映画 「劇場版 ルパンの娘」 2021(令和3)年10月15日公開 ★★★☆☆
原作本 「ルパンの娘」シリーズ 横関 大 講談社
泥棒一家“Lの一族”の娘として生まれた三雲華(深田恭子)と警察一家の息子の桜庭和馬(瀬戸康史)は、
娘の杏(小畑乃々)を連れて遅めの新婚旅行でディーベンブルク王国を訪れる。
しかし、そこで最後の大仕事のためにやって来た華の家族と遭遇。
あきれる華だったが、杏が誘拐され、犯人からあるお宝を交換条件として要求される。
さらに、死んだとされていた一族のひとり、三雲玲(観月ありさ)が現れる。 (シネマ・トゥデイ)
冒頭で「今までのあらすじ」をハナの祖母のマツ(どんぐり)が前説。
ハナは泥棒一族に育ち、カズマの家は代々警察官。
そんなふたりが出会って恋に落ち、結婚して娘のアンが生まれます・・・
(長くなりそうなので、説明代わりに、チラシの相関図を貼って、今回はあらすじは省略しま~す)↓
映画化されると聞いて、横関大の原作本の最初の1冊は読んだのですが、
そのあとの続編や、20回も続いたテレビシリーズも全く観ていません。
だいじょうぶか?
と思ったんですが・・・・だいじょうぶでした。
劇場版の主なプロットはつぎの2つ。
① 「Lの一族」のタケル(ハナの父)は泥棒稼業を引退することにし、
最後の大仕事としてディーベンブルク城にある王冠を盗みにやってくる。
② 長らく消息を絶っていたタケルの妹のレイは、Lの一族に恨みをもっていて
ジョーカーの姿となり、ハナの娘アンを捕えて、身代金に王冠を要求。
ハナとカズマとアンもディーベンブルグ王国に観光気分でやってきたら、
それに巻き込まれてしまい、結局「Lの一族」は全員勢ぞろい。
スリの祖父母が麿赤児とどんぐり、というすごいキャスティングで、
どんぐりなんて、ほぼ出ずっぱりなんですが、それが気にならないくらい、
ほかのメンバーのクセも強めです。
ハナの弟のワタル(栗原類)はハッカーで発明家、みたいな役回りなんですが
彼の作った媚薬スプレーで女性陣がムラムラしてワタルやカズマに迫るシーンとか、
ほんとにアホらしくてしつこくて、この時点で帰りたくなりました。
女優さんへのいやがらせの演出みたいにも思えます。
小沢真珠のくねくねポーズとか、橋本環奈のぶりっこポーズとか、
映画館の大きい画面で見せたらダメです。
同じく大泥棒の円城寺家は、なぜか意味もなく歌って踊りだす、という設定。
これもかなりアホらしいんですけど、
父が市村正親、息子のアキラが大貫勇輔で、華麗なステップに見とれます。
多分同業者のライバルなんでしょうけど、何度も助けにも来てくれて、その辺、初見の私には謎なんですけど、
もうストーリーとかどうでもいいと思うほど、すばらしくキレのいいダンスを見せてくれます。
キャラ的には、どんぐりや小沢真珠以上に濃くて唐突ですが、
体と動きの美しさ、歌のうまさに痺れちゃいます。
とくに大貫さんの動きは、「クラシックバレエ」と「コンテンポラリーダンス」と「宝塚の男役」と
「体操の床」と「格闘技の型」とか、そういう諸々のかっこいいところを
全部つなぎ合わせたようなクオリティの高さです。
ストーリー的には踊る必要とか全然ないんですけど、
円城寺家のおかげで、それまでの「コテコテ」感がすっかり爽やかになりました。
②のタケルの妹のレイのくだりは、ネタバレで書いてしまうと・・・・
若いころのレイは大道芸人の彼と恋におち、結婚して子どもも生まれますが、
夫がチンピラにからまれて殺され、レイは犯人を殺して復讐しようとします。
Lの掟では「殺しはNG」なので、タケルは殺しを阻止して警察に通報。
それを恨んだレイはLの一族を皆殺しにしようとしていた・・・・
みたいな、荒唐無稽な話で、唖然としますよ。
殺人は「Lの掟」じゃなくても「人間社会の掟」でNGですけど・・・
レイが置いていった子どもがハナだということはすぐにわかるんですが、
別にタケル夫婦がレイから奪ったわけじゃないのに、
感謝することもなく、なぜ恨んでるのか不明。
それに、ハナもカズマと結婚するときに自分の戸籍とか見なかったのかしら?
そもそも大道芸人の夫が殺されないようにするために
ワタルの開発したタイムマシンで1991年のクリスマスイブに行って
「過去を変える」という荒業にも挑戦。
過去が変わると、ハナとカズマが出会うこともなく、アンも生まれず
「今」がかわってしまうのです。
こんなテキトーなドラマのなかで、タイムトラベルのパラドックスをどう処理するのか?
半分あきらめの境地で見ていたのですが、これはけっこう上手にまとめたと思います。
②であっさりネタバレしちゃいましたが、
プロモーションではジョーカーの存在をミステリアスに扱っており
これは誰でしょう?とシークレットゲストを匂わせていましたが、
なんのことはない、タケルの妹でハナの実の母、レイがジョーカーの正体なのでした。
「謎」をひっぱるためか、かなり濃い目のメイクで、相川七瀬か土屋アンナにしか見えず、
レイ(観月ありさ)だとわかってからも、このヴィジュアルだから同一人物に見えず
出番多かったのに、なんだかお気の毒。
どにかく、泥棒チームは全員ぴったりした泥棒スーツ着用がマストなので
キャスティングは演技力より体形重視かもしれないですが、
こんなの日本人でちゃんと着こなしていて、すごいなぁ。
格闘シーンは(ハリウッド映画見慣れてると)ちょっとモタモタにみえてしまったけれど、
オール日本人キャストで映画化までできたのは立派だと思います。