映画「DUNE/デューン 砂の惑星」 2021(令和3)年10月15日公開 ★★★☆☆

原作本 「DUNE 砂の惑星」 フランク・ハーバート 早川文庫

 

(英語; 字幕翻訳 林完治)

 

 

人類が地球以外の惑星に移り住み宇宙帝国を築いた未来。

皇帝の命により、抗老化作用のある秘薬「メランジ」が生産される

砂の惑星デューンを統治することになったレト・アトレイデス公爵(オスカー・アイザック)は、

妻ジェシカ(レベッカ・ファーガソン)、息子ポール(ティモシー・シャラメ)と共に

デューンに乗り込む。

しかし、メランジの採掘権を持つ宿敵ハルコンネン家と皇帝がたくらむ陰謀により、

アトレイデス公爵は殺害されてしまう。

逃げ延びたポールは原住民フレメンの中に身を隠し、やがて帝国に対して革命を決意する。

                          (シネマ・トゥデイ)

                                                                                              

 

いつもはネタバレ込みの詳しいあらすじを書いているのですが、今回は省略!

というのも、上のシネマ・トゥデイの短いあらすじで、

ほとんど言い尽くしてるんですよね。

 

そもそもこれは

1965年にフランク・ハーバートによって書かれた壮大なスペースオペラで、

第一作の「砂の惑星」だけで早川文庫4冊(新訳だと3冊)という長編で、

長らく「映像化不可能」といわれてきました。

70年代にいち早くそれに挑戦したのがあの鬼才監督ホドロフスキー。

あまりに壮大すぎて、上映時間10時間以上、製作費も莫大で、

結局未完に終わってしまいました。

 

 

私はこの作品を7年前の「ホドロフスキーのDUNE」で知ったんですが、

この顛末は最高におもしろい!

その時に原作とかこの映画で使うはずだったキャラやメカのデザインの資料

メビウスやギーガーとかの本を読んで空想に耽っていました。

ぽしゃった企画ではありましたが、

「エイリアン」や「マトリックス」「ブレードランナー」や・・・

いろんな作品に継承され(パクられ?)

映像の歴史にちゃんと爪痕を残しているのです。

 

そして「DUNE砂の惑星」の映像化は、

1984年にデビット・リンチが120億円かけて実現しましたが、

世間的には「失敗作」といわれています。

私はDVDでしか見ていないのですが、

とりあえず137分にコンパクトに収めて内容はざっくりわかるから、

観て損はしないです。(失礼な言い方!)

 

今回のヴィルヌーヴ版は、155分の長尺だし、全編やるものだと信じてみていたら、

なんと、ほんの前半部分で

これから、ってところで終わってしまいました。

え?正気ですか?

これじゃあ。あらすじを書くのもイヤになってしまいますよね。

 

アトレイデス家の若きプリンス、ポール(ティモシー・シャラメ)は、

母(レベッカ・ファーガソン)からはベネ・ゲセリット流の心身統御術を引き継ぎ、

ガーニー(ジョシュ・ブローリン)と

ダンカン(ジェイソン・モモア)という優れた師範から剣術を学び、

父(オスカー・アイザック)は優れた統率者のDNAを、

そして(関係ないけど)あの美貌!

 

「救世主(クウィサッツ・ハデラック)はどこにいる?」というのが最初のテーマで、

原作知らなくても、誰がどう考えてもポールしかいないんですけど、これを延々引っ張ります。

あの強欲で残虐なハルコンネン家がアラキスの利権を簡単に手放すわけないよね~

と誰もが思いますが、これも時間をかけてその流れになります。

(驚くことはほとんどなく、敢えていえば、

母が信頼してたドクター・ユエが実は裏切り者だった、っていうくらいかな?)

 

話の展開だけでいうと、

「なんの驚きもなく話がゆ~っくり進む」のに2時間半耐えたあげくに

いよいよこれから、というところでTHE ENDとか、ひどいよね~!

 

ただ、本作はストーリー展開よりも、むしろ見どころは映像美で、

映画館の大きな画面で見ることが必須です。

(私は普通の字幕版でみたけれど、IMAXで見たほうがよかったのかな?)

ただ、メカとかキャラのデザインは出そろってはいなくて、

サンドワームもまだ完全には姿をあらわしていません。

気持ち悪い造形をちょっと期待してたんですが、

ハルコンネン男爵もそこまで醜悪ではなく、

一番登場場面の多いポールと母レベッカはそろって美形で、全体的に目に優しい感じ。

砂の惑星だから、あんまり色は使えないはずなんだけど、なんか背景もきれいでしたね。

(リンチ版は暗かったりキモかったりでしたよ)

 

10191年(今から8170年後)の設定だから、

近未来というより、遠い遠い未来なんだけど、

武器や装備は50年以上前の原作を忠実に再現してるから、ちょっと古臭いですね。

(ナウシカにも似てますけど、元ネタはこっちですから・・・)

アトレイデス家の室内は令和の中流家庭のリビングみたいで、

冒頭部分はホームドラマみたいにも思えました。

 

アラキスでスパイスを採掘して莫大な富を得、

先住民のフレメルを虐待して搾取していたハルコンネンが

ある日を境に(皇帝の命で?)追放され、かわりにアトレイデスに統治権がまわってくるも

皇帝とハルコンネンの出来レースだった・・・とか、今の世の中でもありそうな話ですね。

ハルコンネンはどこぞの国で、皇帝がどこぞの国際機関、とかね(笑)

 

あと、フレメルを演じてるキャストにアフリカ系が多くて、

冒頭シーンは「内戦」みたいでSF要素少なめ。

みんな機能的な保水スーツの上から布をまきつけていて

なんだか砂漠の民ベドウィンを連想してしまいました。

アトレイデス家にもいろんな人種のキャストを配置して

ほぼ全員白人キャストのリンチ版に比べると、ずいぶんと「今風」ですが

多様化推進の圧力でこうなったのかな?とかちょっと思ってしまいました。

 

あと男女比では、女性のキャストの数も出番も確実に増えていました。

カインズ博士も女性に変更されたけど、

これだとこのあと、ストーリーにもちょっと影響が出てきそう。

 

アフリカ系や女性キャストを排除するのはダメだけど、

あんまり「配慮」するのも見ていて痛々しい気もしました。

 

 

「見どころは映像美」といいながら、画像を全然いれてないんですが、

個人的にはこれは原作を読んで脳内で想像して楽しむドラマだと思っています。

今から50年以上前にこんな壮大なSFファンタジーを書いた人の脳内を見てみたいです。

 

 

↑これが石ノ森章太郎の表紙の初版 4冊セット

 

↑これが2016年の新訳 3冊セット

 

 

↑そしてこれは映画のカバーつき

 

(原作本の画像はすべてネットからお借りしました

私は1冊も持っていません)