映画「パーフェクト・ケア」 2021(令和3)年12月3日公開 ★★★★★

(英語: 字幕翻訳 牧野琴子)

 





判断力の衰えた高齢者をサポートする法定後見人マーラ・グレイソン(ロザムンド・パイク)は

裁判所からの信頼も厚いが、その正体は合法的に高齢者の資産を奪い取る悪徳後見人だった。

彼女は新たな獲物として、資産家のジェニファー(ダイアン・ウィースト)に目を付ける。

身寄りのない彼女なら難なくだませるはずだったが、

その背後にはロシアンマフィア(ピーター・ディンクレイジ)の影が見え隠れしていた。(シネマ・トゥデイ)

 

 

 

「善人なんて世の中にいない。」

「フェアプレイはでっちあげ」

「まじめに働けば幸せになれるなんて嘘」・・・

 



 

ワンレンに真っ赤なワンピースのアンドロイドみたいな美女マーラ・グレイソン。

颯爽と歩く彼女のまえに小柄な髭面の男(フェルドストロム)がいちゃもんをつけます。


「(マーラ・グレイソンは)母を勝手に施設に入れ、私を面会禁止にした」
「うちの家族を食い物にしてる」
すごい剣幕でつかみかかり、唾を吐きかけられても、マーラは平然としています。

マーラは
「裁判所から判断能力が充分でないと判断された高齢者の利益を守るために

家族にかわって完璧なケアを行う法定後見人」なのです。

判事からも絶対的に信頼をおかれている彼女ですが、実は、

判断能力を判定する医師も、介護施設の責任者もグルだから

「合法的に(家族と疎遠だったり天涯孤独の)年寄の資産を搾り取る悪徳後見人」

というのが笑顔の裏に隠された正体でした。

 

表向き法律に違反してはいないから、マーラに怖いものはなく

さっきのフェルドストロムも裁判ではマーラの一方的勝訴で、

彼の接近禁止命令は継続されることになります。

 

 

ある日、上客の老人が思ったより早く亡くなったことを

施設長のサムから知らされます。

もっと稼がせてもらうはずだったのに・・・・

 

でも最高級の部屋が空いたから、次の客をいれなければ!

マーラはビジネスパートナーのカレン医師に電話すると

施設の株とひきかえに、とっておきの情報を流してもらいます。

 

ジェニファー・ピーターソンという天涯孤独の高齢女性。

1949年生まれ、借金も結婚も犯罪的もなし。

40年働いて、持ち株売って、悠々自適のひとり暮らしの彼女は

最近ちょっと足腰と認知機能が衰えてきた・・・・

いや、衰えてなくてもそういう診断書を書いてあげる。

 

ということで、即、「要介護認定→法廷後見人にマーラ・グレイソン」

の裁判所命令がおり、書類をもってマーラはジェニファーの元へ。

 

「私があなたの法定後見人のマーラ・グレイソンです。はじめまして」

突然のことに驚くジェニファーに、マーラはぺらぺらとまくしたてます。

 

「要介護認定がおりて自立困難になったら司法が介入し、

緊急時で本人不在で司法判断がおりることもあります」

「裁判所命令に従わないと面倒ですよ」

「事実誤認の再審請求も可能だけれど、一時的にホームに移る必要があります」

そして背後にパトカーと警官をちらつかせます。

 

 

 

有無をいわせずにジェニファーを施設の高額な個室に入れると

自宅を漁って売れそうなものを探し、家は売却するために改装作業に入ります。

マーラは引き出しの裏に貼られていた貸金庫のカギを発見。

銀行で中身をチェックすると、保険の掛けられていない大量のダイヤモンドを見つけます。

 

 


この隠し財産は(盗品かもしれないけど)資産のリスト外で、ちょろまかせるかも?

 

マーラがほくそえんでいるころ、ジェニファーの自宅に一台のタクシーが停まります。

「お迎えにきました」

「この家はもう空き家ですよ」

マーラのビジネスパートナー(かつレズビアンの恋人)のフランが告げると

彼(アレクシー)は帰って、ボスに報告します。

 



ボス(ローマン)はこのちっちゃい人↑ なんとロシアンマフィアの大物です。

「私は母を大事にしてる。なんとしても探し出して連れてこい!」

 

なんと、天涯孤独のはずのジェニファーには息子がいました。

しかもロシアンマフィアだったのです!

 

 


「あなた、まずいわよ!あの子が来るわ!」
今までされるままだったジェニファーのこの悪いお顔!!


                            (あらすじ とりあえず ここまで)


          


もう前半はもう気持ちよいくらいサクサクと話がすすみます。

若い人にはコメディかもしれないけれど、

私くらいの年齢になると、これはホラー!

