映画 「怪物」 2023(令和5)年6月2日公開 ★★★☆☆

ノベライズ 「怪物」 佐野 晶(脚本 坂元裕二 監督 是枝裕和 ) 宝島社文庫

 

 

第一章 母サオリの視点
 
駅前のビル火災。消防車の音。野次馬の声。
 
サオリは息子のミナトとベランダから見物し
「がんばれ~!」と叫んで息子にたしなめられます。
 
サオリは夫と死別し、クリーニング店で働くシングルマザーです。
その翌日、
「火事になったビル、3階にガールズバーがあったでしょ?
あそこからホリ先生出てきたんだって!」
と、クリーニング店にやってきたママ友。
ホリ先生というのは、着任したばかりのミナトのクラス担任です。
 
スニーカーが片方しかない・・・
水筒に泥や石がいれられている・・・
耳から血が出ている・・
服が絵の具で激しく汚れている・・・
そして、「死んだらどうなる」とか
「ブタの脳みそをいれられた人間は人間か?」とか
おかしなことを言いだしたりするミナトを見て
学校でいじめにあっているのでは?
と思うようになります。
 
ある日、仕事から帰っても、ミナトの姿がなく
目撃情報から廃線跡のトンネルへ車を走らせると、ミナトの自転車が!
 
ともかくミナトを確保し、
なるべく刺激しないように冗談を言いながら運転していると、
突然ミナトが走っている車の助手席のドアを開けて降りてしまったのです。
息子は死のうとしている??
 
幸いCTにも異常はなく、大きなけがもなかったものの、
ミナトを問い詰めると、
担任のホリ先生にやられたと。
 
翌日、サオリはミナトを休ませ、学校にでかけ、校長室で
担任教師からの暴言と暴力を訴えます。
その次の日も「調査結果」を聞きに訪れますが、
校長はのらりくらり。
教頭や学年主任も頭を下げるばかり。
そして当のホリは、暴力も暴言もはっきりとは認めず
反省の気持ちも見えず、飴玉をなめてるのに気づいて
サオリはキレます。
 
別の日には、
「こんな先生クビにしろ!」というサオリにたいして
「あなたの息子さん、星川ヨリ、って子をいじめてますよ」
といわれたものだから、
「あんた、あのビルのキャバクラいってたんでしょ?
火をつけたのあんたじゃないの?」
 
サオリはヨリの家に行き、直接ミナトの無実をたしかめ、
教師たちの前で証言してもらいます。
さらにヨリが
「ホリ先生はいつも麦野(ミナト)君にひどいことをしてる」
といったので、学校側も態度を変え
緊急保護者会でホリに謝罪させ、担任をおろし、
これは新聞にも載るような社会問題となります。
 
ただ、サオリは、ミナトが部屋のなかで暴れたり
チャッカマンを隠し持っていることも心配でした。
 
台風の夜、ミナトが家から姿を消します。  (あらすじ とりあえずここまで)
 
 
 
公開3週目となっても、(カンヌ効果か)
まだまだスクリーン数が減らないため、ちょっとのんびりしてしまいました。
ノベライズも読んだうえで、細部まで味わおうと、満を持して臨んだのですが・・・
 
★の数を見ていただけばわかるように、
そこまで、とは思えませんでした。残念だな~
 
上にかいた「あらすじ」は、
ミナトの母、サオリの視点から描いていますが、
ほぼ同時期に起きたことについて、
第2章では担任教師のホリの視点で、(一部校長もふくまれます)
第3章は、ミナトの立場から描かれており、
「羅生門形式」といわれています。
でも、流れる時間の速さがそれぞれちがうから
あえて「ダンケルク方式」といわせていただきます。
 
最初に「駅前ビルの火災」、最後に「台風の日」という
普遍的なトピックをいれて時間軸を際立たせたり、
伏線の貼り方もワンパターンでなく、
賞レースには必須な「あの要素」も投入した
ほんとに「技巧派」な脚本で、カンヌ受賞も納得。
 
