ドラマ「ブレグジット EU離脱」 令和元年12月4日DVDリリース ★★★★☆

(英語 字幕翻訳 不明)

 

 

2016年。

政治戦略家ドミニク・カミングスは、EU離脱国民投票に向けて、

イギリス独立党のロビイストから離脱派の選挙参謀になるよう依頼される。

依頼を受けた彼は、データアナリストの協力のもと、高度なアルゴリズムを使い、

相手陣営も知らない有権者でありながら投票したことのない人々

「存在しないはずの300万人」を得票のターゲットに絞り込む。

そしてソーシャルメディアで離脱を訴えるキャンペーンを始めるのだが…。 (amazon 商品情報より)

 

薄毛のベネディクト・カンバーバッチのインパクトある画像に

面白半分で予約したんですが、これがものすごく面白かったです。

主要キャストは実在の人物で、実名で出てくるから、めちゃくちゃ生々しい。

日本では絶対に放映も公開も許されないだろうな。イギリスはすごいです!

 

プレグジットというのは、BritishiとExitを合体させた造語。

イギリスのEU離脱を意味します。

一応ニュースとか、池上さんの解説とかは聞いていますが、日本人の私にはやっぱり他人事。

イギリス本国では私よりさらに理解してない人も多かったり

同じ離脱派でもひとくくりにはならないこととか、いろいろわかって参考になりました。

 

ロビイストのマシュー・エリオットたちから、離脱派組織の選挙参謀を依頼されたドミニク・カミングス。

ナイジェル・ファラージ率いる独立党が離脱派の急先鋒で、彼らと手を組むものと思われましたが、

ドミニクはことごとく拒否します。

右翼の彼らにはそれなりの支持者もいて、知名度もそれなりにあるのに

「40年間失敗つづきのまぬけな話ばかりの政治家」

「相手にする価値のないバカたちだ」とか、ドミニクは容赦なく、

本人たちを目の前にディスるから、政治献金者のアーロン・バンクスからも

「合流すれば900万ポンド寄付する」といわれてたのに、それがパアになり

事務長のマシューはあわててしまいます。

 

 

ファラージとバンクス。 左が本物で右が俳優なんですけど、

本物もお笑い芸人みたいな表情筋で、めちゃくちゃ大げさで分かりやすい。

演説は面白いんでしょうけど、たしかに知性はあまり感じないですね。

 

ちなみに、本物のドミニク・カミングスはこんな感じ。

ヘアスタイルはかなり寄せてますけど、もともとのお顔がカンバーバッチとは違いますからね。

ただ、とってつけたようなハゲ面じゃなくて、非常に自然でした。

 

 

カンバーバッチ本人が「残留派」というのはけっこう有名だったから、

ちょっと違和感あったんですが、そもそもドミニクは心から離脱を望んでいたのか?

独立党のベテラン議員たちをバカにする彼をみていると疑問に思えたりもしてきます。

「離脱に票を集める」業務に徹していたのかもね。

 

彼らは離脱派の公認組織「Vote Leave」を立ち上げるわけですが、

名簿もなくてどう戦うのか?

国民の中には、離脱をあきらかに望むもの、望まないもの、のほかに

「投票したこともなく、投票するつもりもない人」が300万人もいて

相手陣営はこの300万票の存在自体を認めていない、ここに切り込もう!というのです。

 

そしてネットアルゴリズムの第一人者と手を組み、この300万人を囲い込んで

それぞれの個人にあわせた情報を送り付けるのです。

 

そして、一番訴えたいポイントを絞るのですが、このためにいろいろ情報を集め、その結果

国民の多くが

① NHS(国民保険サービス)の破綻を恐れている

② トルコが嫌い

と思っていることがわかり、

 

①EUを離脱すればEUに払っていた週あたり3億5000万ポンドの予算が浮くので、これをNHSに回せる

②トルコがEUに加盟すれば、なんのチェックも受けずに7700万人のトルコ人がイギリスにやってくる

と主張して、国民を離脱派に引き入れたのです。

(数字については信ぴょう性ないことがあとでわかりましたが・・・)

 

ドミニクはユーモアのない毒舌家だから、大体の人に嫌われています。

それが平気な人物なのかとおもっていたら、けっこう本人はへこんでいて

「なぜ僕はきらわれる?」  すると妻は

「私は好きよ」

「少なくとも人はあなたを忘れない」とか励ましてもらっています。

妻は妊娠中で、もうすぐドミニクは父親になるのですが、

読んでいた育児書からヒントを得て

「Take Control」(主導権を握ろう)のスローガンに一語加えて

 「Take Back  Control」(主導権を取り戻そう)として、国民感情に訴えたのもドミニクでした。

 

日本人からすると、離脱派のトップは今は首相となったボリス・ジョンソンですけど、

ロンドン市長だった彼やマイケル・コーヴ環境相たちが離脱派だと宣言したのは

後になってからなんですね。

その見た目と言動から「イギリスのトランプ」とかいわれるジョンソンですが、

ファラージたちと比べたら、けっこう知的でまともに思えてしまいました。

ファラージを拒んでいたドミニクもジョンソンとは手を組みましたからね。

 

EU離脱問題は今もまだ続いているのに、こういうドラマをつくってしまうなんてね。

一番印象に残ったのは、離脱派の参謀の彼が

「この国民投票はバカげている 複雑な問題を単純化しすぎている」

と言っていたこと。

 

大事なことは国民投票で・・・・というのは民主主義の根幹なのかもしれないけれど、

大事なことだからこそ、プロの政治家たちが話し合って決めたほうがいいと

個人的には思うんですけど。

 

日本はEUとは関係ないですけど、憲法改正の国民投票の可能性は高いです。

なんか、心配。