映画「きみと、波にのれたら」 令和元年6月21日公開 ★★☆☆☆

 

大学入学と同時に引っ越してきた向水ひな子は、サーフィンが大好きで

波乗りは得意だが、将来が不安だった。

ある日ひな子は、火事騒ぎで消防士の雛罌粟港(ひなげしみなと)と出会い、

波乗り初心者の彼とサーフィンを楽しむうちに、互いに特別な感情を抱くようになる。 (シネマ・トゥデイ)

 

邦画のアニメは、基本ほとんど見ないのですが、

「サマーウォーズ」「君の名は。」は、の2作は、たまたまブームになる前に観ていて、

話題になってから、お話に参加できたから、けっこう気分がよかったです。

本作も、

① コミック原作でもシリーズものでもない

② アニメーションの動きがきれい

③ 予告編を見た感じでは、不思議な理解不能なストーリー

 

この辺から「ひょっとして掘り出し物映画では?」と、いち早く鑑賞したのですが、

(見どころはちょいちょいあるものの)ちょっと私にはダメでした。

 

ただ、全く情報なく鑑賞したわたしには、いちいち驚いてしまうストーリー展開で、

おもしろいかはともかく、当初想像していたベタなラブコメ、っていう感じではなかったです。

                                        (以下、あらすじです)

 

実家を出て一人暮らしを始めたばかりのヒナコは、かなりのドジな娘なんだけど、

サーフィンの腕だけは誰にも負けません。

その姿を海べりの消防署の屋上から眺めているミナトと後輩のワサビ。

優秀な消防士のミナトと違って、ワサビは何をやらせても落ちこぼれ。

自転車で通りかかったヒナコに放水の水を浴びせてしまって、言葉を交わし、

逆にヒナコの実家の名前入りタオルを貸してもらったりしてます。

 

ある日、違法な打ち上げ花火のとばっちりで、ヒナコの住むビルが火災になり、

オタオタしていてただひとり逃げ遅れてしまうヒナコ。

屋上に取り残されたヒナコを高所作業車のゴンドラに乗って救助したのは・・・・

(ワサビではなくて)ミナトのほうでした。

で、このふたり、すぐに交際がはじまり、ヒナコが波のりを教えたり

ミナトが料理の腕を発揮したり、千葉のポートタワーでデートしたりするんですが、

クリスマスイルミネーションとか、ハートのカギとかメッセージカードとか、

どうやらここは千葉の恋人の皆さんの「聖地」といわれるそうで、

いろんなタイアップ情報が流れます。

 

 

ある日、ミナトがひとりでサーフィンをしているとき、そばで人が溺れ、

すぐ救助にむかったミナトは命を落としてしまいます。

 

落ち込むヒナコでしたが、ふと思い出の曲を口ずさむと、

なんと、水のなかに、ミナトの姿が現れ、ヒナコに語りかけるのです。

「ヒナコのこと、ずっと助けるって約束したろ?」

 

水のなかで着衣泳してるミナトはクリオネみたいにかわいいですが、

驚くのは、水なら、海でも水たまりでもコップの水でも便器にたまった水でも、なんでも現れるのです。

なのでヒナコは常に水の入ったポットを携帯し、それでは小さくて物足りないので

スナメリの大きなビニール人形みたいなのに水を満たして、それを連れ歩くようになります。

 

 

これだと、等身大のミナトが現れてデートしてる感じになるんでしょうけど、

満々に水をいれたら、200kg以上にはなると思いますけどね。

 

ミナトの姿はヒナコにしか見えず、この奇行を心配するワサビや、ミナトの妹のヨウコ。
(ラブコメの鉄則では、この辺から主人公はワサビになるはずなんですが、そんな気配もなし)

ヨウコは、兄の大好きだったカフェで働きはじめ、ゆくゆくはカフェを開きたいと考え、

「ミナトが消防士になったのは、昔溺れた自分を助けた人がいたから、人助けしたかった」

そして「その助けた人というのは、幼いヒナコだった」ということを知ったヒナコは、

人を助けるライフセイバーを目指すことにします。

 

(ここでおしまいと思ったら、まだまだ話は続きます)

 

