映画「GOGO 94歳の小学生」 2020(令和2)年12月25日公開 ★★★☆☆                             ※ 今年から公開日を西暦和暦併記することにしました。

(カレンジン語・スワヒリ語・英語; 字幕翻訳 長澤達也)

 

 

ケニアの小さな村で暮らす助産師のプリシラ・ステナイさんは、

3人の子供と22人の孫、そして52人のひ孫に恵まれた。

みんなに「ゴゴ(おばあちゃん)」と慕われる彼女は、

自分が幼いころに勉強を許されなかったこともあり、

自ら志願してひ孫たち6人と一緒に小学校に入学する。

彼女は小さなクラスメートたちと同様に寄宿舎で寝起きし、

制服を着用して一生懸命授業に耳を傾ける。                     (シネマ・トゥデイ)
 

 

リーダーズビジョン小学校でひ孫だちと勉強する94歳のゴゴおばあちゃん。

子どものときは牛の世話するほうが大事だったし、

女の子が学校に行くような時代ではありませんでした。

90歳まで字も読めなかったんですが、一念発起、

校長先生に入学をお願いにいくと、まさかのOKが出たのです。

 

ゴゴは94歳とは思えないほど長身で、背筋もまっすぐ。

制服を着てリュックを背負う後ろ姿は、とても老人にはみえません。

 

 

いっしょに英語や数学の授業を受け、給食を食べ、子どもたちからも人気です。

修学旅行では、マサイマラの自然保護区で野生動物を見たりスケッチしたり

はじめてみるものばかりで、 村から出たことのないゴゴは大興奮です。

 

 

優等生のひ孫のチェプコエチに教わりながら勉強するも

最近目も耳も弱ってしまったゴゴの気がかりは

まもなくやってくる卒業試験に合格するかどうか・・・・

 

 

歳の近い親友ディナもまた学校に行けなかったのですが

いつも生き生きとしているゴゴが羨ましくてなりません。

「私も勉強したい」というディナに ゴゴは大賛成です。

 

そしてついに卒業試験の日がやってきました。          (あらすじ とりあえずここまで)

 

 

ここまでだと、

タイトルと予告編で想像していたのとおんなじ内容。

それ以上でもそれ以下でもありません。

 

ただ、ゴゴは想定以上に自分の意思がはっきりした人物で

最初は単に自分の学びたいという気もちを満足させるためだったかもしれないけれど

「学齢に達しているのに学べない子がいてはダメ」と強く訴えます。

せっかく学校に通っていたのに、妊娠を機に退学してしまう女の子が周りに多いことも

悲しく思っていて、妊娠しても結婚しても学ぶことをやめたらダメだと・・・・

ディナの進学も心から応援しているから、「生涯教育」も大事だと思ってるんでしょうね。

 

それから意外だったのは、

先生たちが ゴゴにまったく手加減しないということ。

 

夜間高校とかだと、20や30の年齢差は珍しくないと思いますが

小学生と94歳ってものすごいインパクトある年齢差ですよね。

普通に考えて、そんな年の人が10歳くらいの子どもと机を並べて

新しいことを学ぶなんて、絶対に無理なこと。

なので、先生たちはゴゴをお客様扱いするのかと思っていたら、

ガンガン指名するし、ゴゴが答えを間違えると怒り出すし

全く容赦ありません。

「がっかりだ」

「おしおきよ」

「もっと下のクラスに行く?」

「目がみえないせいにしないで」

「ちゃんと見えるメガネを用意しなさい」

とか、かなり激しいです。

 

実は、私はかなり最初の方から、

ゴゴが白内障だということに気が付いていました。

これは手術をしない限り、メガネを変えたって

みえるはずがありません。

先生たち、気づいてよ~!と思っていました。

 

案の定、このあとの卒業試験でゴゴは合格点を獲れず、上の学校には進めません。

学校をやめることを決めたゴゴを校長先生が訪れ、

見えないのが原因ならば、と、

白内障の手術をすることが決まります。

手術は成功、

すっかり見えるようになったゴゴは学校に戻り、

おともだちのディナおばあちゃんもピカピカの新一年生となって

子どもたちに迎えられます。

 

学校にはゴゴの本名「プリシラ・ステナイ」の名前を冠した

女子寄宿舎も完成し、めでたし、めでたし・・・・

 

「100歳までかかっても、絶対に卒業する」

というゴゴの決意と、

世界にはまだ、貧困や妊娠で学校に行けない女の子が1億3000万人もいる・・・

というナレーションが流れてTHE END となります。

 

90過ぎても学ぼうとするGOGOに元気をもらう作品として

ちゃんと成立しているんですが・・・・・

 

ここからはかなり感じの悪い流れになりますので

本作で感激した方、感激しようと思っている方は読まないでください。

 

 

実は私はこの作品、ちょっとヤラセがあるんじゃないかと疑惑をもっています。

 

そもそも、平均寿命65歳のケニアで、ゴゴが94歳というのがかなり疑わしい。

日本人だったら94歳のおばあさんに10歳くらいのひ孫がいるのは自然ですが、

学齢期の少女が妊娠するような地域だったら、ひ孫は30代くらいじゃない?

しかもGOGOには玄孫(やしゃご)はひとりもいないんですよね。

70代くらいの子どもや50代くらいの孫の話があれば納得するけど、

登場するのはひ孫の10歳くらいのチェプコエチひとりだけ。

ただ、ゴゴが仮に74歳だとしても、

彼女の知的好奇心や向上心には脱帽ですけどね。

 

あの黄色いバスで1週間も修学旅行にいくのも

ほんとかな?って思ってしまうし、

初めて会う別の部族の人に

いきなりその村の教育実態を質問したりするかなぁ・・・・?

一生徒であるゴゴが寄宿舎建設に大きな力を持ち

建築業者に文句言ったりできるのも、どんな経緯があったんだろう?

とか、いろいろ気になっちゃいます。

 

実は、見終わった後で、

この監督が「世界の果ての通学路」の監督だったと知りました。

この作品は命の危険を冒してはるか遠くから通学する子どもたちのドキュメンタリーで

いわゆる「感動もの」なんですが、

私のようなひねくれものには、演出過多が気になってしまい、

炎上しそうなヒドイ感想を書いた記憶があります。

(そのブログを探したけど見つからなかったので、おそらく自分で削除したのでしょう)

 

そんなことがあったので、そうしたら本作も

最初に監督の作ったストーリーありき、なのかな?と思ってしまったわけです。

「通学路」のほうは、確実に演出と分かる箇所がいろいろありましたが、

本作は「疑惑」どまり。

あと、校長が「手術をすれば見えるようになりますよ」と言ったとき

ゴゴの表情がぱっと明るくなったところは演技のレベルを超えていたので

一応ヤラセ疑惑は否定しておきます。(偉そうに!)

 

 

 

入場者特典で、木の皮でつくった可愛いキリンもいただいたことだしね・・・(笑)