映画「ベル・エポックでもう一度」 2021(令和3)年6月12日公開 ★★★☆☆

(フランス語; 字幕翻訳 横井和子)

 

 

元売れっ子イラストレーターのヴィクトル(ダニエル・オートゥイユ)は社会の変化になじめず仕事を失い、

妻のマリアンヌ(ファニー・アルダン)にも見放されてしまう。

そんな彼を励まそうとした息子は、戻りたい過去を映画セットで再現する

「タイムトラベルサービス」をプレゼント。

希望の日時を申し込んだヴィクトルは思い出のカフェで運命の女性と「再会」し、

夢のようなひとときを過ごす。

輝かしい日々の再体験に感動した彼はサービスを延長すべく、

妻に内緒で唯一の財産である別荘を売り払ってしまう。   (シネマ・トゥデイ)

 

 

イラストレーターの夫ヴィクトルと精神科医の妻マリアンヌの熟年夫婦。

VRゴーグルや自動運転車に全く抵抗ない妻にたいして

ヴィクトルは未だ鉛筆で書いて絵の具を塗るやり方以外は受け付けないアナログ親父。

一世を風靡した風刺画家だったのに、時代に取り残された彼に仕事は来ず、

覇気のなさを妻からも責められる毎日です。

 

そんな父を見て、息子は「タイムトラベルサービス」の招待券をプレゼントしてくれます。

これは彼の友人アントワーヌが始めた「時の旅人社」の画期的な新ビジネスで、

映画製作の技術を使って、客の希望の時代の大きなセットをつくり、

役者も用意して、過去を体験させてくれるというもの。

マリーアントワネットの時代にもヘミングウェイの時代にも戻れ

皇帝や伯爵にもなれると大評判の体験型アミューズメントです。

 

ヴィクトルが希望したのは、

「1974年5月16日のリヨン 『ラ・ベル・エポック』での運命の女性との再会」

というピンポイントのリクエストで

イラストレーターだけあって、かなり詳細な絵コンテを書いてきます。

それでもアントワーヌは嫌な顔もせず

「要望がはっきりしていたほうが助かる」

とセットや小道具の時代考証に完璧な仕事を目指します。

実は若いころ彼はヴィクトルの書いた絵に救われたことがあって、

その恩返しもふくめて、めちゃ頑張ってくれます。

 

アントワーヌは満を持して、恋人で女優のマルゴに恋人役を依頼します。

そしてヴィクトル役は当時の衣装に着がえた本人が25歳の設定で・・・

 

当時のカフェもホテルもリクエスト通り。

ヴィクトルの思い描いたままの、あの出会いの日が再現されていきます。

 

夢のようなひと時が忘れられないヴィクトルは息子に借金したり別荘を売ったりしてお金をつくり

高額な追加料金を積んで「運命の女性」というか、マルゴとのシーンをおかわりするんですが、

ふたりが台本にないキスをしているのを、(マルゴのリアル恋人の)アントワーヌが知り、

「運命の女性役」をマルゴから他の女優に変えてしまいます。

 

「マルゴはもう退職した」と聞かされて、愛しいマルゴを探し回るヴィクトル。

やっと見つけた彼女は、夫と子どもをもつふつうの主婦でした。

(実はそれもアントワーヌに指示された役を演じていたのですが・・・)

「私はあなたのイラストで奥さんを再現していた。

今の奥さんの落胆や批判も受け入れて、現実から逃げないで」

そしてマルゴは「本物の」涙を流します。

 

ヴィクトルが家に帰ると、妻のマリアンヌは(ヴィクトルの親友でもある)浮気相手とベッドのなか。

それでもヴィクトールは顛末を説明し、書き溜めた絵コンテを置いて家をでます。

 

それをみたマリアンヌは「ラ・ベル・エポック」にむかいます。     (あらすじ おしまい)

 

 

「タイムカプセルに乗せて希望の時代に連れていくビジネス」

というのはSF映画の定番ですが、

本作は映画の技術を使って「それらしいのを再現」してくれるわけですが、

ヴィクトルのは予想の斜め上をいく完成度の「オーダーメイドの旅」で、

手間もお金もかかっていそう。

 

 

若作りしたところで本人役がこれ↑ですから、

親子か、せいぜい社長と愛人にしか見えません。

ひとときの夢を見て「ああ楽しかった」で終わりにすればいいのに

ヴィクトルはこのアトラクションにすっかりハマってしまうのです。

 

「運命の女性」=「今のおこりんぼ妻のマリアンヌ」

というのは、けっこう最初のほうで予想がつくんですよね。

これがわかっちゃうと、結末もほぼ見えてくるから

「お話」としては全然面白くないんですけど、

メインのストーリーじゃないところで色々楽しめました。

 

広いスタジオにいろんな時代のセットが設営されていて

街並みや建築物がリアルに再現されていて、

コスプレ以上のクオリティの衣装をつけた人たちが闊歩しているのなんて

(俳優さんにとっては日常なんでしょうけど)大興奮です。

ヒトラーとかルイ14世とか歴史上の人物じゃなくて、その時代を生きた

「名もなき人」っていうほうが好きだなあ~

 

・・・なんてことはどうでもいいんですが、

実は今、実家から何十冊もの古いアルバムを引き取ったので、それを整理しながら

「昭和の街角写真と同じ場所の撮影をする」なんていうのにハマってしまったので

もうホントに毎日がタイムスリップです。(お金もかからないしおススメ!)

そんなわけでブログ更新も遅れ気味です(しれっと言い訳・・)

 

舞台がフランスなので、1974年といわれてもピンときませんが、

昭和49年といわれると、(今、実家の家族の年表も作ってるから)すぐにその時代に戻れちゃいます。

懐かしいなぁ・・・(映画とは無関係ですみません・・・)

 

 

ヴィクトルは1974年に25歳だから、2021年換算で72歳

マリアンヌは18歳だから、今年65歳という計算になります。

 

1974年を知らない世代にはどうなんだろう?

と思ったものの、

46年前に生きてた私にとっても、実は

それほど共感することはなかったです。

 

むしろ、サイドストーリーに当たる、アントワープとマルゴの恋愛のほうがグッときたし、

お客とおもってた人が実は仕込みのスタッフだったとか、

マリアンヌの本物の友人のジゼルが登場したりとか

(ストーリーにはからまないけど)現実と設定が交錯するところとかが、面白かったです。