先日、ゼンリンの住宅地図・ネット地図について書かれたこの本を読みました。

 

 

1日1000人のゼンリンの調査スタッフが

日本中の家の表札を歩いて調べてまわっていること、

東日本大震災時の被災者との交流とか

胸アツエピソードが満載で、面白く、

伊能忠敬の時代とちがって、

今は航空測量で道や構造物の形はすぐ図面になるけれど、

魂を吹き込むのは、アナログな人間の作業によるものだなあと実感。

 

現在、特定の狭い地域の住宅地図を発行している会社はいくつかありますが

全国を網羅しているのはゼンリンのみ。ほぼ市場を独占しています。

 

ただ、この本をつくるのに、ゼンリン一社にしか取材していないようで、

巻末の年表もゼンリンのことだけ。(別にゼンリンをディスるつもりはないのですが)

まるでゼンリンが住宅地図というものをどこよりも先に考案して

時代に即して改良を重ねてきたかののような物言いなのは、

ちょっと違うんじゃない?と思いました。

 

もともと善隣(ゼンリン)出版社は、観光地別府の観光案内地図の会社で

それが住宅案内地図もつくるようになって、東京をはじめ全国に拡大。

 

このころ、同じように

地元から大都市部へ進出した出版社はほかにもあったのですが、

ゼンリンは1986年には地図情報をデータ化して販売をはじめ

1990年にはカーナビのソフトの開発にも着手。 早い!

 

ただ、80年代はPCはそれほど普及しているわけではなく

まだまだ紙の本の需要のほうが高くて、

実際、本の発行部数のピークは1996年だといいます。

 

その後、時代はデジタル社会へ・・・・

他社がどんどん廃業していくなか

携帯電話への配信サービスとかGoogleに地図情報を提供したり

ほぼゼンリンの独壇場となっていくわけで、

ビジネス的には大成功!というわけですね。

 

それは非常にけっこうなことなんですが、

どうもゼンリンは紙ベース時代からターゲットは企業のようで、

とにかく価格が高い!

 

昨日、昭和の地図に万単位の値段がついているヤフオク画像を乗せましたが、

多少のプレミアがついているものの、

もともとの価格も、30年以上前に1冊8000円以上してたから

一般家庭が何冊も買えるお値段ではありません。

 

 

その後、中小企業や家庭向け(?)に廉価版の「スター☆マップ」というのを発行しました。

これはA4サイズで、付表を除いて純粋に地図だけにした結果、

7000円前後まで価格を抑えることに成功!・・・

でも、今はもう、「スター☆マップ」はなくなってしまいました。

 

ちなみに今、最新版を定価で買おうとすると、A4判でも、1冊 2万円以上するんですよ!

 

 

 

B4判だと当然これよりも高くなるから、ますます個人では無理だけど
配達業や不動産業や、必要な企業は買ってくれるんだろうなあ。

廉価版はなくなったけれど、企業の便宜を図って

バインダー式とか電子版とかも登場しています。
 

 

 

 

いっぽう、こちらは「一家に一冊」のセイコー社。

30年前の価格表なので、単純に比較はできないけれど、

文庫版は1冊1000円前後

B5判でも4000円程度。

ゼンリンを1冊買う金額で、(文庫だと)東京23区がそろってしまう安さです。

 

安いからといっても情報量はほぼかわりないし、個人的にはむしろ使いやすい。

(前に「地図に発行年を明記して欲しい!」と書きましたが)

ここのは、改訂のたびに表紙を全部チェンジするという徹底ぶりです。

 

①1987年ごろまで

 

②1988~1992年ごろ

 

③1993年~1999年ごろ

 

④1997~2002年ごろ

 

⑤2002年以降

 

少しずつ改訂していくから、発行年は目安ですが、なんとまあ良心的なこと!

 

でもこの良心的な出版社は、経営不振のため、2016年に破産、廃業しています。

「街しるべ」のゲオも、大阪の吉田地図も姿を消し、時代はゼンリン一強時代に。

 

会社としては、

時代を先読みしてビジネスに成功したのだから、結構なことですが、

むしろ問題は、私たちが地図を読まなくなったことのほうですよね。

スマホに頼りっきりでは、そのうち本当に地図が「読めなく」なるかも。

 

車で出かける時も、昔は家に何冊か道路地図があって

初めてのドライブには入念に下調べしていましたが、

今はナビまかせ。

画面がくるくる動いて教えてくれるから、

方角とかもまるで考えずにいわれるままに運転するだけでは

ナビなしでは何もできなくなってしまいそうで怖いです。

便利は便利だけれど、方向音痴製造機ともいえますね。

 

 

 

 

ちなみに、昔の住宅地図を検索できるサービスがあるのか、

ゼンリンのサイトを調べてみました。

 

 

「やるじゃん!ゼンリン」

と思って、このサービスを調べてみたら・・・・

 

 

 

宅地建物取引業免許が必要で、

月払い22,000円、 年払い264,000円の費用がかかるそうです。

 

失礼しました~~びっくり

 

「過去地図機能で昔に思いを馳せる」・・・・とか、書かないでいただきたいですね。