映画「アウトフィット(ある仕立て屋の長い夜)」2022年Netflix配信 ★★★★☆

(英語:字幕翻訳 不明)

 

 

1956年 シカゴ。

 

「L.BURLING BESPOKE」の看板の紳士服店を切り盛りするのは

イギリス人のレオナルド・バーリング(マーク・ライランス)。

「布を38のパーツに分け、228の工程を経てスーツができる・・」

といったナレーションに載せて、レオナルドの日々の手仕事が映し出されます。

 

職人は彼ひとりで、あとは娘くらいの年頃の受付のメイブルがいるだけ。

メイブルはスノードーム集めが趣味で、手先は器用とは言えず・・・

 

レオナルドがロンドンからハサミひとつでここにやってきたとき、

最初に訪れた客は

ここを縄張りにしているアイルランド系ギャングのボス、ロイ・ボイルでした。

彼はレオナルドの仕事を気に入って、以来、一番の得意客。

そのために、彼の手下たちがこの店を違法なものや情報の受け渡しに使って、

警察やほかのギャングの目を欺いていました。

なかでも、

ロイの息子のリッチー・ボイルと、相棒のフランシスはよく店に来ていて

リッチーのほうがメイブルと「できてる」のは公然の秘密でした。

 

ある日、腹から血を流したリッチーをフランシスが連れてきます。

敵対するギャングに追われているので病院にもいけず、もちろん警察にも。

弾は貫通しており、ひどい出血です。

「針と糸があるだろう」

フランシスに銃でおどされ、レオナルドは傷口の縫合をするはめになります。

 

上部組織の「アウトフィット」からは

ラット(密通者)の存在を仄めかされており、

今回襲われたのもそれが原因とふたりは考えています。

FBIが仕掛けた盗聴テープのコピーを手にいれたものの

再生装置がないので、今は確かめることができません。

一刻も早くラットの正体を知りたいフランシスは

怪我の処置が一段落すると、リッチーをのこして

再生装置をさがしに行きます。

 

一方、出血がおさまって少し元気になったリッチーは

レオナルドに感謝します。

 

「敵に情報を売ってFBIに協力したのは私です」

「実は私がラットです」

というレオナルドに

「うっかり騙されるところだったよ」と大笑い。

「笑いは百薬の長です」とレオナルド。

 

そこへフランシスが帰ってきて、

「再生装置のある店が見つかったので、これからテープを持っていく」といい、

「もうすぐ父がくるから、いっしょに聞けばいい」という

リッチーと言い合いになり、さらにテープがバッグのなかから消えており

疑心暗鬼になったふたりは銃で撃ち合います。

先に発砲したのはリッチーでしたが、フランシスの弾が当たってリッチーが倒れ

さらにとどめを刺したところで、父ロイ・ボイルの車が到着し・・・・

               (あらすじ とりあえずここまで)

 

 

OUTFITって、「衣装」という意味と、

アルカポネ時代に実在したマフィア組織をかけているんですね。

 

「キングスマン」とか、紳士服テーラーは映画の舞台になること多いです。

ただ、レオナルドはちょっとしつこいくらい

私はテーラー(仕立て屋)ではなくてカッター(裁断師)です」って言ってましたが。

 

 

冒頭は採寸から裁断、仕立て、仕上げ、と

正確で丁寧な仕事の紹介からはじまり、

なんか、この映画を思い出してしまいました。

 

大事なのは「客を観察して、人となりを読み取ること」

野望をもってるのか、人ごみに紛れたがっているのか、

聞き役に徹しながら、情報を読み取ることが重要、といいます。

 

「無関係の服職人が犯罪にまきこまれる」という形ではあるものの、

職業柄、出入りする人間の性格を完全に把握しているので

すべての瞬間でレオナルドは最適解をだすことができるんですね。

 

フランシスとリッチーはいつもいっしょに行動してはいますが、

正確も資質も大きく違っていることも、レオナルドにはお見通し。

 

フランシスは以前、身を挺してボスを庇って6発も撃たれたことがあり、

そのために、血縁でもなく、アイルランド系でもないのに

ボスから可愛がられているのが、リッチーには我慢なりません。

一方、ギャングとしての資質はフランシスの方がはるかに上なのに

リッチーはボスの息子というだけで№2だということを

フランシスは不満に思っています。

 

そんな二人に対してレオナルドは

リッチーの前では、「私がラットです」とかまをかけ、

フランシスの前では、「犯罪にまきこまれた哀れな老人」で通します。

 

つづきです(ネタバレ

 

リッチーの死体をトランクに隠し、

父ロイには、「リッチーはテープをもってあわてて出かけた」ことにします。

 

 

