映画 「ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた」 令和元年6月7日公開 ★★★☆☆

(英語 字幕翻訳 神田直美)

 

 

ミュージシャンだったフランク(ニック・オファーマン)は、ブルックリンでレコードショップを営みながら、

シングルファーザーとして娘のサム(カーシー・クレモンズ)を育ててきた。

この夏でフランクは店をたたみ、サムはロサンゼルスの医大に進学する。

あるとき、二人がデジタル音楽配信サービス「Spotify」にアップロードした曲が話題になる。

                            (シネマ・トゥデイ)

 

フランクの経営する「レッドフックレコード」というLPレコードのお店は

なかなか売り上げが伸びません。

このご時世、レジでタバコを吸ってることに客から文句いわれても、

全然タバコの火を消そうともしません。

怒った客は、今まさに買おうとしていたレコードをスマホでネット購入し

「ネットの方が安かったぞ、ざまーみろ」とか言って出て行ってしまいました。

 

今の売り上げでは店を維持していくことも難しく、

この店の客でもある大家のレズリーがやってきたとき、

もう次の契約更新はせずに、店をたたむことを話します。

17年間この店で一人娘のサムを育ててきたけれど、もう潮時だ、と。

 

そのサムは、なかなかの優等生で、秋から通うメディカルスクールのために勉強漬けの毎日。

親子でバントを組むのが夢だったフランクにはそれが不満で

なにかとサムをつかまえては、

「(勉強なんてしなくていいから)ジャムセッションしようよ!」と誘います。

(なんか、逆!)

実はフランクと、亡くなったサムの母は元々ミュージシャンで、

サムは特に音楽はやってなかったですが、ちゃんと才能は受け継がれていたんですね。

 

自作の詩を書き溜めていたサムは、父の熱意に押されて渋々曲作りに参加。

家には楽器やレコーディングの環境がそろっているんですね。

ふたりであっという間に「Hearts Beat Loud」という結構いい曲ができて

喜んだフランクはそれを「Spotify」というネット配信サービスに登録してしまいます。

 

そうしたら、さっそくそれがラジオでかかって大喜びのフランク。

無断で登録したことには怒るサムでしたが、書き溜めていたポエムを出してきて

あと2曲が完成します。

 

マーキュリーラウンジへの出演依頼とか、メジャーデビューの話とかツアーの誘いとか

夢のような展開があって、すっかり有頂天のフランクは

「大学行くの1年延ばせない?」

「私はドクターになるの!」という相変わらずの会話。

 

実はフランクは浮かれてる場合じゃなくて、サムの学費は6万2000ドル、

奨学金をもらっても1万2000ドルは用意しなくてはいけないのに、

今回のレコーディングでサンプラーやレスポールをカード購入してしまって

全くの金欠状態。

 

大家のレズリーは、家賃は据え置くから、店を明るくして模様替えして再出発したら?

なんなら私が共同経営者になりましょうか?

とか、とっても親切。

ついつい酔っ払った勢いでふたりは一線をこえてしまいます。

 

一方のサムは美術館で知り合ったローズと気が合って、同性愛カップルに。

これもフランクは気に入りません。

 

ともかく店を閉めることを決めたフランク。

全品3ドルの店じまい価格にちらほら客もやってきますが、

そこで、サムと最初で最後のライブをやることにします。

(沈みゆくタイタニックのデッキで最後の最後まで演奏しつづけた楽団を思いつつ・・・)

 

レパートリーは3曲しかないんですが、曲が進むにつれ、

だんだん人が集まって、最後は大拍手・・・!

 

一度は食料品店で働いてたフランクでしたが、知人の音楽バーのようなところで働き、

サムもブルックリンの実家を離れて UCLAでドクターを目指しつつも、

趣味で音楽活動もやっているようで、めでたしめでたし・・・・

 

という、ノンストレスのハッピーエンドになっていますが、

なんというか、うっすーい内容です。

 

 

これ、シネマカリテで「ガラスの城の約束」のとなりのシアターでやっているのですが、

(右隅のほうにガラス・・・の展示が映りこんでいます)

あまりの差に愕然としてしまいます。

 

ガラス・・・の父親もひどかったけど、こういう子どもっぽい父親も勘弁してほしいですね。

上映時間、1時間半ちょっとあるんですが、ほんとにうっすーい内容です。

(ほかに表現が見当たらない)

サムはひらすらしっかり者で、父親はひらすら子どもっぽく、ただそれだけ。

 

最後6人しかいなかった客がだんだん増えて、最後は拍手喝采というのはベタでしたが

親子でアイディアを出し合い、音を重ねていってだんだん曲の形になっていくシーンは

わくわく感にあふれていて、ここは見どころでした。

ふたりとも歌も上手だし・・・・

 

私は音楽系の映画を見るときは(なんらかの情報を引き出そうと思って)

夫を誘うことが多いのですが、

「主役の女の子はLGBTみたい」といったら、断られてしまいました。

わたしなんかより、実際に曲を作ったり演奏したりする夫が見た方が楽しめたかな?

と思ったんですが、LGBT要素の予告編で、客をひとり失ってしまいましたよ。

 

実際はべつにレズビアンの濃厚なシーンもなかったし、それで差別されたりもなかったし、

あんまりうっすーい内容なので(くどい!) 

ちょっとおまけに付け足してみました、的な扱いでしたよ。

なので、映画的にはあんまりおすすめはできないです。

 

たまたま前日、DVDで観た「マダムのおかしな晩餐会」のなかで、

トニ・コレットがすごく嫌味な成り上がりセレブをやっていたのですが、

ここで彼女が演じるレスリーは、ほんとにどこまでも優しい大家さんだったので、

いいお口直しになったかも・・・・ということで★ひとつ追加してみました。