映画 「DOGMAN ドッグマン」 2024(令和6)年3月8日公開 ★★★★☆

(英語: 字幕翻訳 横井和子)

 

 

ニュージャージー州 ニューアーク。

殺人現場周辺の検問所。

トラックを運転する、ピンクのドレスの男に声をかけると

身分証は携帯しておらず、後ろの荷台にはたくさんの犬を乗せていました。

 

 

エヴリン・デッカーは午前2時の電話で起こされます。

拘置所で緊急事態と聞き、眠っている幼い息子を母に託して

夜中の警察に到着すると、女装した被疑者の扱いに困っているようでした。

 

「疲れているだけでどこも悪くないから医者はいらない」という男に

「私は精神科医よ。あなたをどっちに入れるか困ってるみたい」

すると男は

「私が装うのは(LGBTではなく)自分を忘れて別人になるため」

そして、ダグラスと名乗り、生い立ちを語りはじめます。

 

(回想シーンは青字で書きます)

 

闘犬を生業としていたダグラスの父にとって、

犬はただの商売道具でした。

犬たちを飢えさせて闘争心を煽ろうと

極限まで食べ物をやることを禁じていたのですが、

かわいそうに思って自分の分の肉を犬にあげようとしていたのを

兄のリッチーにチクられて、ダグラスは犬たちの檻に入れられてしまいます。

 

母はやさしい人でしたが、父になにも言い返すことができず。

そして、妊娠しているのがわかると、(生まれてくるその子の人生のために)

家を出てしまいます。

 

母がくれた保存食を食べ、檻から手の届くところにあった雑誌で字を覚え、

そして一緒に閉じ込められている犬たちがダグラスの心の友でした。

 

ある日、檻のなかで子犬が産まれると、父は撃ち殺そうと銃を構えます。

止めようとしたダグラスの指に散弾銃の弾があたり、小指がふっとび、

そのとき脊髄も損傷してしまいます。

 

ダグラスは小指を袋にいれ、犬のミッキーにパトカーの写真を見せて

「ここに持っていけ」と命令すると、

ミッキーは銃で空いた穴から外に出ていきます。

言いつけ通り、2人の警官を連れてきて、父と兄は逮捕されます。 

父は直後に自殺、模範囚だった兄は刑期短縮で、すでに出所しています。  

 

退院後、施設に入ったダグラスは、内気で友人はできませんでしたが、

高校の演劇クラスの講師のサルマに恋をします。

シェイクスピアを暗唱し、メイクをして美しい衣装に身を包むと

車いすのみじめな自分を忘れることができました。

 

 

学校を去り、舞台女優として成功したサルマ。

公演後の楽屋に行くと、変わらない笑顔でダグラスを歓迎してくれました。

ダグラスの作った美しいスクラップブックにも感激。

ところが、サルマにはすでに夫がいて、子どもを妊娠していました。

 

失恋したダグラスを慰めてくれるのも犬たちでした。

                     (あらすじ とりあえずここまで)

 

 

リュック・ベッソン監督の独自の世界観はファンが多いですが、

今回私はそれとは全然関係なく、

ただただケイレブ・ランドリー・ジョーンズ目当て!

「ケイレブ愛」を語りだすと長くなるので止めますが、

一目ぼれしたのは、8年前の「バッドガイズ!」

ほんとにくだらない刑事コメディなんですが、

まだ日本ではそれほど知られていなかったケイレブの悪役がすばらしくて

以来、この長い名前を追いかけて今に至ります。

 

 
主演を務めた「ニトラム」もはまり役だったけれど、
今回も彼じゃなかったら成立しなかったかも。
 
ストーリーはかなり無理無理なところばかりで
カタログのパトカーの写真見せて
「この車を見つけてこれを届けろ」と犬に頼むとか、
書いてても正直辛いんですが・・・(笑)
後半もこんなのが続きます。
ネタバレです。
 
大人になったダグラスは、犬の保護の仕事をしていましたが、
予算削減で施設の閉鎖が告げられます。
ひそかに街はずれの廃屋に移って犬と暮らし始めるも、
収入減を絶たれてしまったので、職探しをすることに。
あるキャバレーで舞台稽古を観たとき、そのきらびやかさに見とれていると
声をかけてもらえ、金曜日の夜に、ピアフの歌を歌う仕事を得ます。
 