子役もふくめ、役者の演技もいうことないし、
なんで素直に感動できなかった??
と、不思議なんだけど、どうしても好きにはなれず、
ブログを書くのも気後れして、更新が遅れております。
 
本来なら、
このあと②ホリ先生 ③ミナト の立場からのあらすじを書くところですが
もう日付がかわりそうなので、今日のところは、軽く愚痴るのみにさせていただきます。
 
 
 
公開前に発売されたノベライズで「予習」した時点では
さして気にならなかったことが、
映像を目の前にすると、けっこうひっかかってしまい、
これ、もし現役の小学校の先生が見たら、どう思うのかな?
そればかりが気になりました。
 
私自身は2週間の教育実習しかしたことないですが、
ごく近い身内に小学校教諭がいるのと、
自分も非正規だけれど
20年くらい、いくつかの小学校に関わっていたので、
実写だとなぜか(小説では感じなかった)違和感がふつふつと・・・・
 
 
 
一番ダメだと思ったのが、①ではサオリの
「担任も学校も信用できず、なんとか愛する息子を救いたい」
「父親もいないし、ミナトを守れるのは私だけ」
という母心を強調して、観客を共感させなきゃちゃいけないのに、
①の段階で、すでに目がイっちゃってる「やばいヤツ」で、
先生たちに全力で警戒されていることがダダモレです。
 
安藤サクラの演技はパーフェクトなのに、撮り方おかしいよ!
 
3日目くらいには完全にモンペになっていたけど、
ほんとはそこまでいっても、学校からわが子を守るために
「お母さん、がんばれ!」って思わせないといけなかったんじゃないの?
 
教師も人間だから、
売り言葉に買い言葉でヒートアップするのもわかるけど、
「あなたの息子さんもイジメやってますよ」
と、担任が保護者にいうのも信じられません。
 
クラス内のイジメは担任の責任であり、学校の責任であり、
上司に報告もしてないことを
直接加害者の親にいうとか、ありえないし・・・・
 
ミナトが教室であばれているのを止めようとしたときに
ホリ先生が不可抗力でミナトの鼻を殴ってしまったり
ヨリとケンカして
ミナトが机の角に耳をぶつけて出血したら、
責任の所在はともかく、
100%、家に連絡がいくはずです。
 
いや、これ、想像で言ってるんじゃなくて、
「イジメ防止」や「教師の体罰」には
今の小学校、過剰なくらい神経つかっているんですよ。
ちゃんと現場に取材したのか?といいたい。
 
 
そして、罪をホリだけに押し付けて、
学校は「知らなかった」ですむわけもないのに・・・
いち教諭の罪は管理職の責任で、学校の責任ですよ。
 
さらに、「その他大勢」のクラスメートたちも、
みんなそろって知らんぷりなのも
気味が悪いレベル。
5年生くらいだと、女子のほうが弁もたつし、
ひとりやふたり、正義をふりかざす女子(正義漢?)とかいそうだけどね。
そもそも最初からヨリをいじめてた男子たちのことを
誰ひとりとして、チクらないとか、どうなんだろう??
 
 
他の人のレビューをみたら、ラストの解釈で割れているようですが、
映画では明確に「決め打ち」してるように思えましたが・・・
ちなみにノベライズでは
どちらにもとれる書き方をしていました。
(私はノベライズの方が好き。というか、

順番ではノベライズが後だから、さらに背景を丁寧に説明したり

いろいろ修正をかけてきてるようで、これもプロの仕事だと思います)

 
この劇伴が坂本龍一の遺作となった・・・
と聞いていたんですが、実はほとんど記憶にありません。
印象にのこらないくらい溶け込んでいるのが
優れた映画音楽なのかもしれないけど。
 
 
音楽教師だった校長が、ミナトにトロンボーンを吹かせ
自分もホルンを吹くシーン。
メロディになっていないから、まるで怪物のうめき声のような音が
1章から3章までのシーンで、校庭にひびきわたります。
これが実質の「主題歌」のような気がしました。
これはできの良いノベライズでも、さすがに表現できませんね。
 
(2章、3章のあらすじは、気が向けば、後日追加させていただくかもしれません)