映画「今日も嫌がらせ弁当」 令和元年6月28日公開 ★★☆☆☆

原作本「 今日も嫌がらせ弁当」 ttkk(kaori) 三才ブックス

 
八丈島で暮らすシングルマザーの持丸かおり(篠原涼子)の次女、双葉(芳根京子)は、
高校生になると生意気な態度をとったり、母親を無視したりするようになる。
かおりはそんな娘に対抗して、彼女の嫌がる「キャラ弁」を作る。
やがてその弁当は、母を煙たがる娘へのメッセージになっていく。(シネマ・トゥデイ)
 
このアメブロの人気ブログで、ランキングやトピックにもあがってたから、前から知ってました。
クオリティの高さと毎日つづける根気には脱帽!
ただ、よけいな尾ひれをつけて映画化する意味が全くわかりません。   
 

 

八丈島に住む主婦のカオリは、夫を事故で亡くして以来、二人の娘たちを育ててきました。

昼は弁当屋で、夜も居酒屋でパートをして、家では内職のストラップつくり。

 

長女はすでに家をでて、一緒に住んでいる二女のフタバは反抗期まっさかりの中学生。

会話は携帯のメールだけで声すら発しません。

人口7500人の八丈島には電車もコンビニもないけれど、

島の人たちはあいさつ大好きで、会話がとぎれることはないんですけどね。

 

フタバの高校の入学式の日、母は一大決心をします。

「あなたが態度を改めないのなら、私もあなたの嫌がることをやります」

そして、めちゃくちゃメルヘンの赤ずきんちゃん弁当を作って持たせるのです。

「どうだ、うざいだろう!」

 

娘からの返事は

「こういうの止めて!」

ひとことだけど、とりあえず「しゃべった」ことに母は大満足。

そして弁当も完食していました。

 

そして↑の画像のような弁当を毎日作り続け、

卒業式の日は、こういう卒業証書のキャラ弁をつくりました・・・

 

 

これは実話です。

私のようなアメブロのブロガーだったら、まずこのキャラ弁のことは承知しているし、

kaoriさんがワイドショーとかに出演してたのも何度かみたことがあります。

 

とにかく、クオリティの高さやアイディア、毎日作り続ける根気は尊敬ものですが、

これ、キャラ弁というよりは、繊細な海苔アートですよね。

スライスチーズの上に精密に切り抜かれた海苔が乗っかっていて、

そのまわりに、彩り重視のおかずが入ってる、って感じ。

 

海苔を上手に切るコツとか、おかずのレシピとかの紹介があるのかと思ったら、まったくなく、

そのかわりに、映画オリジナルのエピソード(多分)をてんこ盛りしていました。

 

フタバが幼馴染み男子に勇気をふりしぼってキャラ弁をつくっていったら、

目の前で他の女子から弁当を受け取ってキスしてた、とか、

ブログ読者のシングルファザーとの交流とか、

脳梗塞で入院していた母が(長女を替え玉にして)こっそり病院を抜け出し

不自由な手であの卒業証書の弁当(しかもサイズも本物よりかなり大きい)を作ったとか、

こんな作り話で盛って、なにが楽しいのか?

と思ってしまいます。

 

「お弁当は親子の手紙のようなもの」

というのは全くそのとおりで、きれいに食べて「おいしかった」と言ってくれれば

次の日もはりきって作る元気がでるってもんですが、

別にキャラ弁である必要はないと思いますが・・・・

 

あと、母はこれらのキャラ弁を娘に手渡しするより前に

(最初の赤ずきん弁当から)すべてブログアップしてるというのが非常に重要!

あっという間に6903人の読者が付き、

もうこの時点で、すでに親子間の交換日記ではなくなっていますね。

フタバにしてみたって、こんな日本一有名なキャラ弁を毎日食べられる高校生となったら

もうそれは受け入れざるを得ないですよ。

 

キャラ弁を作れば、それで親子のすれ違いは解消する・・・というわけではないです。

 

二人の娘を育てたものとしていわせていただくと、

弁当以前にいろいろこの(映画に出てくる)お母さんはしくじっているような気がしてなりません。

とにかく、過干渉ですよ。

都会だと、家を出たら、人ごみのなかでも、知らない人ばかりだからいいけど、

島の生活では家をでてから学校に行くまでの間も、

常に知ってる人に声をかけられたり、見はられてるわけです。

(それが島の温かさでもあるけれど、多少はウザいよね)

それでも心配で登下校中も娘を監視していたりするんですよ、このお母さんは。

せめて自分の部屋にいるときくらい、プライバシーを保ちたいと思うのは当然じゃないかな?

 

娘がこっそり書いていたポエムのノートを玄関(?)に落とした時も、

「それを一応読んで、娘に届ける」というのは、地雷を踏むようなものですよ。

ここは、絶対に「本人が気づくまで落ちたままにしておく」というのが鉄則です。

 

映画のなかのエピソードだから、kaoriさんとは無関係ですが、

この脚本を書いた人は、絶対に年頃の女の子を育てたことがない人だと思いますよ。

 

あと、

「東京に行ってきます。あ、ここも東京だけどね(笑)」のようなセリフが何度もありましたが、

島の外の人たちに向かってネタ的にいうことはあるかもしれないけれど、

八丈島の島民同士の会話としては、ものすごく不自然だと思ったことを付け加えておきます。

 

 

 

このネタ本には、お弁当の大きなカラー写真や

お弁当テクニックのQ&Aとかも載っていて、映画よりずっと役にたちます。

多分ブログの画像を転載してるんでしょうけど、

写真の撮り方もすごく上手!

いろんな意味で完璧主義者の人なんですね。

 

書籍化されて映画化されたら、ゲスい話、けっこうな収入になるんでしょうけど、

なんか、あることないこと尾ひれつけられて、むしろお気の毒に感じてしまいました。