第4回は千代田区です!

 

千代田区の郷土資料館的施設は

かつては四番町図書館の地下に「歴史民俗資料館」がありましたが、

2011(平成23)年に日比谷図書文化館に機能移転しました。

 

 

常設展示に加え、随時開催の特別展示のクオリティ高いミュージアム。

2階の日比谷図書館(パープルゾーン)では郷土資料も閲覧できます。

(図書館だから、貸出しできるものが多いのもありがたいです)

ただ、刊行物などの販売を積極的にやっている雰囲気はなく・・・

 

実は前回「首都東京の復興ものがたり」の特別展の図録を買おうとしたら

「奥のカフェで買ってください」といわれ、

トレイをもった人の列に並んで、根性で買ってきました(笑)

 

 
特別展の図録でさえすぐに買えないのは
お金の収受を避けているのかな?

 

全国チェーンの「PRONTO」ですが

ここはブックカフェ仕様です。

 

 

区の有償刊行物は区役所で買えるようですが、

リストには1冊も欲しいものがなし↓

 
 
この時点で「行き止まり」と思ったのですが、
実は図書館資料で検索すると、とても気になるタイトルがありました。

 

 

「沿革図集」とは書いてあるんですけど、図書館や郷土資料館はノータッチのようで

もしかして「商店街のPR誌とか?」と思ったんですが

全部が「貸出禁止」となっているのが逆に気になる~!

 

で、司町の神田まちかど図書館に行ったときに手に取ったら

かなりの大型本で、PR的要素は全くなく、むしろ中央区に近い本でした。

 

 

amazonでは23,360円だし、ちょっと私の財力では買うことができず、

困ったな~と思っていたら、よその区の図書館で貸出できました。

 

 

第1章 江戸・東京の中の神田
寛永年神田全図
江戸之下町復元図
明治9年東京全図
明治40年東京市神田区全図
帝都復興区画整理図
昭和31年東京地形図
土地利用現況図

第2章 神田思い出地図

第3章 ニコライ堂より見た明治東京


 

第1章はいわゆる「沿革図集」で、

最後の土地利用現況図は昭和56年と平成3年なので

江戸時代から平成まで、バランスよく様々な地図を配置しています。

ちなみに縮小しすぎて文字が見えなくなることもなく

綴じ目に地図がかかるような愚かなこともしていません。

 

第3章も、ニコライ堂から明治22年の東京中心部を360℃撮影した

驚くほど鮮明な写真なんですが、

今回は地図限定なので、別の機会に書くことにして・・・

 

注目したいのが第2章の「思い出地図」!

 

これは、昭和10年ごろの神保町1丁目の靖国通り以南のエリアの火保図。

薄墨の火保図の文字に重ねて、店名や個人名を補完しています。

 

 

神保町の昔のことを調べているときに、どこかで目にしたことのある地図なんですが

この「神田まちなみ沿革図」が元ネタだということを初めて知りました。

90年も前の地図なのに、今の住宅地図なみの詳しさです。

 

 

これは旧神田区全図ですが、ここから23の地域が掲載されており、

上の神保町1丁目(南部)は赤い枠のエリアとなります。

 

火保図の価値に最初に気づいたのは1981年ごろの千代田図書館といわれているので

これを使うのはともかく、上書きのデータはどこで収集したのか?

 

なんと地区の長老たちを集めて座談会形式で情報収集したそうです。

(なので会合を開けなかった地区の地図は作られていません)

 

 

奥付を見ると、役所も図書館も無関係で、工務店が発行所になっているのが

不思議なかんじですが、

元宮大工の地域活動を母体に1986年に発足した

「神田学会」というNPO団体がつくった本のようです。

 

「出版物」のところにこの本も掲載されていましたが

ざんねんながら「在庫なし」

 

 

それにしても、素人集団が作ろうとしても絶対に作れそうにない本なので

さらにもうちょっと調べたら、とても有名な研究者の名前が出てきました。

 

 

 

鈴木理生(まさお)さんは大学卒業後、東京都職員となり、千代田図書館に1986年まで勤務。

在職中から本は執筆されていましたが、60歳の退職後からは

江戸時代や東京の地名や川などに関する本を数多く書かれています。

「中央区沿革図集」を監修されたことは知っていたのですが、

この本にもかかわられていたのですね。クオリティ高くて当然です!

(よく見たら監修のことばを書かれていました)

 

残念ながら2015年に88歳で亡くなられましたが、

お写真のある記事をみつけたので、貼っておきます。

 

 

都市整図社の火災保険特殊地図(火保図)の価値を見出したのは

「1980年代のはじめの千代田図書館」と言われていますが

そのときに在籍していた鈴木さんの功績だという人が多いです。

公務員だから個人名はださないんでしょうけど、これは間違いなさそうですね。

 

在職中にはかなわなかった沿革図集の編纂を、退職後に中央区で実現し

さらに地元の神田地区のNPO団体に力を貸して実現しました。

もっと長生きしてほかの区でもやってほしかったものです。

 

年が明けたら、ほかの区の状況も調べてみようと思います。(←しつこい!)