映画「劇場」 令和2年7月17日公開 ★★★★☆

原作本 「劇場」 又吉直樹 新潮文庫

 

 

 

友人と立ち上げた劇団で脚本家兼演出家を務める永田(山崎賢人)は、

上演ごとに酷評され客足も伸びず、理想と現実のはざまで葛藤していた。

彼はある日、自分と同じスニーカーを履いていた沙希(松岡茉優)に思わず声をかける。

戸惑いながらも永田を放っておけない沙希は一緒に喫茶店に入る。

そして付き合うことになった二人は、沙希の部屋で一緒に暮らし始める。(シネマ・トゥデイ)

 

本作は「劇場公開と配信が同時」という、かつてない方式で公開されています。

amazonプライムには加入したものの、

wowowで見損なった回の「BULL」しか見てなかったんですが

せっかくなので、配信の方をチョイスしました。

(ついでに「amazonプライム」というテーマも作ってみました)

 

自意識過剰の天才肌の小劇団の作家、ナガタ。

まったく生活力ない彼を支えるのが、女優志望の服飾専攻の女学生サキ。

ナガタの才能を信じるサキは、彼に自分の夢を託し、疑いもせずにつくし続けるんですね。

これで彼が大成功すれば「美談」になるところですが、彼は想像以上のクズ男で

もう観てる方はイライラしちゃうわけです。

 

映画に登場するクズ男の典型は

・ 女に働かせたお金を風俗につかっちゃう

とか

・ 酒が入ると人格が変わって暴力をふるう

とか

・ かくれて浮気してる

とか、いろいろありますけど、

ナガタは、文化人気取りで異常にプライド高くて偉そうにしている反面、いつも不安でいっぱい、

DV男ではないけど、突然攻撃的になることもあり、

感情のコントロールできないくせに、それを冷静に眺めている自分がいたり・・・

まあ、同居人としては、一番めんどくさいタイプです。

 

最初はキラキラと笑顔だったサキが

生活のために昼も夜もはたらくようになり

だんだん不安定になって壊れていくのをみるのがつらいんですけど

松岡茉優の繊細な演技にくぎ付け、ですね。

あれだけ美形で爽やかな山﨑賢人のクズっぷりも見事でした。

 

下北沢界隈の小劇場事情はよくわからないけれど、いかにもの「演劇人」たちがたくさん出てきて

この世界を垣間見られた気分になりました。(ここは間違いなく原作を越えていますね)

 

ただ、演劇界に疎い私でもすごく身近に感じられたのは、

たとえば

*国立大大学院を出たものの、いつまでも非常勤から抜け出せない人

*日本に来たものの本国でのキャリアが通用せず、生活の基盤が作れない人

*芸大卒のプライドで、生活費稼ぎの個人レッスンや伴奏とかに躊躇する人

・・・・とか、なかなか生きづらさを感じている人たちは、そこいらじゅうにいるからでしょう。

 

(ナガタはほとんど実績もないし、なんでそんないっちょまえの芸術家気取りできるのかも不明ですが)

今はこんなだけど、「彼の実力は私は一番知っている」と思っちゃって、

支えることを決めた女性たちの覚悟はなんとな~くわかるような気もします。

そういう佇まいに惹かれる女性は多いかもしれないけれど、

マネージャー的にしっかり管理できるパートナー(伊藤沙莉演じる青山みたいな人)だったら

喧嘩は絶えないかもしれないけれど、長続きはできるかも。

サキのように、クズ男に甘々な対応をとり続けていたら

結局自分の首をしめることになってしまいますね。

 

ナガタとサキはは何年も同棲しているのに、

ベッドシーンはおろか、キスやハグもないことについて。

 

まあかなり不自然ではありますが、「体の関係でずるずるだらだら」ってことになってないのは

純粋に夢とか愛とか未来とかを考えられていいかもしれない。

 

40年も前の映画になりますが、「もう頬づえはつかない」という映画があって、

桃井かおりが、ふたりのクズ男(森本レオと奥田瑛二)の間で揺れ動く早稲田の女学生で

当時としては「女性の自立」を描いた「最先端」の映画だったんですが、

「体の関係」がけっこうな重要事項になっていて、トラウマというかイヤ~な感じを

私は何十年もひきずってしまっていました。

 

「劇場」は一応「純愛」設定になってましたけど、同棲未経験者、特に若い女性には

けっこうなトラウマになりそうだな~と思っていたら

ラストの壁が崩れるサプライズ。

実は舞台の上での芝居だった、というオチは

他でもみたことのある(最近だと「何者」とか)技でしたが、

わりと気分はふっきれたかもしれません。

 

今回は配信で見てしまいましたが、

映画館でみたらまた違う感想になったかもしれませんが・・・・

 

6月の映画館解禁以降は、金~日曜日のなかで映画館で必ず2本、

そのほかの仕事のない平日に1本みたりみなかったり・・・・

というペースできてたんですが、先週はめぼしいものがなく

(シネコンは邦画のコメディばっかり!)

今月はまだ1本も観ていないので、ずいぶん間隔があいてしまいました。

でも、配信やDVDだと、やっぱり集中できないので

映画は映画館で・・・・が一番ですね。

 

明日からは ようやく「ハニーボーイ」「ジョーンの秘密」が公開されるので

楽しみにしています。