ロンドンのサヴィルローで修業し、やっと出した店が火事で

妻と娘を失ったこと、

シカゴにやってきたときにもっていたのは妻からのこのハサミ1本だった・・・

という話をすると、

ロイ・ボイルは、

「俺の道具はこの銃。これで何人もの人を殺し、人生をきりひらいてきた」

ロイはレオナルドを信頼しており、銃に触るのも許しています。

「あなたは指を鳴らすだけで、私を殺すことなどたやすいはず・・」

といいながらも、常に冷静で「引用が得意」なレオナルドを

かなり気に入っている様子です。

 

撃たれた息子の命をレオナルドが救ったこともロイは知っており

しばらくはなごやかな時間が流れるのですが、

ハンガーにかかったリッチーのコートが見つかって、一転あやしまれることに。

「12月にコートなしで息子が出かけるか?」

 

「リッチーは(付き合ってる)近所のメイブルの家に行ったのでは?」

と今度はメイブルに目を向けさせるのがフランシスの作戦。

ロイが別室でメイブルを拷問にかけようとしますが、

そこへ店の電話が鳴り、レオナルドが出ます。

 

「電話はリッチーさまからでした。」

「この場所にいるから迎えに来て欲しいと」

と、メモを渡すレオナルド。

 

父と手下は店を出ていきますが、

リッチーの死体は部屋のなかにあるわけで

どう考えてもウソの情報とわかっているフランシスは、店に残ります。

 

 

銃を持っているのはフランシスですが、ここで形勢逆転。

①「あの電話が嘘だとわかって息子の死体がみつかれば

我々3人は殺される」

②「ここでボスたちの居場所を、敵対する「ラフォンテーヌ」に流せば

ボスは彼らに始末されて、あなたは組の№1になれる」

 

ラットが実はメイブルで、

それを陰で支えていたのがレオナルドだということもわかるのですが

フランシスは考えた挙句②を選び、メイブルがフランス語で電話をかけます。

また、テープをかくしたのもレオナルドで、

それもラ・フォンテーヌは買い取ると言ってきています。

 

やがて、ボイルたちを殺したラ・フォンテーヌのボスと手下が

大金をいれたトランクを持って店を訪れます。

フランシスはクローゼットに隠れてレオナルドに応対させますが、

レオナルドは機転を利かせてフランシスを見つけさせ、手下が射殺。

テープを受け取って帰っていきます。

 

大金の入ったトランクはメイブルに渡し、レオナルドは後始末を。

というのも、渡したテープは自作の偽物で、ただの洋裁の解説テープでした。

ラ・フォンテーヌがそれに気づいて戻ってくるまでに完了しなければなりません。

 

店に油をまき、火をつけると、

なんと死んだはずのフランシスが起き上がり、襲撃されそうになりますが

裁ちばさみで応戦。レオナルドの両腕には派手な刺青が・・・

実は裁断師になるまえ、レオナルドはギャングだったのでした。(あらすじここまで)

 

 

 

日本では劇場公開されなかった少し前の映画なんですが、

最近、ネットフリックから、「あなたの好みにぴったり」と

頻繁にオススメされているもので、気になって鑑賞。

 

Netflixのイチオシ作品はほんとにハズレがないですね。

本作も、ワンシチュエーションの舞台劇のようなギャングの話で、

まさに私の好み!

NetflixのAIは完璧ということなんでしょうか?

それにひきかえ、アメブロの「あなたにオススメのブログ」「あなたと似ているブログ」は

全く判断基準が理解できないんですけど、こんなこと思ってるのは私だけ??

 

すべてを仕立て屋の店内だけで完結させる、という、無理を承知の脚本ながら

とてもよくできていたと思います。

「実はレオナルドがアウトフィットの幹部」

「アウトフィットだけに・・・(笑)」

なんてくだらないオチだったらどうしようかと思いましたが、ホント、上手!

 

連絡方法は固定電話だけ

カセットテープがなかなか再生できない

なんて時代をしらない世代には通じづらいかもしれませんけどね。

 

マーク・ライランスの落ち着き払ったポーカーフェイスは

助演賞を総なめした「ブリッジ・オブ・スパイ」を彷彿とさせます。

彼は70代くらいと思っていたら、まだ60代前半なんですね(トム・ハンクスより若いとは!)

 

ディラン・オブライエンとジョニー・フリン。

若手のふたりも多分舞台経験ないだろうに、上手かったですね。

ジョニーなんて、本職はミュージシャンと聞いて驚きました。

 

Netflix配信作品、アカデミー賞の前後はチェックしていますが、

平均したら月に1本くらいしか観ていないのは

せっかくのサブスクなのに、もったいないですね。