映画「大コメ騒動」 2020(令和3)年1月8日公開 ★★☆☆☆

シベリア出兵直前の1918年(大正7年)、

富山県の漁師町に暮らすおかか(女房)たちは日々値上がりする米の価格に頭を抱えていた。

家族に米を食べさせたくても高くて買えず、

困り果てた彼女たちは米屋に安く売るよう訴えるも失敗し、

リーダー格のおばばが逮捕されてしまう。

その後も米の価格は高騰するばかりで、

ある事故をきっかけにおかかたちはついに行動を起こす。   (シネマ・トゥデイ)

 

大正7年の夏、富山県。

松浦いとは、学校では優等生で、いろんな夢があったものの

結局17歳で漁師の利夫と結婚して子どもを産み、「浜のおかか」となっていました。

 

このあたりは秋から春までは近場の漁で収入があるものの

「鍋割れ月」といわれる夏場は近場では魚はとれず、

利夫は妻子を残して樺太のほうまで出稼ぎにいってしまいました。

いとは日銭を稼ぐために、ほかの女房たちといっしょに

「仲士」という肉体労働をしていました。

これは、富山で獲れた米を収めた米蔵から浜のはしけまで

60㌔くらいある米俵を担いて運ぶ仕事で

1日働くと、大人の男が食べる一升の米が買えるくらいの銭がもらえました。

(この辺の男衆は、一日一升、女も8合の米を食べていたそうです)

 

ところが、インフレで米の価格は日増しに上がり、

日当で買える米は日増しに減ってきて、ひもじがる子どもたちを見かねて

いとたちは、リーダー的存在の「清(きよ)んさのおばば」を筆頭に

米の積み出しを阻止したり、米屋に大挙して談判にいったりするのですが

その行為に尾ひれがついて、「越中女一揆」と報道されたことから

全国的な「米騒動」にまで発展するのでした。

 

米穀商や資産家たちは警察とずぶずぶの関係で

いとたちの訴えは受け入れてもらえなかったのですが、

結果的には彼女たちの体を張った積み出し阻止が行政を動かし

米の価格は抑えられ、1日米3合の貧民救済制度もできました。

いとの家では、出稼ぎにいっていた利夫も無事に帰ってきて、

めでたし、めでたし・・・・                   (あらすじ おしまい)

 

 

「大(だい)米騒動」というのは初めて聞く言葉で、

調べても(この映画以外では)ヒットしませんでした。

「越中女一揆」というのがこれにあたるのかな?

1918年8月3日に西水橋町の米穀商に漁夫の女房たちが大挙して米の安売りを懇請した

(映画のなかにもこのシーンありました)ことを指しているようです。

 

米騒動が全国にひろまったきっかけは名もなき女性たちが声を上げたことだった・・・・

というのは知らなかったのですが、

これを伝えるためだけに映画を作ったのかな?

 

あらすじでは省略してしまいましたが、

この騒動を取材にきた大阪日日新聞の一ノ瀬という若い記者が

いとたちに共感した記事を書こうとするんですが、

「そんなのじゃ読者が喜ばない」と、本社の編集長に書き直されてしまうシーンがありました。

現場を取材した記者は、米が買えない苦しい状況を訴えようとするんですが、

「女たちが資産家や米屋を襲うというのが面白いからその辺を強調して書くと新聞が売れる」

「戦う理由なんて知りたがらない」

といわれてしまうんですね。

 

こういうことって、今のメディアにもいえることで、

これが多分作り手が伝えたかったことじゃないかと思ったのですが

なんというか・・・・一ノ瀬役の人が見たことない俳優さんで、イマイチ弱い。

たとえば、いとの夫の三浦貴大が一ノ瀬だったら、もうちょっと伝わった気がします。

 

 

浜のおかかたちのなかでは、「清んさのおばば」の室井滋の怪演が際立っていて、

他の人たちがぜーんぶかすんでいました。

井上真央と鈴木砂羽以外は、そんなに知ってる人もいないから

顔にドーランを塗って、同じような格好をしていたら、誰が誰やら・・・・

 

 

 

 

これが相関図。

室井滋、左時枝、柴田理恵なんかの強力なキャラが目立つキャスティングです。

寺子屋の先生のユキと源蔵の妾のヒサのふたりだけが若くてきれい。

薄汚れたおかかばかりじゃアレだから、

ちょっときれいどころも入れてみました的な感じで

別にいるか?って思いましたが・・・・

 

浜のおかかたちは(源蔵の浮気問題とか)何かことがあると

清んさのおばばを中心に一致団結して

男たちに立ち向かうんですが

女房一揆に加わった人の中には、実は米に困ってない人も多くて

おばばに逆うのが怖くて、おつきあいで参加してたんですね。

 

この辺は、ボスママを中心としたママ友ピラミッドとかママ友マウンティングにも

通じるところがあるんですけど、

サチの家ではホントに食べる米がなくて、

幼い娘が米を盗みに入って死んでしまうという悲劇があったわけで

(助け合いの精神があるのなら)

こういうのを救えなくてどうする!って思ってしまうんですが・・・

 

一番もやもやしたのが、米がいくら値上がりしたといっても、

今まで仲士の賃金だけで1日に1升買えたのが目減りしただけなのに

なんかもう、餓死するような勢いで騒いでること。

うちは夫婦で一日に1合しか食べないので、一升飯とか想像ができないし

米は総合栄養食じゃないのだから、他のものも食べたら?とか思ってしまうんですけどね。

 

実はこの映画、スタッフにもキャストにも富山県出身の人たちがたくさんかかわっていて

撮影はオール富山ロケ。

ここに出てくる浜のオカカたちは聞きにくいこともズケズケ聞くし、言いたいことは何でも言い、

声も大きくて、ケンカも日常茶飯事なんですが

こういうのは富山の女性「あるある」だそうです。

身近に富山県出身の人がいないので、なかなかピンとこないんですが、

こういう「秘密のケンミンショー」みたいな映画があってもいいかもしれませんね。