映画「キャッシュトラック」 2021(令和3)年10月8日公開 ★★★☆☆

(英語: 字幕翻訳 平井かおり)

 

 

①『悪霊』  <被害者などからの視点>
アメリカ・ロサンゼルス
現金輸送専門の警備会社「フォーティコ・セキュリティ」
ある日、この社の現金輸送車のまえに工事車両が立ちはだかり、現金を奪われた上に
警備員2名が死亡、一般人も巻き添えになる事件が起きます。


欠員を埋めるために会社は即戦力となる警備員を募集し、

オレンジデルタ警備で警備経験のあるパトリック・ヒル(ジェイソン・ステイサム)を採用します。
体力や銃器運転などのテストはぎりぎりでしたが、

トレーナーのブレッドは彼を気に入ってHと呼びます。


ある日、デイヴと組んで現金輸送中に別の車に乗ったブレッドが人質に取られてしまい
パニックになるデイヴをしり目に、6人の強盗犯を正確無比に射殺し現金を守ったHは

社長や同僚から絶賛の的。

また別の日、ブレッドとバディを組んで走行中、またもやギャングに襲われるのですが
彼らはHの顔を見た瞬間、まるで悪霊をみたかのように全員退散するのでした


②『しらみつぶし』 <Hからの視点>
その5カ月前。
Hは帰省中の一人息子ダギーと一緒に外出しようとすると、

突如部下のマイクから電話がかかってきます。
「現金輸送車のルートを目視で確認して指示して欲しい」


実はH(ヒル)というのは偽名で、彼の正体は、ハーグレイブスというギャングのボスで

彼らはこの輸送車を襲う計画をたてていたのです。
(以下、ハーグレイブスもHで表します)


しぶしぶ承知し、ダギーを車に残し、「ブリトーを買ってくる」といって
車のルートを伝え、車に戻ろうとすると、

愛する息子は襲撃犯に銃を突き付けられ道路に腹ばいになっていました。
Hが駆け寄る前にダギーは撃たれ、Hも銃撃をうけてしまいます。

3週間後、病院で目覚めたHは、自分が瀕死の重傷だったこと、

息子のダギーは事件の巻き添えで死んでしまったことを伝えられます。

HはJBI捜査官Kと会い、息子を殺した犯人の手がかりを聞き出そうとしますが、

捜査はすすんでおらず、かわりに捜査線上のギャングのリストを渡されます。
(HはFBIの捜査対象でありながら、彼らが手をだせない悪党の処分を手伝っていたのです)

 「あんたらの20年分の仕事を2週間で終わらせる」とH。

 



ダギーは撃たれる直前に犯人の頬の傷を見ていましたが、リストに該当者はなし。
マイクにも圧をかけて、手荒なヤバい男を片っ端から連れてきて

拷問して白状させようとするも成果なし。

警備会社に共犯がいるのではないかと思ったHは、

偽名を使ってフォーティコ・セキュリティに潜入し、あやしい人物を探そうとし、
同僚の身分証明書を盗撮して身元調査を依頼します。


それを知らなかったマイクたちはたまたまHの乗る輸送車を襲ってしまったため、

彼らはHの顔をみて逃げ出したのでした。


③『野獣ども』 <犯人グループからの視点>

元軍人のジャクソンは、部下だったジャン、カルロス、ブラッドたちとこれからのことを話し合い、
年金がわりに強盗でもしようとジャン(これがダグを殺した犯人)が提案。
仲間の気に入らなかった雇用主の石油王を襲いますが、たいして収穫なく、

次は現金輸送車をターゲットにすることにします。   (あらすじ とりあえずここまで)

 

 

 

 

 

「現金輸送車襲撃事件を3つの視点で描く」と聞いていたので

「最後の決闘裁判」のような、いわゆる「羅生門方式」を想像していました。

立場がちがうと見え方がちがったり、(自分に不利なことはいわないから)言い分が違ったりとか・・・

ではなかったですね。

 

①ではなにが起きたか把握できないまま殺されてしまった警備員とか

防犯カメラの視点だったのが、

②ではそのときそばにいたHの視点

③ではそれを計画した犯人グループの視点・・・

と、少しずつ小出しに観客に示していく・・・ってだけのことでした。

 

事件のことはさておき、①でのジェイソン・ステイサムの登場のしかたは

ものすごく楽しかったです。

経験もあり、クールな殺し屋みたいな風貌で現れて

入社テストが合格ラインぎりぎりで、特に射撃がポンコツだったような。

「スナイパーにはなれないがうちの警備員には十分なレベルだ」

とか慰められてるの!(笑)

ジェイソン・ステイサムは、今回はこんな役なの?

とびっくりしていると、やっぱりそうだよね~!と言う展開。

 

私服の少々クラシックなへちま襟のカーディガンを見て

「イギリス男」とからかわれたり、なんか楽しいシーンが続きました。

 

職員のメンタルや健康状態を親身に心配してくれる

内勤トップのエディ・マーサンとか、ギャングをボコボコにしたHを絶賛する社長とか

けっこう働きやすそうな職場のような気がしましたが

Hを快く思わない職員もいて、仲間内の会話とかも注意深く聞いていたんですが

ほとんど伏線にもなっていませんでした。

 

犯人グループの正体がわかっても、納得いかないこといろいろあったんですが、

先にこの続きのあらすじをかいてしまいます。

 


<ここからは冒頭の襲撃事件が犯人目線グループの目線で描かれます>

 

リーダーのジャクソンは、愛する家族と暮らす元軍人で

誕生会に(これから強盗をしようとしている)軍隊時代の部下たちを集めて

自宅でいっしょにケーキを食べたりしています。


計画している現金輸送車強奪については

「警備会社の内部に協力者がいるから大丈夫」と自信満々のジャクソン。

 