 
女装して舞台でパフォーマンスすることで
ダグラスは現実の辛さから逃げることができました。
 
犬たちとの生活を支えるにはまだまだ足りないので
犬たちに金持ちの家の金品を盗むようにさせますが
ある時、防犯カメラをチェックしていた保険会社の男に
気づかれてしまいます。
アジトまで来た彼をもてなすふりをして
犬たちにかみ殺させてしまいます。
 
また、地元のギャングのボスを傷めつけたことの仕返しに
大勢の手下たちの襲撃を受けることになり、
結果、ギャングの死体の山を築くことになり、
冒頭のシーンにつながります。    
 
 
すべて青文字の回想になっていますが、
これはダグラスがエヴリンに語った内容で、
実際はちょくちょく現在モードになるので
エヴリンの置かれている立場なんかもわかるようになっています。
 
エヴリンは父の暴力に苦しめられ、離婚した夫もDV野郎でした。
大学を出て精神医となりシングルマザーとして9カ月の息子を育て
接見禁止命令が出た今も、その姿におびえています。
 
「なんで私には何でも話をしてくれたの?」と聞くと
「同じ痛みを持った人だから」
 
 
エヴリンが去った次の日、どこからともなく集まってきた犬たちが
警察署に侵入し、看守を襲って鍵を奪い、
ダグラスが拘束されている部屋のドアの下から鍵を投げ入れます。
 
 
脱出に成功したダグラスは教会の前で車いすから立ち上がり
自分の脚で何歩か歩くと、そのまま倒れ、帰らぬ人となりました。
彼のまわりには街中の犬たちが集まってきました。 (おしまい)
 
 
 
「ドッグマン」って聞いたことあると思っていたら
6年前のイタリア映画でした。これ有名ですよね。
 
本作もワンちゃんたち大活躍だったけど、ベルリン映画祭にはパルムドッグないですね。
犬好きの人たちは、ワンちゃんが酷い目にあってないか心配でしょうけど、
ダグラス少年は虐待されますが、犬たちはとりあえず大丈夫。
 
ダグラスの言葉を100%理解し、命令を守り、
お行儀もよく、優しく、ばれないように盗みもできるし、
必要とあらば悪党をかみ殺すこともできます。
劇画的というより、むしろアニメを見てるくらいのレベルです。
 
ところで、「DOG」を逆に読むと「GOD」ですね。
冒頭で
「不幸な者のいるところ、あまねく神は犬を遣わす」
のようなラマルティーヌの詩が引用されたり、
DOG⇔ GODのアナグラムも横断幕で使われていたように思います。
 
ダグラスを犬の檻に閉じ込められた時に、たしか兄が
「NAME OF GOD (神の御名)」みたいな幕を掲げるんですが、
NAME OF GOD 」の中央部分が何かに隠れて、裏から見ると
DOG  MAN」と読めるんですね。
 
 
やっぱり犬は特別な存在だったのか~と思ってしまいます。
 
 
 
それにしてもこの人の魅力は測り知れなくて
LGBTの設定ではないんですけど、ジェンダーレスの魅力さく裂!
ギャングと闘うときは、なぜかマリリン・モンローのコスプレなんですが
女性のコスプレより色気がありました(画像が見つからず残念)
 
ケイレブを満喫できれば、(個人的には)
まあ後はどうでもいいやと思って観たんですけど
ひとつ残念なことが。
 
それは、キャバレーでピアフの「群衆」を歌うときの音と映像がちぐはぐだったこと。
歌う姿勢も発声も巻き舌も、見た目は全く問題ないのに、
わざとですか?っていうくらいの「口パク」丸出しは如何なものか。
一曲フルで歌う、けっこうな感動ポイントなのに、この仕打ちはなに?といいたい!
(ドラァグクイーンは口パクでいいんでしょうけど、ダグラスは歌で採用されたんだし
ケイレブはミュージシャンだから下手なことないですよね。これは聞かせてほしかったです)
 
それ以外は、(ツッコミどころだらけの展開ではありましたが)
キモ美しい不思議な映像の魅力に振り回され続ける、
それはそれで楽しい映画体験ではありました。