映画 「スパークス・ブラザーズ」 2022(令和4)年4月8日公開 ★★★★★

(英語; 字幕翻訳 石田泰子、 字幕監修 岸野雄一)

 

 

カリフォルニア生まれの兄ロンと弟ラッセルのメイル兄弟。

画家でプレスリーファンの父の影響で

小さいうちから音楽やハリウッド映画を楽しんでいました。

 

ロンは最初ピアノのレッスンを嫌がっていたものの、

みんなの前で弾いて以来すっかり病みつきに。

UCLAでバンド活動をはじめ、1966年にはオリジナル曲も。

仲間をさそって「ハーフ・ネルソン」を結成します。

1971年にはスパークスの名前でアルバムレビューするも、あまり売れず。

(一部には認められてテレビ出演もしていたのに、生活はフードスタンプに頼っていました)

 

アメリカに見切りをつけて1973年にイギリス進出すると、

アルバム「キモノ・マイ・ハウス」の「ディス・タウン」が全英2位になります。

 

 

マーク・ボランみたいなポップなロック・スターがかっこよく歌い

その横でどう考えてもヒトラーにしかみえないちょび髭のオッサンが

無表情でキーボードを弾いている、しかもふたりは兄弟らしい・・・・

という謎めいた姿で有名になりますが、

コミックバンド扱いされてあんまり音楽性は評価されず。

(ちなみにスパークスはふたりだけでなく、ギターやベースやドラムのバンドメンバーもいますが

女性もふくめ、何十人もいれかわってるので、この件は省略します)

 

 

 

ジャック・タチ監督の映画に参加することが決まって喜ぶも

タチの急死で立ち消えになってしまい、結局ふたりはニューヨークで再起をかけます。

                            (あらすじ とりあえずここまで)

 

 

実は前日に映画「アネット」を観て、すっかり虜になってしまい、

この作品の原案・音楽を担当し、実際に出演もしている「スパークス」のことが知りたくて、

シネクイントで本作を観てきました。

「アネット」のまえにこちらの感想から書くことにします。

 

 

スパークスのこのふたり、キャリア50年以上のロンとラッセルのメイル兄弟ですが、

いったい 何歳なの??

まずは素朴な疑問ですが・・・・

なんと、2時間以上のドキュメンタリー映画の中に、その説明なし!

 

ただ、父が亡くなった時、ロンが11歳で、ラッセルが8歳

そして

ビートルズがやってきた時、ロンが19歳でラッセルが16歳

と言っていたので「3歳違い」なのはわかりました。

 

家にかえって調べたら、兄のロンは1945年8月12日生まれで

弟のラッセルは1953年10月5日生まれとありましたが、

これじゃ8歳違いになってしまう!

(小さい時の写真を見る限り、そこまで年齢差ない感じですぞ!)

wikiではロンが1948年生まれ、

ラッセルが1953年(または1948年生まれ)と書いてあって・・・・

なんじゃこれ!

両親が同じ兄弟が、同じ年の8月と10月に生まれるわけないじゃない!

 

まあ、一番あり得るのが1945年と1948年なんでしょうかね。

ビートルズの北米ツアーも1964年にあったから、このへんが妥当かも。

(私は年齢問題が片付かないと次に進めないので、一応そういうことで・・・・)

 

そうすると今年ふたりは77歳と74歳になる?! えっ!

 

 

写真だけ見ると、そんな究極の若作り、ということもないんですが、

なんというか、いい意味で大御所感がないというか、

今もいろんな新しいことにチャレンジしたくて目を輝かせているように思えます。

 

私は音楽のことは全く疎いし、レコードもCDも持ってないんですけど、

長いこと生きていると、どこかで見聞きしていることが多いんですが、

このふたりについては全くかすりもしてなかったのが残念。

 

 
私の語彙力ではとても説明できないので、動画を貼っておきますね。↑
ロックオペラっぽいですが、クイーンなんかよりも早い時期にこんな曲つくってたんですね。
(この時期に出会いたかったな~)
ただ、彼らの場合、クセが強すぎて、普通に歌ってればいいのに、
アイドル然のハンサムなボーカルと、目がちょっといっちゃってるちょび髭おじさんの
へんなコラボで笑わしてるとしか思えず
「兄弟」という設定も、「阿佐ヶ谷姉妹」みたいな
「ビジネス兄弟?」だと思われてしまってたかも。
 
スパークスのすごいところは、ヒットしてもしなくても、
同じことを二度とやらないんですね。
実験的というか前衛的というか
グラムロックから パンク・テクノ・クラシック風・ダンスミュージック・・・
目まぐるしくスタイルを変えていきます。
 
「世間が求めるもの、売れるものを作る」って感覚じゃないから
なかなか営業は難しそうですが、
ただ、売れなくても儲からなくても、わかる人にはわかっていて
それが証拠に、彼らの大ファンが世界中にたくさんいて、
その中の一人が本作の監督のエドガー・ライトというわけです。
 
ベック、レッチリのフリー、トッド・ラングレン、デュラン・デュラン、
といった有名人から一般ファンまで
80名もの人たちが熱く熱く「スパークス愛」を語ります。
 
一方で(私みたいな)彼らを知らない人たちのために、系譜やヒット曲や
人となりの紹介もしなくちゃいけないから、ほんとに盛りだくさん。
アニメーションも駆使して、めちゃくちゃテンポよく
盛りだくさんの情報量が2時間20分続くので、
まあ楽しいんだけど、集中力切らさずに鑑賞するのはなかなかハードです。
 
後半はあまりの情報量の多さに意識朦朧としてしまい、
あらすじの続きはあまり記憶がないのですが、
アメリカに戻ってからの90年代は不遇の時代。
(地味に堅実に生きてきたので、貯蓄を切り崩して生活していたそう)
映画製作に新境地を求めるも
ティム・バートンとの映画音楽の話も立ち消えになってしまったけれど、
ともかく、

カンヌでのレオス・カラックス監督との出会い、

そして映画「アネット」のすべての音楽を担当し、

彼らの唯一無二の音楽と才能を
全世界に発信することができたのです。
よかった!
 

 

ところで、iPad Airの一番新しいCM曲はこれです!

                 ↓

 
これ聞いてる人は、この曲がまさか50年前の曲とは思わないですよね!
 
やっと時代がやっとスパークスに追いついてきたんですね。
(でも彼らはもう次の新しいことを考えていそうです)
そういえば、
「あるミュージシャンのパクリ疑惑をかけられたことがあったのですが
実は彼は昔にスパークスの影響を受けていた」
というエピソードが彼らの地位を表していますね。
「スパークスは音楽の生態系の一部だ」ということも誰かが言っていました。
すごい!
 
本作は彼らを知ってる人にも知らない人にも、心からおススメです。
 
そして「アネット」は公開中にあと何回か観たいです。(感想はこのあと書きます)