いよいよ当日。
工事現場の作業員に化けた彼らは現金輸送車をとめて襲撃しますが
マスクの下の素顔を見られてしまったジャンが警備員2人を射殺

さらにそれを目撃したダギーにも何発も銃を打ち込み、駆け寄ったHにも発砲します。

 

「誰も殺すな」というのが約束だったので、ジャクソンは怒りますが

ジャンに反省の気持ちはなく、

「奪った金は老後の資金で、派手につかうな、食料品にしておけ」

といわれていたのに、高そうなマンションにすんだり、浪費しまくるジャン。

 

ジャン(スコット・イーストウッド)

パパはもちろんあの人です



600万ドルもの現金を奪った彼らは5か月後
また次の計画を実行に移します。

ターゲットはまたまたフォーティコ・セキュリティ。
それも1台の輸送車だけでなく、ブラックフライデーで車庫の金庫に集まった

1億5000万ドル以上の大金を丸ごと狙うというのです。






④『肝臓、肺、脾臓、心臓』


カジノから現金を回収したブレットは助手席のHに
「おれの友だちに内部情報を流したから、今日うちの会社は襲撃される」
「お前の銃からは玉が抜いてある。従わなければ殺されるぞ」
「お前は手引きをして見ないふりをしろ」と。


Hは彼らの共犯がブレッドだったことがわかり、

息子殺しをしとめるチャンスだと、これに従うことに。
ブレットの手引きで彼らの車に襲撃犯たちが乗り込み、会社の車庫に入ると、

制御室やほかの車にいた警備員たちとの激しい銃撃戦が始まります。
8分後にSWATが来るという情報を得て、

犯行グループは金庫からどんどん現金を運び出していきます。

                                         (あらすじ ここまで)

 

 


一番わからなかったのは、

冒頭の襲撃事件はHの手下たちが起こしたように思えたのに

ジャクソンたちの元軍人グループは

これとは全く関係なく事件をおこしたように思えたこと。

「強奪事件も大掛かりになると末端の実働部隊のことまで把握できない」

というような解説も読んだのですが、

事件当日は把握してなかったとしても、

マイクが調べて見当もつかないってこと、あり得ないと思います。

 

「たまたま同じ現金輸送車を2つの悪党グループが同時に狙ってた」

ということなんでしょうか?

 

それに、まんまと600万ドル盗んだ5か月後に

さらに1億5000万ドルの強奪を計画するでしょうか?

しかもおなじフォーティコ・セキュリティを相手に。

 

ジェイソン・ステイサムの映画として、いちばんイライラしたのが、

彼がやってることが、ほぼすべて「見当はずれ」なこと。

「FBIより仕事が速い」とイキってるわりには

ジャクソンたちの素人グループになかなか到達できずに、関係ない人殺してるし

フォーティコ職員も関係ない人ばかり疑ってるし、

「ブレット本人がカムアウトするまで気づかない」ってどれだけ鈍感なんだか・・・

 

結末(ネタバレ)です。 最後はやっとスカッとします。



襲撃犯のひとりを殺してその装備を奪ったHは

(フルフェイスで顔がみえないので)仲間のふりをして、襲撃犯を何人か殺しますが
結局ジャン・ジャクソン・ブレットの3人を取り逃がしてしまいます。


彼らは大金を積んだ現金輸送車で脱出し、秘密の地下トンネルでヘリの追跡をまき、

逃走用の車に乗り換えるのですが
その前にジャンはあとの2人を殺してすべての金を独り占めします。

自宅に戻ってシャワーを浴び、酒を飲むジャン。
すると部屋のどこかでスマホが鳴っています。
なんとそれは奪った金の中からでした。

「電話にでないのか?」
なんと部屋にはHがいました。

(彼が現金の袋にスマホをまぎれさせ、GPSで場所を突き止めていたのです。)


Hはダギーの検視報告書の封筒を投げて、ジャンにそれを声に出して読ませます
「銃弾●による肝臓貫通、 銃弾▲による脾臓の破裂、 銃弾◆による心臓の損傷・・・」


そしてそれにあわせて、肝臓・・・肺・・・脾臓・・・心臓・・」の順にジャンの体を打ち抜き、

息子の復讐を果たします。
そしてマンションの入口でエージェントKと交代して車に乗り込むのでした。 (おしまい)

 

 

 

とにかく人を何人殺そうが、

愛しい息子を殺した奴を殺すまで、Hの復讐の旅は続くのです。

 

丸腰で無抵抗のダギーを殺した犯人への復讐ですから、

同じように風呂上がりの無防備なところに押し入って、

ダギーが撃たれたと同じ場所を正確に撃ち抜く、とか

ちょっと爽快ではありました。

 

ただそこに至るまでが殺しすぎ!

結局フォーティコの警備員、ほぼ全滅ですよね。

「ブレットは襲撃犯の仲間だ」ということを伝えられていたら

死なずに済んだ人も多かったのに・・・・

これは完全にHのやるべき責務でした。

死んだ息子の復讐より、生きてる仲間の命を優先すべきでした。

 

まあね

「すべき」とかいうのは、この手の映画にはジャマなんですけどね。

 

へっぽこなジェイソン・ステイサムと、プロフェッショナルなジェイソン・ステイサムが

いっしょに楽しめると思ったら安いもんですが、

やっぱり Hの手下たちとジェイソンたちのグループの関係がわかないと

どうしても納得がいきません。

 

配信で2回みたのですがわからないので、

好評価をつけている人の感想を読みに行ってきま~す!