池袋の老舗喫茶店。
ここ数年の間に店じまいしてしまったお店も多いですが
現役最長は創業大正9年の「タカセ」で間違いない・・・
と思っていたんですが、
ちょっと気になる看板を見つけてしまいました。
「創業 大正弐年」とか書いてありますけど・・・!
ここは、池袋東口を出てすぐのところにある「服部珈琲舎」。
だって、ほんとに大正弐年からかわらずに商売しているのなら
「東京の変わらない景色」に載せなくちゃ~ (笑)
お店の存在は知っていたけれど、少なくとも私の学生時代には絶対になかったし!
平成弐年の間違いじゃないの?
と思いましたが、そんなでたらめを書くわけないですよね。
利用者のレビューをみると、
「長い歴史のある老舗喫茶店です」
と、書いている人が多いのですが、
「タカセ」みたいに
「おばあちゃんに連れてきてもらった」とか
「若い頃からよくきていて、懐かしい」とかいう実体験は皆無。
レンガ造りっぽい外観もテーマパーク内のカフェみたいで
ほぼ歴史は感じられません。
なんかちょっと怪しいよね~(笑)
どうも、お店のメニューにそう書いてあるから、
みなさん素直にそのままレビューしてたようです。
100年前は「あさのや」という料理屋だったんですって。
納得!
といいたいところですが、なんかこの「竹やぶエピソードだけ」の雑な文章が
ちょっとひっかかって、確認することにしました。
これは1969(昭和44)年の東口なんですが、
「タカセ」はもうあって、「服部珈琲舎」のところには
「フランス菓子ゴーフレット」って書いてありますけど・・・・??
写真から18年後の 1987(昭和62)年の住宅地図も「ゴーフレット」になってるし、
いわれてみたら、なんとなく記憶がよみがえってきました。
念のため、さらに昔の写真を探してみると
これは丸ノ内線が開通したばかりの1954(昭和29)年の写真で
前回説明したように、タカセは「森永ベルトライン」でしたが、
ゴーフレットのところの看板が読み取れないけど、
なんとなく、ひらがなで「あさのや」と書いてあるような・・・・?
そしたら、別の角度からの写真が偶然見つかって
しっかり「あさのや」と読み取れます。(青の矢印)
で、今度はさらに古い住宅地図を探しました。
一番古いものが、1952~58(昭和27~33)年の火災保険図で
これにも、たしかに「浅野屋」と書いてあります。
浅野屋は最初は料理屋だった・・・とお店のメニューには書いてあったけど、
この地図の(キ)というのは喫茶の(キ)のようなので、
この時点ですでに喫茶店だったみたいですね。
ともかく、100年前のことまで保証できないけど、
浅野屋 → ゴーフレット → 服部珈琲舎
と名前を変えつつ営業してきたということはわかりました。
だけど、1987年にはまだ「ゴーフレット」だったわけだから
服部・・になって、長くみつもっても30年でしょ?
それで、レトロっぽい外装にして
100年の歴史!とか言いきっちゃうの、すごいですよね。
「ゴーフレット」は下が洋菓子店で上が喫茶店の「タカセ」みたいな店で、
コンセプトぶれぶれ。
わたしでも違和感あるくらいだから
もっと年配の人には今の謳い文句は逆効果のような・・・・
(タカセだって今の名前になってからは60年だけど、創業時から同じ場所で同じコンセプトで商売やってきて、
みんなの記憶に強く残ってるから、これは問題ないと思います)
もう閉店してしまったけれど、このエリアにあった
「小山珈琲」や「耕路」といった良心的で昔からやってる喫茶店(黄色の印)は
グルメエッセイなどには必ず登場してきました。
↑
1962(昭和37)年東京都全住宅案内地図帳 (住宅協会)より
↑
↑1970(昭和45)年 全住宅案内地図帳 (公共施設地図)
↑
1987(昭和62)年 航空住宅地図(公共施設地図)
それなら、「服部珈琲舎」のことを誰か書いていないかと、散々探したら
なんと、泉麻人さんが書いていました!
泉さんがここを訪れたのは10年前ですが、
「創業大正弐年って、ほんとに?」
と私と同じことが気になって、お店の人に聞いてくれたそうです。
そうしたら
① 浅野屋はビックカメラ本店のあたりにあった
② 戦後ここにきて、最初は「ゴーフレット」だった
③ 「服部珈琲舎」になったのは16年前
大正弐年創業や伽哩(ライスカリー)を謳い文句にしたのもそれ以降だから
つまり
「意図的な後付けレトロなのだ」
と書いておられました。なるほど。
宣伝文句なんて、明らかな嘘でなければ、何を言ったっていいんですけどね。
泉さんのおかげで、聞きにいかずにすみました。
だって(コーヒーはともかく)ドリンクは一律、コーラまで800円なんだって。
高いよ!
追記
1935(昭和10)年の地図で、
浅の家(浅野屋?)というお店が
たしかにビックカメラのあたりにあったことは確認!
大正弐年までさかのぼるのはけっこう難しいですが
いずれにせよ、
同じお店としてカウントするのは厚かましい気がしますけど・・・
こちらに書きました
↓