映画 「ビー・ジーズ 栄光の軌跡」 2022(令和4)年11月25日公開 ★★★★★

(英語; 字幕翻訳 大渕誉哉、 字幕監修 吉田美奈子)

 

 

2019年 マイアミのビーチにたたずむひとりの男の後ろ姿。

愛する弟たちを次々に失いひとりのこされた、ビー・ジーズの元リーダー、

長男のバリー・ギブの姿でした。

 

イギリスのマン島に生まれた彼らは、1958年、家族でオーストラリアに移住します。

バリーが11歳、双子の弟ロビンとモーリスが8歳の時でした。

幼いころから3人でステージにたっていた兄弟は音楽で生きていこうと決意、

1967年イギリスへ。

 

マネージャー役の父親はなかなかの野心家で、

ビートルズのマネージメントをしていたBエプスタインに直接売り込もうとしますが、

Rスティグウッドの目に留まり、5年契約。

「ニューヨーク炭鉱の悲劇」でメジャーデビューします。

「ラブ・サムバディ」・・・「ワールド」・・・ワーズ」・・・・

そして「マサチューセッツ」・・・

 

右端がRスティグウッド

 

彼らは「ポップグループ」ですが、ゴスペルやフォークの響きもあり、

3人のハーモニーは完璧。心に響く声は世界中を席捲します。

 

このころから、パートを譲ろうとしないロビンとバリーの間に亀裂が起き、

ミュージシャンにつきものの、酒とドラッグの誘惑も。

そして1969年にはロビンの脱退騒動も起きますが

翌年には再結成。

コンスタントに曲を出し、ツアーもこなしていましたが

アルバムの売り上げは急激に落ち込んできます。

 

Eクラプトンの「環境を変えてマイアミで録音したら?」のアドバイスを受け入れ

バラード路線からR&Bへシフトチェンジ。

元々高音域はカバーできていましたが、

ファルセット唱法を取り入れて、金管楽器なみの高音のフレーズを楽々カバー。

オーケストラに頼らず自前のバンドで完成できるよう

バックバンドの充実も図ります。

1975年、タイヤのガチャガチャ音から浮かんだ「ジャイヴ・トーキン」が全米一位。

「サタディナイト・フィーヴァー」の大ヒットで、「愛はきらめきのなかに」「ステイン・アライヴ」

「恋のナイトフィーヴァー」などが、続々と大ヒットします。

 

 

大ヒットはしたものの、「ディスコ音楽」「フィーヴァー」などのことばが

下劣で低俗な音楽やそれを好む人たちを蔑む意味でつかわれるようになり

各地で「反ディスコ運動」が起こります。

ビー・ジーズの音楽もR&Bのジャンルの音楽などとともにそのとばっちりを受け、

ラジオ局で曲がかからないような事態になります。

 

ラジオ局を締め出されても、作曲はできる、と

バーブラ・ストライサンドに書いた「ギルティ」「ウーマン・イン・ラブ」が大ヒット。

ディオンヌ・ワーウィック、ダイアナ・ロス、ケニー・ロジャース、セリーヌ・ディオンなど

世界的シンガーに曲を提供します。

 

3兄弟には年の離れた末弟アンディがいるのですが

兄たちを追ってメジャーデビューし、すでにヒットもだしており

1988年に正式にビー・ジーズに加入しますが、薬物が原因で

その直後にわずか30歳で早逝してしまいます。

2003年にはモーリスが、2012年にはロビンが・・・・

 

遺されたバリーお兄ちゃんはつぶやきます。

「成功も名声も手にしたが、弟たちが戻ってきてくれるのなら何もいらない・・・」

                         (あらすじ ここまで)

 

 

書きたいことは山のようにあるので、

あえて短く書きます。

 

音楽ドキュメンタリー映画の王道をいく、綿密につくりこまれた作品。

 

ビー・ジーズの名前すら知らない人にとっては

(50年もの間さまざまなジャンルの曲を書いて歌い続けた偉大な兄弟バンドの)

愛する弟たちを見送ったお兄ちゃんの回想記だけでも泣けるし、

ナイトフィーバー以降からのファンの人、それ以前からの人

あるいは「ビー・ジーズオタク」を自称する人でも知らないような

レアなエピソードが満載で、111分のなかにテンポよく、

よくもこれだけ入れ込んだものだと、感心してしまいます。

 

 

 

トップ画像の写真、かわいいですよね。

かっこいいバリーお兄ちゃんと、3歳年下の二卵性の似てない双子のロビンとモーリス。

(お兄ちゃんはこのあと、ひとりだけリーゼントにしちゃうんですよね~)

 

 

私が自分ではじめて買ったレコードは、

ビー・ジーズの「ジョーク」と「若葉のころ」でした。

思い出話をはじめると長くなるので、やめますが・・・・

ほんとに大好きでした。

 

映画のなかには30曲以上のビー・ジーズのレパートリーがかかりましたが、

エンドロールの1曲目「バタフライ」以外は全部知っていました。

むしろ「ジョーク」もそうだったし、日本で大ヒットした映画「小さな恋のメロディ」の

「メロディフェア」「若葉のころ」がスルーされたのは意外でしたが

それほどヒット曲は枚挙にいとまがないほどでした。

 

本当に「音楽ドキュメンタリーはこうあれ!」みたいな作品ですよ。

 

思い返すと泣きそうになるので、今日はここまでにしておきます。