まあ一応、今のところ、夫も、そんなに関係の悪くない娘たちもいるし、

そもそも搾取されるような財産もないので、心配はないですけど(笑)

 

 

子どもたちが自分たちの相続財産が減らないようにするために

親を酷い環境に置いたり、財産をちょろまかしたり・・・・

そういうのには第三者の目が必要ですが

マーラみたいな「悪徳業者」がはびこる環境、ありえますよね。

子どものいない高齢者も増えているし・・・・・

 

 

あらすじ つづきネタバレです。ラストまで書いてあるので、これからご覧になる方はご遠慮ください)


マーラのオフィスにローマンから雇われた弁護士ディーンがやってきました。

ディーンはすぐににジェニファーを解放するよう求め

アタッシェケースの中の15万ドルの現金を提示しますが、

500万ドルじゃないと・・・といわれ、

すごすご引き下がって帰ってきて、ローマンに怒られます。


フランがもう一度ジェニファーの身元を調べると、

彼女はすでに亡くなっており、この老女はIDを盗んだなりすましだったのです。

さらにカレン医師が殺害されたというニュースを知って、マーラは命の危険を感じます。

 

そしてある日、マーラは何者かに拉致され、

気が付くと拘束され、目の前にはローマンが・・・

 

「母とダイヤモンドを返せ!」

この状況でも強気で1000万ドルを要求するマーラにローマンはキレて

車ごと湖に落とされてしまいます。

 

水中で意識を取り戻したマーラはなんとか生還。

家ごと焼かれそうになっていたフランも助け出すと

記憶を総動員してローマンの居所を突き止め、眠らせて誘拐。

殺すと見せかけて身分の分かるものを車ごと焼いて山道に放置。

 

ローマンは通りすがりの人に助けられますが、病院で意識を取り戻すと

彼はローマンを名乗る身元不明者の扱いで、

その法定後見人はマーラ・グレイソンでした。

ローマンは仕方なく言い値の1000万ドルで母親とダイヤモンドを取り戻しました。

さらにマーラに共同ビジネスを提案。

これが大成功して、マーラは一躍有名人になります。

 

ところが、颯爽と歩くマーラに冒頭の男(フェルドストロム)が再び立ちはだかります。

「お前のせいで、面会もできないまま、母はひとりぼっちで死んだ」

そして発砲し、警備に取り押さえられますが

マーラは大量出血し、フランの腕のなかで息絶えるのでした。   (あらすじ おしまい)

 

 

 

 

最後のオチは、普通だったら楽々予想できるんですけど

あんまり話が目まぐるしくて ちょっとうっかり忘れてました(恥)

 

話しも面白いけど、キャストがすばらしい!

いちばん印象に残っているのは、ダイアン・ウィーストのあの悪いお顔、なんですが・・・

 

ロザムンド・パイクは「ゴーン・ガール」とは違うタイプの悪女キャラ全開で

もうゴールデングローブ賞主演女優賞は当然です。

彼女はオックスフォード卒の才媛で、語学も楽器も堪能なのに

若いころは美貌ばかりに注目されて、ちょっと頭の弱い美女の役ばっかり。

本作では単なる悪女だけじゃなくて、いろんな新生面が観られたし

ロザムンド・パイクを満喫できる作品でしたね。

 

水中脱出もすごかったですが、そのあと、ずぶ濡れのままガソリンスタンドに行って

とてつもなくダサいクリスマス柄みたいなスエット?に着替えるところがサイコー!

 

マーラは合法的に悪事をはたらくんですけど、

ロシアンマフィアのローマンのほうは、法律まるっと無視で

力技でなんでもやり放題。

こっちの設定にはつっこみどころ満載なんですけど、凶悪と言うか、外道というか、

「ちょっと前の時代のものすごく悪いヤツ」代表なんですね。

そして、ローマン役のピーター・ディンクレイジもはまり役でした。

 

この二人以外も、出てくる人ほぼすべて「悪人」なのが爽快で、

悪くない人を探すのが難しいくらい。

 

いつもマーラに有利な判決をだしてくれる判事も

「マーラに買収されてる」と考えられないこともないのですが、

おそらく彼は、彼女の実績や完璧な書類を信じて疑っていないのでは?

ジェニファーの家に同行する警官とかも、「買収」されたわけではなく

必要な業務を淡々とこなしているように思いました。

 

日本のお安いドラマだと、最終的に悪いのはだいたい「公権力」で

政治家とか判事とか警察上層部とか、そんなのばかり。

本作はそこに悪人を配置していないことも、好きな理由のひとつです。

 

それにしても、ロザムンド・パイク、すごかったなぁ~!

もうこれからが楽しみでワクワクしてしまいます。