ヨウコは店の客たちが違法な花火をしようとしているのを偶然聞き、

ヒナコといっしょに彼らを追いかけ、廃墟のビルのなかに潜入します。

すぐ通報すればいいものを、「証拠を押さえる」と監視しているうちに 火災が起こり、

犯人グループは逃げて、ケガをしたヨウコとヒナコだけが火の中にとりのこされてしまいます。

消防がかけつけたときにはすでに火の海。

ところが、ヒナコが例の歌をうたいはじめると、お約束通りミナトが現れ、

大量の水が消火しながらビルの屋上まで到達し、

サーフボードにヨウコをのせたヒナコは波にのって、地上に降り立つのでした・・・・・

 

以来、ミナトはもう現れなくなりましたが、次のクリスマスの日、

ポートタワーのイルミネーションには

「ヒナコ、これからのクリスマスはずっといっしょに過ごそう」

というミナトからのメッセージが流れます。

1年前にふたりで行ったとき、ミナトはこれを予約してくれていたんですね  (おしまい)

 

多少悪意をはらんだ書き方ではありますが、こんな話で、

「なんじゃこりゃ!」と心のなかで5,6回は叫んだと思います。

 

死んだ人間の姿が恋人だけに見える、とかの多少のファンタジー要素は予想していましたが、

便器の水にまででてこなくてもいいのにね。

 

それから、生前、あの「思い出の歌」をふたりで笑いながら歌うのが不自然このうえなくて、

どうしようもなくイラつきました。(これはあくまでも個人的嗜好によるものですが)

今回、主要キャストは4人とも声優でなく俳優や歌手でしたけど、

せりふの部分はけっこう上手だったと思います。

でも、あの歌がねぇ・・・・・

歌あっての歌手を声優に登用、ということだったかもしれないけど、

あの曲をチョイスした時点でかなり厳しかったのでは??

 

それ以外にも、ちょっと納得いかなかったことを思い出す範囲で・・・

 

ヒナコの実家が造園業、という設定はどう関係していたのかな?

もともと千葉に住んでたけど引っ越した、といってたけど

「引っ越し先で造園業」っておかしくない?

 

ヒナコは、幼いとき自分が助けた少年がミナトだと知らなかった、というのはわかるけど、

新聞にも載ったニュースなのに、家族がすぐ気づかないなんて、納得いきません。

よくある名前ならともかく、雛罌粟港(ヒナゲシ ミナト)なんて、絶対に忘れられない名前ですよ。

 

ちなみに、私は最近外来種の長実雛罌粟(ナガミヒナゲシ)の話題があったからなんとか読めたけど、

書くのはもちろん、読むだけでもけっこうな難易度ですよね、

なんでこんな難しい漢字にしたのか?

 

ハートのメッセージカードに、ひなこが「ひなげし」とひらがなで書いたとき(↑の画像)

「練習しといた方がいいよ、自分の名前になるかもしれないんだから」とミナトがつぶやいた・・・

そのセリフのためと思われますが、ここまでレアでなくてもいいのにね。

ワサビなんていうペットみたいなへんてこな名前も、絶対なにかの伏線になっていましたが、

特になにもなし。

ミナトの妹はヨウコ(洋子)なんていう昭和の名前だし、ネーミングセンスが理解できません。

 

千葉ポートタワーとのタイアップ感がすごくて、

しかも中身がたいしたことなくて、むしろ

「千葉ってホントに何にもないんだな~」と思ってしまった・・・

デートシーンだけでやめておけばいいのに、

オーラスのクライマックスにまた登場させるなんて、

よっぽどのスポンサーなのか?

なんか、逆効果のような気がしますけどね。

 

二次災害を起こさないのが鉄則の消防士が、無謀な人命救助をしたり

その妹が、違法な花火を目撃しながら通報が遅れたり、

ストーリーのためとはいえ、あんまりよろしくないのでは・・・・

 

この作品の評価ポイントは、ストーリーよりも火や水の造形やアニメーション技術と思われ、

(私にはよくわからないのでスルーしてしまいまいましたが)

そういえば、最近見た「プロメア」も火と水の戦いのアニメでした。

たまたま消防士が活躍するアニメーションが続きましたが、

たしかに実写映画で描かれる消防士のドラマとは大違い。

アニメーションだからこそ可能な作品では あります。