げ、

観客は喜びますが、パーカーの面目はまるつぶれ。

 

エルヴィス人気は復活するも、パーカーは巨額の経費を理由に

世界ツアーを拒否、ラスベガスに開業したインターナショナルホテルで

ワンマンライブの契約を結びます。

新規オープンの客引きの「目玉」としてエルヴィスを出演させるために

経費はすべて「ホテル持ち」の好条件に、エルヴィスも出演を承諾します。

 

このころからエルヴィスは健康上の問題をかかえるようになり

過剰なスケジュールをこなすために薬物漬けになっていきます。

それを嫌って妻子も出ていき、苛立ったエルヴィスは

ステージ上からパーカーを非難してクビを宣告します。

 

パーカーはエルヴィスの父に、今までエルヴィスを売り出すために

立て替えていた金額を今すぐに返済しろといい、850万ドルの請求書が届き

しかたなくクビはなかったことに。

 

そして1977年8月、

わずか42歳のエルヴィスは心臓発作で帰らぬ人となりました。

 

エルヴィスの死後、パーカーの巨額の金銭搾取が明るみに出ました。

                     (あらすじ ここまで)

 

 

エルヴィス・プレスリーの生涯はだれもが知るところなので

最後まで一気に書いてしまいました。

 

これ、2年近く前の映画なんですが、劇場鑑賞することなく、

配信もスルーしていました。

オースティン・バトラーの「デューン2」の怪演がすごいので

急に見たくなったもので・・・幸い、amazonプライムにまだありました。

 

ドーナツの食べ過ぎ(?)でデブになったあとのプレスリーは

私もリアルタイムで記憶にあります。

「ラブミーテンダー」とか「好きにならずにいられない」とかのバラードは

一応レパートリーでもあります(笑)

 

エルヴィスを巡る「都市伝説」的なものはいろいろありますが、

本作はそれよりも、彼に執着して骨の髄までしゃぶりつくした

悪しき敏腕マネージャー「パーカー大佐」を中心にすえたドラマのように思いました。

 

トム・ハンクスは、だいたい「アメリカの良心」みたいな役が多いから

よくこんな役を引き受けたと思うのですが、

特殊メイクでもう誰だかわからない感じでした。

 

 

とにかく、下種野郎の悪徳マネージャー。ここまでとは思いませんでした。

 

 

① 親を大事に思うエルヴィスに親孝行のチャンスともちかけ、

両親を経営者にすることで安心させるも、

所詮、会社経営には全く素人の両親がパーカーの悪事を見破ることはできず

やりたい放題に。

「エルヴィスの歌や踊りは神様からの贈り物」

と、一貫して息子ファーストの母が死んだあとは、さらにノーチェックで放置されます。

 

② ファンから手の届く存在でいるために、恋人とはさよならさせる。

 

③ 人気者になると関連グッズを乱発して儲ける。

「エルヴィスは嫌い」と書いたバッチも販売して

アンチからも儲けようという徹底ぶり。

 

④ 歌手が限界だと判断すると、即、路線変更

(だた、エルヴィスの演技力には期待してなかったようで、

目の前の収益目当てで、質の低い映画を量産して失敗)

結婚後の「ファミリー路線」も結果的に失敗。

 

⑤ 「政治や世相には無関心を貫け」と強要するも

これにはエルヴィスは強く反発します。

 

⑥ 海外公演をしない

健康や経費問題を理由に、海外へはライブの衛星放送のみ。

これはパーカーが市民権のないオランダ人でパスポートがなかったから。

 

⑦ インターナショナルホテルでのワンマンショー契約も

パーカーがカジノで負けた分の支払いに充てるため。

 

 

②③④⑤あたりは日本の「アイドル売り出し作戦」でも常とう手段ですが、

70年も前にやってるのはすごいですよね。

 

 

 

若い頃のエルヴィスは、動きは完コピでしたが、

特殊メイクでそっくりにしたりはしなくて、

歌もオースティンが自分で歌ってましたね。

 

 

スタンドカラーにもみあげの中年期も、そこまで太らせてなかったような。

 

 

私がぎりぎりリアルに知っているエルヴィスは

不健康に太った体に派手なラインストーンのジャンプスーツを着て

汗をだらだらかきながら、脂肪で狭窄した喉から声を絞り出している姿で、

子ども心にもなんとも残念だった記憶があります。

でもお客たちは熱狂してるんですけどね。

 

彼の偉大さは、その後少しずつ知ることになりましたが、

醜悪で不健全で愚かしい最初のイメージが強すぎて、

だから映画もスルーしてしまったのかも。

「悪いヤツに利用される」のは自己責任でもありますけど

今回ちょっと申し訳なかった気になりました。

 

リストにはいれませんでしたが、

12日から元妻の映画「プリシラ」が始まるので、観に行こうかな?