映画「蜘蛛の巣を払う女」 平成31年1月11日公開 ★★★★☆

原作本「ミレニアム4 上下 蜘蛛の巣を払う女」 ラヴィド・ラーゲル・クランツ 早川書房

(英語 字幕翻訳 松浦美奈)

 

 

 

凍てつく冬が訪れたストックホルムで、

天才ハッカーのリスベット(クレア・フォイ)に、人工知能研究の権威バルデル博士から依頼が舞い込む。 

その内容は、彼自身が開発した核攻撃プログラムをアメリカ国家安全保障局から取り戻すというもの。

彼女の能力からすればたやすい仕事だったが、

これは彼女への復讐をもくろむ生き別れた双子のカミラが仕掛けたわなだった。(シネマ・トゥデイ)

 

7年前にスティーグ・ラーソンの「ミレニアム三部作」がスウェーデンで映画化され、

その2年後にハリウッドで第一部の「ドラゴンタトゥの女」だけがリメイク。

ラーソンは本の発売を待たずに急死してしまったので、これで終わりと思ったら

第四部・五部がクランツの手で書き上げられ、今回、第四部の映画化が実現されました。

 

スウェーデン版の続編かと思ったら、製作総指揮はデビッド・フィンチャーで、

どうやらハリウッド版で第二部三部をとばしての続編のようですが、

ただ、ルーニー・マーラ、ダニエル・クレイグはじめ、キャストは総入れ替えとのこと。

 

とりあえず、ストーリーを簡単に。

最後ネタバレしてますので、知りたくない方はスルーしてください。

 

 

 

AIの世界的権威のフランスバルデルは、米国の国家安全保障局(NSA)の依頼で

世界中の防衛システムに侵入可能な「ファイアーフォール」というプログラムを作ったのですが、

こんな危険なものを作ってしまったことを後悔し、NSAから取り戻したい・・・・

とリスベットに依頼します。

 

NSAでもこのプログラムのことはほんの一部の人間しか知らず、

それを管理していた特別顧問のエドウィン・ニーダムは、不正なログインに気づき、電源を落としますが

「ストックホルム6キロ圏内」へとプログラムは移動してしまいます。

あわてて休暇をとり、ストックホルムに向かいますが、

空港でスウェーデン公安警察のグラーネに拘束されてしまいます。

 

一方、リスベットはファイアーフォールを手に入れるも

「馬は平原で静かに立つ」「今年の冬は雪が早い」などの暗号が解けず、開くことができません。

そして、ニーダムより早くに居場所を何ものかに知られて、銃撃を受け、

大切なブログラムも持ち去られてしまいますが、防犯カメラに映った男は身元不明。

アパートごと爆破されてしまい、命からがらバイクで逃走します。

 

雑誌ミレニアムの記者、ミカエルのところにリスべットから連絡がはいり、

防犯カメラ映像の男の身元を探してほしいと。

蜘蛛のタトゥから、スパイダーズという手ごわい闇組織が浮かび上がりますが

それを率いるのは、リスベットの亡き父と双子の妹カミラだということがわかります。

 

彼らは警察の厳重な警備を破って、バルデルと息子のアウグストを拉致し、

リスベットはふたりに接触できますが、バルデルは殺されてしまいます。

アウグストは、文章を瞬時に数字に置き換えることができ、

暗号は彼が解読できるようなのです。

 

いったんはアウグストを保護できますが、報道ではリスベットは凶悪な誘拐犯。

なんとか彼を母のいるアメリカに返そうと、今度はニーダムを取り込もうとしますが

その後すぐにアウグストもミカエルも敵に拉致されてしまいます。

 

実はアメリカからプログラムを取り返すのをスパイダーズに依頼した黒幕は

スウェーデンの公安だったのですが、

報酬を払うというグラーネをカミラはいともあっさりと殺し、

世界の核のボタンは、この組織の手に落ちてしまうのです。

ところが、カミラの目的は、ファイアーフォールではなく、

双子姉のリスベットへの積年の恨みだった・・・・

 

最後ちょっとした逆転劇がありますが、

ストーリー自体はB級アクション映画と言う感じ。

だいたい、リスベット強すぎるし、不死身すぎです。

前作でもバイクは飛ばしていたけれど、大きな車は運転しないし、

運動能力はあっても、華奢な非力な女性のはずで、

ダイハードみたいな不死身キャラではないんですけどね・・・・

 

ミレニアムの面白さは、キャラクターの造形だと思うんですが、

一応原作(ラーソンの三部作)のイメージでいうと

リスベットは「150cm 38kg 貧乳 色気なし レズビアン 」

「天才ハッカーで頭の回転はいいけれど、一般常識なし」

なので、長身で色っぽかったルーニー・マーラーよりはクレア・フォイのほうが違和感は少なかったけど

ちょっと「普通の女の子」っぽかったかも。

 

ミカエルは「くたびれた中年で運動神経なし」

「記者経験から、取材能力に長け、どんな人物とも分け隔てなく付き合える人格者」

「編集長のエリカとはできてる」

これを、あのテニスのボルグのプレイを見事に再現したスヴェリル・グドナソンがやるのは

ちょっとどうかと思いますけど・・・・

 

リスベットとミカエルはひとつも共通点無くて、いっしょに行動するのも意味不明なんですけど、

お互いの弱点を補いあって、二人だとけっこう最強なんですよね。

このふたりの妙な強い信頼感というのがこの映画の肝だと思うんですが、

ミカエル若いし、かっこいいし、リスベットもそこそこ可愛いし、なんか、「お似合い」というのは

絶対にあってはならないこと、と思うのは私だけかな??

 

仲間のハッカーのプレイグも、

「ゴミ屋敷に住んでる汚いおじさんだけど、ハッカーとしての腕はリスベット以上」

というキャラ設定の説明もないまま、普通に登場して、

モーションセンサーを発動して、誰よりも活躍してましたけど・・・・

 

今回の主題は「核攻撃プログラムをアメリカに任していいのか」とかいうことよりも

「DV」や「肉親ならではの恨み」ということなのかな?

 

あらすじに書き忘れたけれど、冒頭は、仲良し姉妹が実父の虐待におびえ、

「姉のリスベットは雪の中に飛び降りて逃げ、妹のカミラは父のところに残る」

というシーンからはじまります。

 

リスベットは「カミラは自分の意思で残った」と思っていたんだけど、

カミラは16年間、ずっと姉に捨てられたと思い込んでいたんですね。

そういうことってよくあることだけれど、

そこまでの殺意に繋がるか??って思いましたが・・・・

 

 

 

実は原作はもう買ってあるんですが、読むのを我慢して、先に映画を観ました。

最初の方だけ我慢しきれずに読んでしまったんですが、

フランス・バルデルが、離婚した妻のところで義理の父から虐待されている障碍者の息子を取り戻すべく

奮闘するところから始まります。

とてもていねいな描写なんですが、映画では親子関係のことは全然語られず、

単に「賢い子」というだけなのが気になりました。

父親から虐待されている過去をもつリズベットとの共通点だから、省略しちゃいけないと思うんですが・・・

 

そういえば、ラーソンの三部作では、父の虐待の話はあったけれど、

双子の妹がいたなんて、初耳です。

これはクランツが本で書いたことなのか、映画オリジナルなんでしょうか??

 

後、一番気になったことは、このシリーズの主役はリズベットではなく、あくまでも「ミレニアム(誌)」

ミカエルが記事を書くことで完結するはずなのに、

最後、パソコンに打った原稿を消すシーンがありましたけど、マジですか?

 

この辺も原作で確認したいし、

ともかく、今から、心おきなく原作を読もうと思っています。