映画 「グレイマン」 2022(令和4)年7月22日より配信 ★★★☆☆

原作本 「暗殺者グレイマン」 マーク・グリーニー ハヤカワ文庫

(英語; 字幕翻訳 天笠利枝子)

 

 

コート・ジェントリー(ライアン・ゴズリング)は殺人罪で服役中に

CIAのドナルド・フィッツロイからCIAの暗殺部隊「シエラ」にリクルートされて出所。

 

CIAの陰の実働部隊として働くようになり

6番目のメンバーである彼は「シエラ・シックス」と呼ばれていました。

 

18年後、バンコックで、ダイニングカーというターゲットを殺す指令が出たのですが、

無関係の子どもを巻き添えにしそうで、なかなか引き金を引けないシックス。

CIAエージェントのダニ・ミランダ(アナ・デ・アルマス)のサポートもあり、

なんとか追い詰め致命傷を与えます。

死ぬ前にダイニングカーはメダルのようなものをシックスに渡し

自分は(シックスと同じ立場の)シエラ・フォーだが、

本部に都合の悪いことを知りすぎて狙われたこと。

悪の根源はCIA本部長のデニー・カーマイケルで

このチップの中に彼を破滅させる証拠があること。

「奴を破滅させろ」

と言って、彼は絶命しました。

 

次は自分が狙われると悟ったシックスは、唯一信頼できるフィッツロイに相談。

プラハ在住の元CIAのマーガレット・ケイヒルにチップを郵送し、

フィッツロイは逃亡用のヘリを手配してくれます。

 

一方、死んだ男がチップを持っておらず、シックスが怪しいと思ったカーマイケルは

残忍すぎてCIAをクビになったロイド・ハンセン(クリス・エヴァンス)に

シックスの殺しを依頼します。

補佐官のスザンヌは彼の無謀なやり口に釘をさしますが

法令順守、人道性とかには配慮なしにつっぱしるカーマイケル。

シックスをよく知るフィッツロイを誘拐して、姪のクレアを人質にして脅し、

ヘリでシックスの逃亡を手伝っている部下に、シックス殺害命令を出させてしまうのです。

                          (あらすじ とりあえずここまで)

 

 

制作費に270億円かけたというNetflixでも最大規模の作品。

キャストは豪華だし、アクションもド迫力、ロケ地もあちこち世界中で撮影。

金に糸目をつけてない感じですが、ストーリーはよくあるやつで、めちゃショボい(笑)

 

スーサイドスクワッドみたいに囚人を使って汚い仕事をさせ、

国家機密とかならともかく、

たかがCIA幹部の悪事の証拠映像を回収するために

世界中の殺し屋が街なかでドンバチやるとかねえ~

原作だと、たしかナイジェリアの大統領暗殺の報復とかでしたよね。

 

 

ともかく、原作とあまりに違い過ぎてて、間違えたかと思いました。

(私は図書館で借りただけなので文句いう筋合いじゃないですが・・・)

「映画でスルーしてしまったところを原作で補完する」というレベルでもなく、

そもそも、「グレイマン」というのはコート・ジェントリーがCIA辞めたあとの呼び名なので、

シエラ・シックス時代はまだ彼は「グレイマン」じゃないと思うんですけどね。

 

ほかの登場人物も、同じ設定ででてくるのは「フィッツロイ」くらい。

(ただ、彼は民間警備会社の経営者)

「クレア」は姪じゃなくて孫娘だし、

「ロイド」も出てくるけど、どこかの企業の貧相な弁護士でした。

でもこいつはなかなか残忍な性格で、そこは一致しています。

 

でもラストちかくで、いきなり原作と全く同じシーンを登場させたり

一応意識はしてるんだな、と思った次第。

 

一応最後まで、さっくりあらすじらしきものを書いておきます。(ネタバレ

 

命からがらヘリを脱出したシックスは、

ウィーンへ向かい、偽造パスポートをつくってもらいますが、

シックスには多額の懸賞金がかけられていたため

罠にはまって、地下へ監禁されてしまいます。

爆弾を自作し、ミランダにも助けられ、

チップを送ったケイヒルのいるプラハへ向かいますが

そこもロイドに知られてしまい、暗殺者たちに囲まれます。

彼らをまくことはできるも警察に逮捕、手錠をかけられますが、

プラハ市内で銃撃戦、さらに最強のタミル人暗殺者に追われ・・・

 

ペースメーカーの電波から、クレアはクロアチアで人質になっていることがわかり

ミランダと救出に向かいます。

最後はロイドと1対1で勝負となりますが、

そこへやってきたスザンヌがロイドを射殺。

すべての罪はロイドにおしつけられ、チップの情報も消去されました。  (おしまい)

 

 

潤沢な製作費による爆破や銃撃やカーチェイスの迫力は、

「劇場で見るべき作品」なんでしょうが、ストーリーがつっこみどころ多すぎで

私には配信で充分でした。

 

ひとつ感心したのは、女性の扱い方でしょうか。

「007」の昔のシリーズでは、女性エージェントは「ハニートラップ要員」でしたが、

アナ・デ・アルマス演じるミランダは、あんなに美人なのに、色恋とは無縁で、有能。

シックスのことは信頼するも、彼とは違って正規の工作員だから

今までの自分のキャリアに傷がつくことが一番イヤなわけです。

アナは「ブレードランナー2049」でもライアン・ゴズリングの相棒的存在でしたが、

今回はずいぶんタイプが違いますね。

 

カーマイケルの補佐のスザンヌも、カーマイケルやロイドの無茶苦茶なやりように

いちいち文句いってくれる「まともな存在」だったんですが、

結局彼女も、自分のキャリアが第一だったみたい。

 

「女性ならではの役回り」というのは

時代でどんどん変化していくものなんですね。

 

もともと本作の映画化では、

主役のシックスを女性にする案もあったそうで、それはいくら何でも・・・と思いましたが、

プラハの元CIAのケイヒルも、

もともと原作では男性でシックスの師匠だったのを黒人女性に変えています。

 

スザンヌもアジア系の女性だし、人種をいろいろ混ぜなきゃいけないのも

今の映画の「お約束」なんでしょうか。

 

 

ほぼ、アクションシーンのてんこもりなんですが、

こういうクレアとのシーンなんかは、けっこう原作を踏襲していたように思えました。

 

 

クレア役の美少女は、「ワンス・アポン・ア・ハリウッド」のあの子でしたね。