映画 「ダム・マネー ウォール街を狙え!」 2024(令和6)年2月2日公開 ★★★★☆

原作本「The Antisocial Network」ベン・メズリック (邦訳なし)

(英語: 字幕翻訳 橋本裕充)

 

 

2021年1月25日 マイアミ。

 

ゲイブ・プロトキン(セス・ローゲン)はメルビン・キャピタルのトップで資産4億ドル。

金持ちの資産を運用するヘッジ・ファンドからの利益で優雅に暮らしています。

電話の相手のスティーブ・コーエンや

シタデルのケン・グリフィンも同じ業界の富豪たちです。

 

 

左がケン、右がゲイブ

 

ゲイブは、ある弱小会社の株が急騰していることが気にかかっています。

その会社が倒産するのを前提にこの株の空売りをして儲けを見込んでいたのに

急騰して、ショートスクイズの恐れが・・・・

 

そもそもの発端となったのはこの男。

 

YouTubeとRedditのウォール・ストリート・ベッツ(WSB)で

ふたつのアカウントをもつキース・ギルは

妻子もちで、昼間は会社員という一般ピープルです。

 

 

その6か月前の2020年の夏。コロナ禍のボストン。

 

キースが注目しているのは、実店舗でゲームを販売する「ゲームストップ」という会社。

コロナ蔓延による「ステイホーム」で、みんながオンラインゲームに移行したため、

店舗での売れ行きは激減。株価も当然ながら下がっていますが、

(好きな企業なのに)385㌦というこの株価は不当じゃないか!」

「僕は全財産5万ドルをゲームストップ株につぎ込む!」と宣言し、

自分のもっている保有株式を公開しながら熱弁をふるう彼に

次第に賛同するフォロワーが増えてきました。

 

                             

コロナ患者への対応におわれる

看護師のジェニー

 

 

テキサス大のハーモニーとリリー

 

 

ゲームストップの店舗で働くマルコス・・

 

 

 

バッドとテネフが創業した株取引アプリの「ロビンフッド」が

スマホがあれば、手数料なしで株取引を可能にしたことも追い風となり

ゲームストップ株を買う小口の株主がふえたことで

株価はじりじりと上昇していました。    (あらすじ とりあえずここまで)

 

 

         

映画をみていれば、なんとなく流れはわかりますが、

私は株の用語を正しく使えないので、絶望的に間違った表現をしているかもしれません。

 

「ゲームストップ騒動」については ちゃんとしたサイトを参考にしてください。

 

 

難しいことはわからなくても、とりあえず「ショート(空売り)」がわかればなんとかなるかも。

下落しそうな株に目をつけて、信用取引で先に大量売りして、

株価が充分に下がった時点で買い戻せば、その差が懐に入る、というもの。

目論見通り下がれば儲かるけど、逆に上がったら大損するわけです。

 

続きです(ネタバレ

 

 

ミーム化したゲームストップ株のことは様々なメディアで取り上げられ

赤はちまきに猫シャツ男のキース・ギルは一躍時の人に!

これだけ急騰しても「売り抜け」しようとしない彼に

小口投資家たちも追随し、株価は下がることなく、

空売りして損失をだしていたゲイブたちは買い戻しせざるを得なくなり

株価はさらに上昇するのでした。

 

「ロビンフッド」の取引量が急増して、

30億ドルの預託金を納めなければならない事態に陥ったため

その資金のないテネフはケンに相談。

シタデルから金を借り、新規の株取引を中止せざるをえなくなります。

さらにWSBのサイトも閉鎖され、騒ぎになります。

 

事態を重くみた政府は公聴会を開き、関係者からの聞き取りをします。

コロナ禍で公聴会もオンライン。

キースは(ネコのTシャツではなく)スーツを着て、緊張した面持ちで

いつも配信している自宅のカメラの前に座ります。

                       (あらすじ ここまで)

 

 

 

タイトルや宣材写真からは、ちょっとイカれたユーチューバーが若者を焚きつけて

金持ちを懲らしめてやったぜ!みたいな印象を受けるし、

「ゲームストップ騒動」を面白おかしく取り上げるとしたらそうなると思いますが、

本作はすごくまじめな描き方。

株のことがわからない人にも優しいです。

 

ラストに本人映像が流れるのですが、

ゲイブとキースだけはずいぶん雰囲気違いました。

 

左が本物のゲイブ・プトロキン

 

そして、左が本物のキース・ギル

 

ポール・ダノとセス・ローゲンの出る映画に外れないので(「フェイブルマンズ」とか)

キャスティングに文句いうつもりはないし、

ちょっとも寄せてないところがむしろ潔い!

 

 

ミーム株の騒動というメインの話以上に

2020~21年にかけての、コロナでロックダウンしていた時期の

リアルな空気感もていねいに描いていました。

本当にあのころは誰もが不安でいっぱいでした。

キースのお姉さんのサラはコロナ感染で亡くなっていたのですね。

人との接触を避け、オンラインで会話し、マスクも必携でした。

 

マスクといえば、ゲームストップの店舗で

「マスクをきちんとしろ」とか「中古品を売ったほうが店の利益になる」

とかいちいち口うるさい上司がいたんですが、

マスクがちょっとずれたときに

えっ!デイン・デハーンに似てる!

まさかね・・・と思っていました。

 

この後ろ向きの人です。

キャストとしての記載はなかったんですが、

どうも、ホントにデイン・デハーンだったみたいです。

 

 

10年前は今のティモシー・シャラメかそれ以上の扱いだったのに

どこに行ってたの?!

昔はディカプリオに似てるといわれてたけど、

まだまだオーラ健在で主役でイケると思うけどな~

 

 

 

それから、シャイリーン・ウッドリーも、キースの妻と言う地味な役。

キースは株価が高騰して富豪並みの含み益を得てもなかなか売らないんですが

それを受け入れる妻も立派。

夫の仕事にも配信にも何も口出ししないんですが、

最後のオンライン公聴会は、日ごろ配信に慣れているキースにとっては得意分野で、

見事やり終えた夫に、ふだんは何もいわない妻が

「良かったと思うわ」って言ったとき、ちょっと泣きそうになりました。

 

最後の帳尻は悲喜こもごもですが、

危ない橋を渡ってまで資産運用はすべきじゃない、というのが個人的意見。

実はお恥ずかしながら、私もちょっとだけ株もってます(笑)

一応、毎日株価はスマホでチェックはするものの、

増やす気も売る気もさらさらなく、

わずかな株主優待に喜んでいるくらいです。

健全でしょ?